【完結】アーティ~太陽の様な笑顔を守りたい~

夜曲

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オラネコBL編

6.連れ込み宿

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 あぁ、青年の名前はアーティというらしい。
 名前と言うか、クイ人の名前は長い上に複雑で発音がしにくいから、チューレンというニックネームを付けるのが一般的なんだそうだ。
 アーティは太陽という意味で、彼を飼っていた日本人が付けたらしい。なんでも、太陽の様に笑うからだそうだ。

 俺の前ではさっきから悲しい顔ばかりをさせてしまっている彼。そうか。その人は、彼の太陽の様な笑顔を見たことがあるんだな。なんだか心の奥がツンとした気がした。


 さすが連れ込み宿で、ベッドは大きい。部屋まで案内してくれた宿の人は、ベッドの傍の引き出しをガッと勢いよく開けると、指を差して俺に見せつけた。
 覗き込むと、コンドームやローション、それから卑猥な道具類が入っていた。

 うわぁ~~~。もう、もろヤリ部屋じゃないかぁ~~~。うわぁ~~~宿の人公認かぁ。あぁ~そんなつもりじゃなかったのに。
 アーティもガッツリ中身を見てしまっている。気まずい。

 宿の人がなかなか部屋から出ていかないのを怪訝に思っていると、

「その人、チップを待ってるんだよ。あと、俺の連れ込み料。」
 とアーティが教えてくれた。


「え?チップ??」

 チップというのはホテルでベルマン?やポーター?さんに渡すやつだよな?
 でも、この人がやってくれた事は、部屋まで案内して引き出しを開けて余計なものを見せてくれただけなんだけどな。

 三泊四日だから、荷物はリュックサック一つだけだ。ホテルに物を置いておくのも危ないと聞いたから。だから、ポーター宜しく、別に荷物を運んでくれたわけでもない。
 心情的には渡したくなかったが、仕方ない。アーティに相場を聞いて、チップも払ってやるか。


「□□□□□?□□□□□□、□□□□□□□□。」
「■■■!!■■■■、■■■■■。」


 二人で何かを一頻り話し合ったかと思ったら、
「連れ込み料、500バーだってさ。チップは20バー位で多分大丈夫。」
 とアーティが言う。まぁ、それ位ならと、俺は渋々払った。


 宿の人が居なくなってすぐ、アーティにはシャワーを勧めた。
 申し訳ないが、ちょっとその臭いをどうにかして欲しい。

 隅々まで綺麗に丁寧に洗う様にと指示を出して、俺は観光雑誌を取り出して、明日の観光プランを練り直す事にした。もうあの地下鉄は使いたくない。地下鉄を使わなくても、歩いて最寄りの観光地まで行けないだろうか。

 でも、同じ部屋の中で衣擦れの音が聞こえて来るともうダメだった。そうだ。ここ…脱衣所が無いし、シャワーブースがガラス張りだった!!
 ちょっと待てよ…アーティの裸が丸見えじゃないか!!!
 とてもじゃないけど観光プランなんて練れない。シャワーの音を聞きながら、俺は心臓がバクバクとした。えっえっ。俺、部屋から出てた方がいい??

 シャワーを浴び終わったアーティが、身体を拭きながら出てきた。
 えっ待って。そこにバスローブあったでしょ?せめてバスローブ着てから出てきて~~~。
 俺は観光雑誌に目を落とす振りをしながら、視界の隅でチラッチラッとバスローブを着こむアーティの様子を見てしまった。
 アーティの少し長い黒髪からは、ポタポタとしずくが垂れている。

「ごめん、タオル一枚じゃ足りなかった?一応持ってきてるタオルがあるから、それ使う?」

 そう言って、俺はタオルを渡そうとしたが、「えーめんどくさいよぉ~」とアーティは言う。

「え…そんなポタポタで、風邪ひかない?」

「はははははははは。ストリートチルドレンが水に濡れた位で、風邪!!!!はははははははは。」

 アーティのは大口を開けて笑っている。その笑顔は、確かに太陽みたいに明るいなと思った。その笑顔から、逆境に負けず強く生きてきたアーティの生命力を感じる。可愛いのにカッコイイな。もっと見ていたい。

「でもさ、そんなに言うなら、髪の毛拭いてよ。」

「え!!俺が??」

「だって、髪の毛濡れてるの気になるんでしょ?ほら。」
 とアーティがベッドに腰かけている俺の前に立ち、お尻で俺を後ろに押した。どうやら俺の股の間に座りたいみたいだ。

 ちょっちょっ!!ムリムリムリムリ!!!こんな至近距離でお尻プリプリするなって!!しかも、それを俺に押し付けるなって!俺の愚息は瞬時にギュイーンと反応した。

 アーティは無理やり俺の股の間に座っているが、俺のギンギンな愚息に絶対に気が付いている。気が付いていて、わざとお尻を動かして、俺の童貞チンコを煽っている。

 いや…ダメだ…このままでは暴発してしまう。服越しにお尻を押し付けられただけで暴発してしまったら、さすがに恥ずかしすぎる…。早くこの状態から脱しなくては。
 俺はタオルを使って、超特急でアーティの濡れた髪を拭いた。よかった。ちゃんと洗ってきてくれた様で。全身から良い香りがする。その香りをずっと嗅いでいたい…。ダメだダメだ。暴発してしまう。早く離れなければ。

 俺が焦って拭き終わってから、後ろに逃げる様にしてベッドから下りると、
「ありがと。シャワー久しぶりで、嬉しかったよ。」
 と嬉しそうにアーティの方から話しかけてくれた。

 良かった。このまま揶揄われたり、もっと追いすがってきたらどうしようかと思っていたんだ。
 この空気を維持しなければ。俺は胸をなでおろし、何か話題を探してアーティと会話を継続することにした。

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