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第一章
日記
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「入るぞ」
そこへ屋敷の片づけを終えたネオが、軽食を携えて戻ってきた。
陽向は、すぐに肖像画を見せながら聞く。
「これ、誰だかわかるか?」
ネオも初めて見た絵の様で、食い入るようにそれを眺めた。そのページの横にあった短い一文とサインを読み上げる。
「この眩しき日々の記録を我が最愛に捧ぐ。ゲルバー・ヘリオドール。
――ここの恐竜を生き返らせた光の魔術師の名前だ。だが、このオレンジの瞳は……誰なんだ」
ページをめくると、何やらびっしりと書き連ねてある。ただ、文字が極度の癖字で、陽向では読めない。
「書いてある字、読める?」
「あぁ。読んでみよう」
『ベルン歴八十九年三月七日。ここ辺境の地に、我が最愛の為の楽園を創ることにした。喜んでくれると嬉しい。
四月十日。死者蘇生の魔法は、なかなかに難しい。さすが禁忌魔法とされているだけあるな。だが、この私にできないことはない。絶対に実現して我が最愛を喜ばせたい。
九月二十七日。これで百回目の失敗だ。骨しか残っていない死者を蘇らせるのは、やはり無理なのかもしれない』
陽向とネオは顔を見合わせた。
「これは……この光の魔術師さんの日記っていうことなのかな」
「あぁ。その様だな。そしてこの”我が最愛”がオレンジの瞳を持つ男なのだろうか」
陽向は、早くこのオレンジの瞳を持つ青年が誰なのか知りたくて、続きの解読を促した。
『十月十二日。とうとう恐竜を生き返らせることができた!だが、予想以上に凶暴で力が強く、檻に閉じ込めておくのは難しい。早く我が最愛に見せなくては。
十月二十日。とうとう我が最愛を城から攫うことに成功した。最高の気分だ!』
二人はまた顔を見合わせた。
「城から攫ったって、書いてあるね」
「ということは王族なのだろうか。過去に俺以外にもオレンジの瞳の王族がいたのか? そんなことは聞いたこともないのだが……」
早く続きをと気持ちが急く。
『十月二十五日。我が最愛をこの愛の巣に迎え入れることができた。恐竜をみて、物語の中で読んだ本物のドラゴンだと喜んでいた。苦労が報われた』
「ふふっ。きっと、陽向の様な人だったのだな」
「僕も恐竜が出てくる物語が好きだったから、気持ちは凄くよくわかるよ」
最愛の人を喜ばせようと、好きな生き物を生き返らせてしまうなんて、すごいなと単純に感心する。
『攫ったと書かれていたが、本人が嫌がっていないようで良かった』と陽向は安堵した。
『十月二十七日。やはり我が最愛の結界魔法は完璧だ。コイツには鉄製の檻をいくつも壊されたが、我が最愛の結界魔法から逃げられる肉食恐竜はいない。だが、餌の調達が難しい』
「結界魔法!ということは」
「あぁ。この者の最愛は、闇魔術師ということだ。恐らく、これは恐竜を生き返らせたと伝えられている光の魔術師と闇の魔術師の二人なのだろう」
「二人は恋人だったということか? それで、ここに恐竜の楽園を築いた」
なんて素敵な話なんだろう!と目をキラキラさせる陽向と対照的に、ネオの顔は暗い。
『十月三十日。肉食恐竜を番犬にするのはなかなか難しいようだ。全然言うことを聞いてくれない。
十一月二十日。やはり、臼歯を持つ恐竜は比較的御し易い。これからは草食恐竜を中心に生き返らせよう
ベルン歴九十年一月八日。肉食恐竜に食われないように、草食恐竜に守護結界をかける方法を我が最愛が開発してくれた。やはり我が最愛は天才だ!』
「これ、今もネオがやっていることだね」
「そうだな。比較的初期からこの方法を取っていたのか」
『一月十四日。とうとう騎士団に我が最愛の居場所が露見した。だが、腑抜けどもは恐竜に恐れおののき逃げ帰った。
二月六日。国王の采配で、この地が恐竜研究区として定められた。王家は、不干渉を貫くことを決めたようだ。我が最愛を冷遇したあの愚王にしては、良い決断だ』
陽向は、ネオの顔を見た。ネオは、何か考え事をしているのか、ずっと眉間にしわを寄せている。
その後は、新しい恐竜を生き返らせては、その恐竜が好む餌を探し……という試行錯誤の日々が書かれていた。
そしてその物語の最後にはこう記載してあった。
そこへ屋敷の片づけを終えたネオが、軽食を携えて戻ってきた。
陽向は、すぐに肖像画を見せながら聞く。
「これ、誰だかわかるか?」
ネオも初めて見た絵の様で、食い入るようにそれを眺めた。そのページの横にあった短い一文とサインを読み上げる。
「この眩しき日々の記録を我が最愛に捧ぐ。ゲルバー・ヘリオドール。
――ここの恐竜を生き返らせた光の魔術師の名前だ。だが、このオレンジの瞳は……誰なんだ」
ページをめくると、何やらびっしりと書き連ねてある。ただ、文字が極度の癖字で、陽向では読めない。
「書いてある字、読める?」
「あぁ。読んでみよう」
『ベルン歴八十九年三月七日。ここ辺境の地に、我が最愛の為の楽園を創ることにした。喜んでくれると嬉しい。
四月十日。死者蘇生の魔法は、なかなかに難しい。さすが禁忌魔法とされているだけあるな。だが、この私にできないことはない。絶対に実現して我が最愛を喜ばせたい。
九月二十七日。これで百回目の失敗だ。骨しか残っていない死者を蘇らせるのは、やはり無理なのかもしれない』
陽向とネオは顔を見合わせた。
「これは……この光の魔術師さんの日記っていうことなのかな」
「あぁ。その様だな。そしてこの”我が最愛”がオレンジの瞳を持つ男なのだろうか」
陽向は、早くこのオレンジの瞳を持つ青年が誰なのか知りたくて、続きの解読を促した。
『十月十二日。とうとう恐竜を生き返らせることができた!だが、予想以上に凶暴で力が強く、檻に閉じ込めておくのは難しい。早く我が最愛に見せなくては。
十月二十日。とうとう我が最愛を城から攫うことに成功した。最高の気分だ!』
二人はまた顔を見合わせた。
「城から攫ったって、書いてあるね」
「ということは王族なのだろうか。過去に俺以外にもオレンジの瞳の王族がいたのか? そんなことは聞いたこともないのだが……」
早く続きをと気持ちが急く。
『十月二十五日。我が最愛をこの愛の巣に迎え入れることができた。恐竜をみて、物語の中で読んだ本物のドラゴンだと喜んでいた。苦労が報われた』
「ふふっ。きっと、陽向の様な人だったのだな」
「僕も恐竜が出てくる物語が好きだったから、気持ちは凄くよくわかるよ」
最愛の人を喜ばせようと、好きな生き物を生き返らせてしまうなんて、すごいなと単純に感心する。
『攫ったと書かれていたが、本人が嫌がっていないようで良かった』と陽向は安堵した。
『十月二十七日。やはり我が最愛の結界魔法は完璧だ。コイツには鉄製の檻をいくつも壊されたが、我が最愛の結界魔法から逃げられる肉食恐竜はいない。だが、餌の調達が難しい』
「結界魔法!ということは」
「あぁ。この者の最愛は、闇魔術師ということだ。恐らく、これは恐竜を生き返らせたと伝えられている光の魔術師と闇の魔術師の二人なのだろう」
「二人は恋人だったということか? それで、ここに恐竜の楽園を築いた」
なんて素敵な話なんだろう!と目をキラキラさせる陽向と対照的に、ネオの顔は暗い。
『十月三十日。肉食恐竜を番犬にするのはなかなか難しいようだ。全然言うことを聞いてくれない。
十一月二十日。やはり、臼歯を持つ恐竜は比較的御し易い。これからは草食恐竜を中心に生き返らせよう
ベルン歴九十年一月八日。肉食恐竜に食われないように、草食恐竜に守護結界をかける方法を我が最愛が開発してくれた。やはり我が最愛は天才だ!』
「これ、今もネオがやっていることだね」
「そうだな。比較的初期からこの方法を取っていたのか」
『一月十四日。とうとう騎士団に我が最愛の居場所が露見した。だが、腑抜けどもは恐竜に恐れおののき逃げ帰った。
二月六日。国王の采配で、この地が恐竜研究区として定められた。王家は、不干渉を貫くことを決めたようだ。我が最愛を冷遇したあの愚王にしては、良い決断だ』
陽向は、ネオの顔を見た。ネオは、何か考え事をしているのか、ずっと眉間にしわを寄せている。
その後は、新しい恐竜を生き返らせては、その恐竜が好む餌を探し……という試行錯誤の日々が書かれていた。
そしてその物語の最後にはこう記載してあった。
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