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第一章
人里探して三千里
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『川を辿って下流の方に行けば、人里に出られる……はず』
陽向は無駄な体力は消耗したくない極度のインドア派だ。
ランニングなどで貴重な体力を無意味に消耗するなんて意味が解らない。休日は、キャンプに行って虫に襲われるよりも、お布団にくるまってぬくぬくしたい派だった。
当然、山で遭難した時にどうすればよいかなどという知識なんてない。漫画や小説で読んだことはあるが、なんの事前準備もなしに、それが今この状況で活かせると思えるほど、陽向は能天気ではなかった。
食べられる木の実もキノコも何も知らない。野外で暖を取る方法も、野宿の仕方もだ。
『もしここがまだ東京なら安全だとは思うけど、これだけ歩いてもまだ森が続く自然公園が果たして東京にあったかな。
いつ熊が出てもおかしくないようなところで野宿だけはご免被る。なんとか日が出ている間に人里に帰らなくては』
そんな陽向の焦りもむなしく、太陽は真上を過ぎ、やがて傾いていった。
紅葉が夕焼けのオレンジに照らされて綺麗だが、今の陽向にそれを鑑賞する余裕はない。
おなかが空いた。でも、見つかるのは毒毒しい見た目のキノコやシダ植物、食べて良いのかもわからない赤い実だけ。
試しに赤い実を摘んでみたが、それを口に入れる勇気はなかった。
ここが奥多摩でも富士の樹海でも、東に向かえばなんとかなるはずだった。太陽の位置を参考に随分と歩いたのに、全く人の痕跡が見当たらない。
『少し前に流行った異世界転移? まさかな』
と冷笑しているうちに、日が暮れてしまった。
日が暮れれば、どこかに明かりが見えるものなのではと淡い期待をしていた陽向だが、残念ながら月あかり以外に明るいものはなかった。夜の森は、輝く星々さえも木々に遮られて漆黒の闇を湛えている。
現代人が素手だけで火を起こせる訳もなく。暖を取ることも、闇を照らすことも出来ない自分は、なんと無力なことか。
木に登って遠くを見渡したいとも考えたのだが、陽向の運動神経では折れた枝に跨るのが関の山だった。
『これでも地面に寝るよりはマシだろう。目を閉じているだけでも人は休めると聞くし』
陽向は幹にしがみつきながら枝の上に座り、幹に顔を預け、目を閉じて夜が明けるのを待つことにした。
『ホーホー』とフクロウだろうか、鳥が鳴いているのがやけに煩く感じる。
葉がこすれる音でハッと目覚めては獣を警戒し、あと少しで眠れるのにずっと眠れない。
だんだんと下がっていく気温に、『もし明日の朝、目覚めなかったらどうしよう』と不安な夜を過ごした。
陽向は無駄な体力は消耗したくない極度のインドア派だ。
ランニングなどで貴重な体力を無意味に消耗するなんて意味が解らない。休日は、キャンプに行って虫に襲われるよりも、お布団にくるまってぬくぬくしたい派だった。
当然、山で遭難した時にどうすればよいかなどという知識なんてない。漫画や小説で読んだことはあるが、なんの事前準備もなしに、それが今この状況で活かせると思えるほど、陽向は能天気ではなかった。
食べられる木の実もキノコも何も知らない。野外で暖を取る方法も、野宿の仕方もだ。
『もしここがまだ東京なら安全だとは思うけど、これだけ歩いてもまだ森が続く自然公園が果たして東京にあったかな。
いつ熊が出てもおかしくないようなところで野宿だけはご免被る。なんとか日が出ている間に人里に帰らなくては』
そんな陽向の焦りもむなしく、太陽は真上を過ぎ、やがて傾いていった。
紅葉が夕焼けのオレンジに照らされて綺麗だが、今の陽向にそれを鑑賞する余裕はない。
おなかが空いた。でも、見つかるのは毒毒しい見た目のキノコやシダ植物、食べて良いのかもわからない赤い実だけ。
試しに赤い実を摘んでみたが、それを口に入れる勇気はなかった。
ここが奥多摩でも富士の樹海でも、東に向かえばなんとかなるはずだった。太陽の位置を参考に随分と歩いたのに、全く人の痕跡が見当たらない。
『少し前に流行った異世界転移? まさかな』
と冷笑しているうちに、日が暮れてしまった。
日が暮れれば、どこかに明かりが見えるものなのではと淡い期待をしていた陽向だが、残念ながら月あかり以外に明るいものはなかった。夜の森は、輝く星々さえも木々に遮られて漆黒の闇を湛えている。
現代人が素手だけで火を起こせる訳もなく。暖を取ることも、闇を照らすことも出来ない自分は、なんと無力なことか。
木に登って遠くを見渡したいとも考えたのだが、陽向の運動神経では折れた枝に跨るのが関の山だった。
『これでも地面に寝るよりはマシだろう。目を閉じているだけでも人は休めると聞くし』
陽向は幹にしがみつきながら枝の上に座り、幹に顔を預け、目を閉じて夜が明けるのを待つことにした。
『ホーホー』とフクロウだろうか、鳥が鳴いているのがやけに煩く感じる。
葉がこすれる音でハッと目覚めては獣を警戒し、あと少しで眠れるのにずっと眠れない。
だんだんと下がっていく気温に、『もし明日の朝、目覚めなかったらどうしよう』と不安な夜を過ごした。
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