44 / 71
第一章
肖像画
しおりを挟む
着いた屋敷は二階建てで、学校の体育館ほどの大きさだった。堀には水が張られ、少々生い茂り過ぎているが、元は庭園もあったのだろう。確かに貴族の屋敷としては小さめかもしれないが、二人ならまだしも、ネオがたった一人で住むのは寂しいだろう。ネオがここではなく、山小屋に住んでいた気持ちが解った気がした。
「使用人はいないのか?」
「つけてくれるという話だったが、外は肉食恐竜が闊歩している。こんな陸の孤島で俺と過ごすのは怖かろう。断った」
優しいネオらしい話だった。
台所、食堂、客室、浴室、書庫。ネオに抱きかかえられたまま一つ一つの部屋を案内される。
中でも、書庫は圧巻だった。この膨大な蔵書の中に歴代の闇魔術師たちの手記があるのか。
今日は一日寝室に籠る予定だからと、ネオは本を何冊か選ばせてくれた。
やはりこの生活は神様が俺にくれたギフトなのか、この国の文字が読めたのは僥倖だった。
ただ問題は、初代闇魔導師の手記と思われる本だけがとてつもない癖字で解読が難しいことだった。さすがネオに変人と呼ばれるだけのことはある。こればっかりは神様もどうしようもないだろう。
ネオは辛うじて読めるというので、ネオの時間があるときに読み上げてもらうことになった。
終点は、二人の寝室となる部屋だ。そこに布団ごと運ばれ、寝台の上に横たえられた。
緑を基調とした部屋が、ネオのオレンジの髪と合っている気がした。さすが王子様だ。山小屋の中にいるよりも、この貴族の香りを残した調度品が並ぶ部屋の方が、ネオに相応しい気がする。
『これからはここに住むのか』
現代の基準で言えば大豪邸だ。自分の実力ではないのに、こんな大きな屋敷に住む。陽向は玉の輿に乗ったような、どこか足元が覚束ないふわふわとした心地になった。
ネオが、窓を開けて風魔法で部屋中の塵を集めて外に追い出してくれた。つくづく魔法というものは便利だと思う。今までは、複数属性持ちだということを陽向に悟られないように魔法の使用を最小限にしていただけで、普段は気軽に使っていたというのだから驚いた。
だってネオは井戸から水を汲み、薪割りまでしていたのだ。陽向にどう思われるのかをそこまで気にしていたとは。この十日間。意図せずネオに多大な迷惑をかけていたらしい。
「ヒナタが住みやすいように、少し屋敷を整えてくる」
「解った。ありがとう」
そういって見送るが否や、陽向は待ちきれずに書庫から拝借した本を開いた。字は読めなくとも図や絵は眺められる。生きた恐竜に関する記録が目の前にあるのだから、読まない手はない。
これは、アルゼンチノサウルスだろうか、これはアルバートサウルスだろうかと想像しながら目を通す時間はとても楽しかった。数冊目を通して、最後の一冊に手を伸ばす。
できる限り装飾のない手書きっぽいものを選んできたため、他のはただ紙を束ねていただけだったのだが、これはきれいな装飾がなされていた。背表紙にオレンジ色の宝石が埋め込まれていたのに惹かれて、これを選んだのだ。
ネオの瞳を思わせる宝石だったから。
開いてすぐ、陽向は中に描かれていた肖像画にくぎ付けになった。そこには、金髪碧眼の美丈夫とオレンジの瞳の線が細い美青年が並び立っていた。髪こそ金色だが、オレンジの瞳。
オレンジの瞳は、この世にネオだけだったのではなかっただろうか。
なら、この人はネオ?だが、年齢が合わない。
異世界人の年齢はよくわからないが、三十代後半くらいはありそうな見た目だ。
陽向はこの絵から目が離せなかった。
「使用人はいないのか?」
「つけてくれるという話だったが、外は肉食恐竜が闊歩している。こんな陸の孤島で俺と過ごすのは怖かろう。断った」
優しいネオらしい話だった。
台所、食堂、客室、浴室、書庫。ネオに抱きかかえられたまま一つ一つの部屋を案内される。
中でも、書庫は圧巻だった。この膨大な蔵書の中に歴代の闇魔術師たちの手記があるのか。
今日は一日寝室に籠る予定だからと、ネオは本を何冊か選ばせてくれた。
やはりこの生活は神様が俺にくれたギフトなのか、この国の文字が読めたのは僥倖だった。
ただ問題は、初代闇魔導師の手記と思われる本だけがとてつもない癖字で解読が難しいことだった。さすがネオに変人と呼ばれるだけのことはある。こればっかりは神様もどうしようもないだろう。
ネオは辛うじて読めるというので、ネオの時間があるときに読み上げてもらうことになった。
終点は、二人の寝室となる部屋だ。そこに布団ごと運ばれ、寝台の上に横たえられた。
緑を基調とした部屋が、ネオのオレンジの髪と合っている気がした。さすが王子様だ。山小屋の中にいるよりも、この貴族の香りを残した調度品が並ぶ部屋の方が、ネオに相応しい気がする。
『これからはここに住むのか』
現代の基準で言えば大豪邸だ。自分の実力ではないのに、こんな大きな屋敷に住む。陽向は玉の輿に乗ったような、どこか足元が覚束ないふわふわとした心地になった。
ネオが、窓を開けて風魔法で部屋中の塵を集めて外に追い出してくれた。つくづく魔法というものは便利だと思う。今までは、複数属性持ちだということを陽向に悟られないように魔法の使用を最小限にしていただけで、普段は気軽に使っていたというのだから驚いた。
だってネオは井戸から水を汲み、薪割りまでしていたのだ。陽向にどう思われるのかをそこまで気にしていたとは。この十日間。意図せずネオに多大な迷惑をかけていたらしい。
「ヒナタが住みやすいように、少し屋敷を整えてくる」
「解った。ありがとう」
そういって見送るが否や、陽向は待ちきれずに書庫から拝借した本を開いた。字は読めなくとも図や絵は眺められる。生きた恐竜に関する記録が目の前にあるのだから、読まない手はない。
これは、アルゼンチノサウルスだろうか、これはアルバートサウルスだろうかと想像しながら目を通す時間はとても楽しかった。数冊目を通して、最後の一冊に手を伸ばす。
できる限り装飾のない手書きっぽいものを選んできたため、他のはただ紙を束ねていただけだったのだが、これはきれいな装飾がなされていた。背表紙にオレンジ色の宝石が埋め込まれていたのに惹かれて、これを選んだのだ。
ネオの瞳を思わせる宝石だったから。
開いてすぐ、陽向は中に描かれていた肖像画にくぎ付けになった。そこには、金髪碧眼の美丈夫とオレンジの瞳の線が細い美青年が並び立っていた。髪こそ金色だが、オレンジの瞳。
オレンジの瞳は、この世にネオだけだったのではなかっただろうか。
なら、この人はネオ?だが、年齢が合わない。
異世界人の年齢はよくわからないが、三十代後半くらいはありそうな見た目だ。
陽向はこの絵から目が離せなかった。
73
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話
紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。
理想の彼氏はスパダリよ!
スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。
受:安田陽向
天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。
社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。
社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。
ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。
攻:長船政景
35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。
いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。
妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。
サブキャラ
長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。
抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。
兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。
高田寿也:28歳、美咲の彼氏。
そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。
義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?
めがねあざらし
BL
役立たずと追放されたΩのリオン。
治癒師の家に生まれながら癒しの力もないと見放された彼を拾ったのは、獣人国ザイファルの将軍であり、冷徹と名高い王太子・ガルハルトだった。
だが、彼の傷を“舐めた”瞬間、リオンの秘められた異能が覚醒する。
その力は、獣人たちにとって“聖なる奇跡”。
囲い込まれ、離されず、戸惑いながらも、ガルハルトの腕の中で心は揺れて──偽りの関係が、いつしか嘘では済まなくなっていく。
異能×政治×恋愛。
運命が交錯する王宮オメガバースファンタジー。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。
篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる


