【完結】会社をクビになったら異世界で追放魔術師に性処理係として拾われました

夜曲

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第一章

卑屈

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 陽向が目覚めたら朝だった。気絶してしまったせいで、夕食を食べ損ねてしまった。

 多少は予想していたことだったとはいえ、ここまで身体がキツイとは思わなかった。陽向は自分の三十路の身体を呪った。翌朝起き上がれないだとかは、小説の中の話だけだと思っていた。

 見事に足腰が立たず、掠れた声しか出ない自分に、命の危険を感じる。毎日これをされてはたまらない。確実に死期を早める。やはり、ネオに後ろで繋がることを教えたのはやや性急過ぎたのかもしれない。

 もう何年か待って、陽向への興味関心が薄れてからネオの心をつなぎとめるために……と考えて、自分のその卑屈な思考が嫌になる。こんな自分が何もなしに長い間愛されるわけがないと思ってしまうのは、親から無償の愛を得られなかったからかもしれない。

 若々しい男に文字通り介護されている自分。この絵面を見るだけで、ネオとの年齢差を思い知らされる。両想いになったら、その翌朝にはこの恋が長続きしないのではないかと心配し始める自分のなんと女々しいことか。


「すまぬ。やりすぎてしまった……」

 ネオは真摯に反省しているようだ。あの性欲魔のネオが、今朝は陽向に性的意図を持って触れなかったことがその証だろう。
 優しいキスと頭を撫でてくれただけという、絵にかいたような恋人同士の朝。ネオとずっと爛れた関係を築いていた陽向は面食らった。

「次からは、ほどほどにしてくれ」
「善処しよう」

 わかったとは言わないところが、自分の欲望に正直で結構である。

 ネオは、一口サイズの朝食を陽向の口に運び、かいがいしく世話をしてくれている。だいぶ汚したシーツも綺麗なものに換えてあった。
 それどころか、部屋中の物がなくなっている。引っ越すと言っていたのは本当のことのようだった。

『別にこのままここでもいいのに』
 陽向はネオとこの山小屋で過ごす日々をかなり気に入っていたことに気が付いた。

「本当に引っ越すのか?」
「あぁ。あっちの方が寝台も丈夫だし、ここを作った魔導師らの書庫もあって、陽向は喜ぶと思う」

 確かに二メートル近い巨体が動き続けるのに、この簡素な木足の寝台では心もとないだろう。最初に言われた理由の方が本音なのは駄々洩れだったが、書庫があるという理由のほうも陽向は聞き逃さなかった。

「書庫って、もしかして恐竜の研究をしていたという記録があるところか?」
「あぁ。そうだ。変人の巣窟に住んでいたら俺まで変人になるのではないかと避けていたが、陽向は彼らの記録が読みたいのだろ?
 もし恐竜の研究をするなら、それらの記録に近い方がよいだろう」

 確かにそうだ。その場所がここからどれくらい離れているのか解らないが、この肉食恐竜が闊歩する森の中を、ネオの護衛無しで毎日通えるほどの武力が陽向にはない。また、例え後孔を使った交わりを三日に一回に制限するとしても、翌朝は毎回こうなることが目に見えていた。どうせベッドから降りられなくなるのなら、その時間は記録を読み漁っていたい。


 取り急ぎ必要なものを粗方格納結界に納めると、ネオは陽向が寝ている布団ごと陽向を横抱きにしたままで本邸に向かった。

 極力揺れない様に馬でゆっくり走って二十分ほどか。歩いたらどれくらいかかる距離なのだろうか。現代人の陽向には、やはり想像がつかなかった。

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