【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

夜曲

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歓迎されざる出会い

226.運命側の都合

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 フロントの人が引き留めてくれたのかもしれない。
 その人は、エレベーターホールすぐの所で待っていた。

 一目見てそうだと解る、気品漂うブロンドヘアーの女性アルファだ。

 アルファは人口の3%だと言われているが、女性アルファはさらに少なく、アルファの総数の1/10も満たさない。居ない事はないが、かなり珍しい部類に入る。
 女性の採用に積極的なうちの会社ですら、5分の一程しか女性アルファは居なかった。希少種と言っても良い。この人が…俺の運命のツガイ。


 簡単に自己紹介を済ませ、ホテルのカフェに腰を押しつかせてみれば、その立ち振る舞いの優雅さは吉崎ご夫婦を彷彿とさせた。下手したら、爵位持ちのご家庭出身の可能性もあるのではないだろうか。

 そんな女性がすくっと立ち上がり、俺の横まで歩いて来たかと思うと、
「あなたの運命は私が昨日ツガイに致しました。大変申し訳ございません。
 この補償は如何様にも。」
 と、深く頭を下げて来た。


 いや。むしろ渡りに船とは正しくこのことで、俺たちとしては助かったのだが。
 彼女が話す事情を聴き、他人事とは思えず蒼空は大号泣していた。


 彼女が言う事には、こうだ。

 俺の運命――オメガの彼がそのレストランで働いている所を客として訪れた彼女が見初め、一年ほど前から交際をしていた。

 アジア人のあどけない容姿、言葉を一生懸命覚えて一流レストランのウェイターとして誇りを持って働いているその努力、それから彼のキラキラとした笑顔に惹かれたらしい。


 彼が働いているのは、上流階級が沢山出入りする高級レストランだ。当然客の大半はアルファだ。
 他のアルファに万が一見初められたり、酔って何かされないとも限らない。
 彼はいつも抑制剤できちんと管理していて、それが出勤にあたっての条件になっているが、悪意ある客の発情誘引フェロモンに当てられて突発的にヒートになる可能性だって無きにしも非ずだ。

 だから交際をスタートさせた後、それらを恐れて私が養うから仕事を辞めてと彼女は言ったらしい。しかし彼は、彼女の仕事の予定に合わせてシフトを減らしただけで、結局仕事を辞めてはくれなかった。


 それもそうだ。
 オメガの彼の方からしてみれば、未だオメガ差別が無いとも言えない日本から自由を夢見て一念発起して渡欧し、まずは下積みとして普通のレストランで経験を積んだのだろう。そしてよりよい環境を求めていくつか店を変えて少しずつ昇り詰めていったに違いない。

 そうしてやっと手に入れた高級レストランのウェイターの仕事だ。付き合っているとはいえ、いつアルファの気まぐれで捨てられるとも解らないのに、当然その努力の結晶である店をそう簡単には辞めたくは無いだろう。やっとここまできたのだ。そう簡単に手放せるものではない。

 あのレストランは小さいながらも伝統と歴史があるそれなりの所だった。吉崎氏の友人である爵位持ちの欧州人からの口添えが無ければ、とてもではないが貸し切りになど出来なかった。


 客は皆余裕がある上流階級の人間ばかりで、オメガに対しては優しく紳士的に接してくれるだろう。他にも同業や知り合いが沢山出入りする店だ。そんな所でむやみやたらにオメガに絡んで恥は晒さないだろう。

 オメガの彼にとってはこれ以上無い職場環境だと思う。
 例えアジア人オメガとしての庇護欲を唆る彼の容姿が、その採用に一役買っていると解っているとしてもである。それも含めて、ウェイターとしての彼の魅力なのだ。何も恥じる事は無い。


 日本人らしい勤勉さと、もしかしたら男としての矜持もあったのかもしれない。
 蒼空が、オメガの彼の気持ちは解るとうんうんと頷いていた。


 だから彼女は本気だという事を示す為に、彼にプロポーズをしたらしい。ツガイになって結婚しようと。

 そしてそれは快諾され、いざツガイになろうと思った時、彼女がうっかりポロっと「私の子供を産んで」と言ってしまったのがまずかった。

 なんと彼の方は、女性アルファと結婚したら、女性アルファの方が子供を産んでくれるのではと勘違いしていたのだ。

 彼は過去に何かがあったのか、男アルファが怖いらしい。そして、オメガとして子供を産まされるのも怖いらしい。

 男性とは付き合えないが、発情期は問答無用で来てしまう。日本に居たら、女性に組み敷かれているのは外聞が悪い。だからわざわざ欧州までやって来て、女性アルファを選んだのに。

 当然女性アルファの方は、妊娠出産でキャリアの妨げにならない様にとオメガ男子を探していた。
 日本人オメガ男子の可愛さにメロメロになったのは確かだが、何も持っていない一般人と結婚する理由として一族に対しては、表向きには彼が子供を産んでくれるからと説明していた。
 数が少ない名家のオメガ男子は、ビジネスパートナーにも成りうると、ここ欧州では大変重宝されており、大体既に囲い込まれてしまっている。名家であるとは言え末端の彼女の家では、なかなか縁を結ぶ事が難しかったから。


 ――つまり、どちらが子供を産むのかという夫婦として一番大事な事象で齟齬が出てしまった。
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