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その後の二人
190.ドキドキご実家訪問3
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なかなか入ってこない俺を見かねて、蒼空が迎えに来てくれた。
「正吾さん大丈夫だよ。母さんはツンデレなんだ。こっち入っておいでよ。」
いやいや。絶対ツンデレの域じゃない。あれは、自分から愛息子を奪った俺の事を、憎悪している目だった。
はぁ~前途多難だな。でも今日は蒼空の為に何があっても我慢すると決めてきた。俺は意を決して靴を脱ぎ、上がり框に足を掛けた。
そして蒼空に手を引かれ、恐る恐るなんとかリビングまで入る事が出来た。
「あの…初めまして!私、安藤正吾と申します。こちら…ツマラナイものですが。えっとぉ…。」
と手土産を渡そうとしたが、お義母様からはあからさまに無視をされていて、そっぽを向かれてしまっている。
「もう!母さんってば!正吾さんに失礼だってば。」
蒼空が必死にとりなしてくれようとしていたが、お義母様はそっぽを向いたままだった。
仕方がないから、お義父様に手土産を渡す。
お義父様から間接的に手土産を受け取ったお義母様は、それが自分が好きなどら焼きだと認識すると、ほんの少しだけ顔を綻ばせたが、またすぐに元のぶっきらぼうな顔に戻した。
その僅かに微笑んだ顔は、確かに蒼空に似ていた。可愛い系と綺麗系。美人のタイプは違うのに、やっぱり親子なんだなぁと実感できて、少し心が温かくなった気がした。
結局手土産はそのまま仕舞われて、蒼空の好物のプリンを出されたが、当然俺の分だけが無い。
「もう。母さん、子供の様な嫌がらせはやめなよ。はい。正吾さん、あ~ん。」
とそれに気が付いた蒼空がなんと自分の分をスプーンですくって俺の口に運んでくれる。
蒼空のご両親の目の前で突然強要されたあーんに、俺は狼狽した。お義母様の鋭い視線が突き刺さって痛い。これは、食べても地獄だし、食べなくても蒼空の厚意を無駄にしたとか言われて地獄なのでは。俺は正しく針の筵だった。
本当に、早く時間よ過ぎてくれ。どうしよう、蒼空だけ置いて、俺は外で待っていた方が良いんじゃないだろうか。
と俺が迷っていると、助け舟が出された。
「うん。義理の息子が出来たら一緒にウィスキーを飲むのが夢だったんだ。
近くに良い酒屋があってね。一緒にウィスキーを選びに行こうか。」
お義父様!!!ありがとうございます!あの時蒼空の為の復讐を取って、地下アルファになってしまっていたあなたを救わない選択をした俺にも優しくしてくださって、本当にありがとうございます!
俺はそれに飛びついて、二人で酒屋に向かった。
その道中、今は経済的には大丈夫なのかと聞かれて、ついこう答えてしまったんだ。
それが、お父様の地雷を踏みぬいてしまう事になるとは全く知らずに。
「正吾さん大丈夫だよ。母さんはツンデレなんだ。こっち入っておいでよ。」
いやいや。絶対ツンデレの域じゃない。あれは、自分から愛息子を奪った俺の事を、憎悪している目だった。
はぁ~前途多難だな。でも今日は蒼空の為に何があっても我慢すると決めてきた。俺は意を決して靴を脱ぎ、上がり框に足を掛けた。
そして蒼空に手を引かれ、恐る恐るなんとかリビングまで入る事が出来た。
「あの…初めまして!私、安藤正吾と申します。こちら…ツマラナイものですが。えっとぉ…。」
と手土産を渡そうとしたが、お義母様からはあからさまに無視をされていて、そっぽを向かれてしまっている。
「もう!母さんってば!正吾さんに失礼だってば。」
蒼空が必死にとりなしてくれようとしていたが、お義母様はそっぽを向いたままだった。
仕方がないから、お義父様に手土産を渡す。
お義父様から間接的に手土産を受け取ったお義母様は、それが自分が好きなどら焼きだと認識すると、ほんの少しだけ顔を綻ばせたが、またすぐに元のぶっきらぼうな顔に戻した。
その僅かに微笑んだ顔は、確かに蒼空に似ていた。可愛い系と綺麗系。美人のタイプは違うのに、やっぱり親子なんだなぁと実感できて、少し心が温かくなった気がした。
結局手土産はそのまま仕舞われて、蒼空の好物のプリンを出されたが、当然俺の分だけが無い。
「もう。母さん、子供の様な嫌がらせはやめなよ。はい。正吾さん、あ~ん。」
とそれに気が付いた蒼空がなんと自分の分をスプーンですくって俺の口に運んでくれる。
蒼空のご両親の目の前で突然強要されたあーんに、俺は狼狽した。お義母様の鋭い視線が突き刺さって痛い。これは、食べても地獄だし、食べなくても蒼空の厚意を無駄にしたとか言われて地獄なのでは。俺は正しく針の筵だった。
本当に、早く時間よ過ぎてくれ。どうしよう、蒼空だけ置いて、俺は外で待っていた方が良いんじゃないだろうか。
と俺が迷っていると、助け舟が出された。
「うん。義理の息子が出来たら一緒にウィスキーを飲むのが夢だったんだ。
近くに良い酒屋があってね。一緒にウィスキーを選びに行こうか。」
お義父様!!!ありがとうございます!あの時蒼空の為の復讐を取って、地下アルファになってしまっていたあなたを救わない選択をした俺にも優しくしてくださって、本当にありがとうございます!
俺はそれに飛びついて、二人で酒屋に向かった。
その道中、今は経済的には大丈夫なのかと聞かれて、ついこう答えてしまったんだ。
それが、お父様の地雷を踏みぬいてしまう事になるとは全く知らずに。
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