【完結】会社をクビになったら異世界で追放魔術師に性処理係として拾われました

夜曲

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第一章

肖像画

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 着いた屋敷は二階建てで、学校の体育館ほどの大きさだった。堀には水が張られ、少々生い茂り過ぎているが、元は庭園もあったのだろう。確かに貴族の屋敷としては小さめかもしれないが、二人ならまだしも、ネオがたった一人で住むのは寂しいだろう。ネオがここではなく、山小屋に住んでいた気持ちが解った気がした。

「使用人はいないのか?」
「つけてくれるという話だったが、外は肉食恐竜が闊歩している。こんな陸の孤島で俺と過ごすのは怖かろう。断った」
 優しいネオらしい話だった。


 台所、食堂、客室、浴室、書庫。ネオに抱きかかえられたまま一つ一つの部屋を案内される。
 中でも、書庫は圧巻だった。この膨大な蔵書の中に歴代の闇魔術師たちの手記があるのか。

 今日は一日寝室に籠る予定だからと、ネオは本を何冊か選ばせてくれた。



 やはりこの生活は神様が俺にくれたギフトなのか、この国の文字が読めたのは僥倖だった。

 ただ問題は、初代闇魔導師の手記と思われる本だけがとてつもない癖字で解読が難しいことだった。さすがネオに変人と呼ばれるだけのことはある。こればっかりは神様もどうしようもないだろう。
 ネオは辛うじて読めるというので、ネオの時間があるときに読み上げてもらうことになった。

 終点は、二人の寝室となる部屋だ。そこに布団ごと運ばれ、寝台の上に横たえられた。



 緑を基調とした部屋が、ネオのオレンジの髪と合っている気がした。さすが王子様だ。山小屋の中にいるよりも、この貴族の香りを残した調度品が並ぶ部屋の方が、ネオに相応しい気がする。

『これからはここに住むのか』
 現代の基準で言えば大豪邸だ。自分の実力ではないのに、こんな大きな屋敷に住む。陽向は玉の輿に乗ったような、どこか足元が覚束ないふわふわとした心地になった。




 ネオが、窓を開けて風魔法で部屋中の塵を集めて外に追い出してくれた。つくづく魔法というものは便利だと思う。今までは、複数属性持ちだということを陽向に悟られないように魔法の使用を最小限にしていただけで、普段は気軽に使っていたというのだから驚いた。
 だってネオは井戸から水を汲み、薪割りまでしていたのだ。陽向にどう思われるのかをそこまで気にしていたとは。この十日間。意図せずネオに多大な迷惑をかけていたらしい。


「ヒナタが住みやすいように、少し屋敷を整えてくる」
「解った。ありがとう」

 そういって見送るが否や、陽向は待ちきれずに書庫から拝借した本を開いた。字は読めなくとも図や絵は眺められる。生きた恐竜に関する記録が目の前にあるのだから、読まない手はない。

 これは、アルゼンチノサウルスだろうか、これはアルバートサウルスだろうかと想像しながら目を通す時間はとても楽しかった。数冊目を通して、最後の一冊に手を伸ばす。

 できる限り装飾のない手書きっぽいものを選んできたため、他のはただ紙を束ねていただけだったのだが、これはきれいな装飾がなされていた。背表紙にオレンジ色の宝石が埋め込まれていたのに惹かれて、これを選んだのだ。
 ネオの瞳を思わせる宝石だったから。


 開いてすぐ、陽向は中に描かれていた肖像画にくぎ付けになった。そこには、金髪碧眼の美丈夫とオレンジの瞳の線が細い美青年が並び立っていた。髪こそ金色だが、オレンジの瞳。

 オレンジの瞳は、この世にネオだけだったのではなかっただろうか。

 なら、この人はネオ?だが、年齢が合わない。
 異世界人の年齢はよくわからないが、三十代後半くらいはありそうな見た目だ。

 陽向はこの絵から目が離せなかった。
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