【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

夜曲

文字の大きさ
267 / 329
その後の二人

190.ドキドキご実家訪問3

しおりを挟む
 なかなか入ってこない俺を見かねて、蒼空が迎えに来てくれた。

「正吾さん大丈夫だよ。母さんはツンデレなんだ。こっち入っておいでよ。」

 いやいや。絶対ツンデレの域じゃない。あれは、自分から愛息子を奪った俺の事を、憎悪している目だった。

 はぁ~前途多難だな。でも今日は蒼空の為に何があっても我慢すると決めてきた。俺は意を決して靴を脱ぎ、上がりかまちに足を掛けた。
 そして蒼空に手を引かれ、恐る恐るなんとかリビングまで入る事が出来た。


「あの…初めまして!私、安藤正吾と申します。こちら…ツマラナイものですが。えっとぉ…。」
 と手土産を渡そうとしたが、お義母様からはあからさまに無視をされていて、そっぽを向かれてしまっている。

「もう!母さんってば!正吾さんに失礼だってば。」

 蒼空が必死にとりなしてくれようとしていたが、お義母様はそっぽを向いたままだった。


 仕方がないから、お義父様に手土産を渡す。
 お義父様から間接的に手土産を受け取ったお義母様は、それが自分が好きなどら焼きだと認識すると、ほんの少しだけ顔を綻ばせたが、またすぐに元のぶっきらぼうな顔に戻した。

 その僅かに微笑んだ顔は、確かに蒼空に似ていた。可愛い系と綺麗系。美人のタイプは違うのに、やっぱり親子なんだなぁと実感できて、少し心が温かくなった気がした。

 結局手土産はそのまま仕舞われて、蒼空の好物のプリンを出されたが、当然俺の分だけが無い。


「もう。母さん、子供の様な嫌がらせはやめなよ。はい。正吾さん、あ~ん。」

 とそれに気が付いた蒼空がなんと自分の分をスプーンですくって俺の口に運んでくれる。

 蒼空のご両親の目の前で突然強要されたあーんに、俺は狼狽した。お義母様の鋭い視線が突き刺さって痛い。これは、食べても地獄だし、食べなくても蒼空の厚意を無駄にしたとか言われて地獄なのでは。俺は正しく針の筵だった。


 本当に、早く時間よ過ぎてくれ。どうしよう、蒼空だけ置いて、俺は外で待っていた方が良いんじゃないだろうか。

 と俺が迷っていると、助け舟が出された。

「うん。義理の息子が出来たら一緒にウィスキーを飲むのが夢だったんだ。
 近くに良い酒屋があってね。一緒にウィスキーを選びに行こうか。」

 お義父様!!!ありがとうございます!あの時蒼空の為の復讐を取って、地下アルファになってしまっていたあなたを救わない選択をした俺にも優しくしてくださって、本当にありがとうございます!


 俺はそれに飛びついて、二人で酒屋に向かった。

 その道中、今は経済的には大丈夫なのかと聞かれて、ついこう答えてしまったんだ。
 それが、お父様の地雷を踏みぬいてしまう事になるとは全く知らずに。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

さかなのみるゆめ

ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。

両片思いのI LOVE YOU

大波小波
BL
 相沢 瑠衣(あいざわ るい)は、18歳のオメガ少年だ。  両親に家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら毎日を何とか暮らしている。  そんなある日、大学生のアルファ青年・楠 寿士(くすのき ひさし)と出会う。  洋菓子店でミニスカサンタのコスプレで頑張っていた瑠衣から、売れ残りのクリスマスケーキを全部買ってくれた寿士。  お礼に彼のマンションまでケーキを運ぶ瑠衣だが、そのまま寿士と関係を持ってしまった。  富豪の御曹司である寿士は、一ヶ月100万円で愛人にならないか、と瑠衣に持ち掛ける。  少々性格に難ありの寿士なのだが、金銭に苦労している瑠衣は、ついつい応じてしまった……。

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

獣人王と番の寵妃

沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――

処理中です...