【完結】アーティ~太陽の様な笑顔を守りたい~

夜曲

文字の大きさ
7 / 14
オラネコBL編

7.アーティ

「それは良かった。いつも路上に寝てるのか?」

「う~ん。まぁ、廃屋みたいなのがあってさ、他のストリートチルドレン達と一緒に、そこで固まって寝てる。
 俺みたいなのを買ってくれる人なんてもう殆ど居ないからさ。用心棒兼雑用みたいな感じで仲間に入れて貰ってる。」

「いや。そう言うなって。アーティは可愛いし、綺麗だと思うよ。」

「ありがと。じゃあ、買ってくれてもいいのに。」

「それは…ちょっと…ごめん。まだ決心がつかなくて。」

「いいよ。いいよ。今日はシャワーが浴びれたし、ふかふかのベッドで寝れて、明日は朝ご飯が食べられる。
 僕、それだけで幸せだから。」

「そうか…。」

 俺はどう声をかけてよいのか解らず、黙り込んでしまった。


「明日はどこ行くの?」

「え~っと、出来る限り地下鉄を使わずにこの寺に行こうと思ってて…。」


「あ~そこなら歩いても20分かからないから、大丈夫だよ。そこは観光地だからさ、普通に街も綺麗だし。」

「そうか…。なぁ、俺、スラムって初めて来たんだが、そういうところ、バンポクにはまだ沢山あるのか?」

「あぁ、前まではね。観光客が多かったから、結構綺麗にされちゃっててさ。スラムらしいスラムは大分少なくなってきてたんだ。

 でも、ほら、この病禍だろ?観光客が来なくなっちゃったらこの通り。
 僕達ストリートチルドレンも、この街の人たちも、観光客が落としてくれるお金で生活してたから…。この3年間で、何人も仲間が餓死で死んだよ。

 観光客に見られた時に見苦しくない様に整備してた様なもんだからさ、観光客が来ないんなら、別に綺麗にしなくてもいいってんでさ。こんなに観光地に近いのに、街は荒れ放題。病気も流行り放題。

 最近はちょっと良くなってきたけど、今度は飛行機代が高いんだろ?だからそんなに観光客も戻ってないんだ。この3年間が僕の一番の稼ぎ時だった時だったのにな。観光客が来るのを待ってたら、もう盛りが過ぎちゃったよ。
 薹が立っちゃったから、今から新規の客を捕まえるのも無理だし。困ってるんだ。」

 アーティは色々と話してくれるし、良い機会だから、ずっと気になっていた事を聞いてみる事にした。

「日本人に飼われてたってのは…聞いてもいいか?」

「別に聞いちゃいけない事はないさ。単身赴任の駐在員にね。飼われてたんだ。
 でも、病禍で駐在が無くなったんだって。だから帰っちゃったんだ。日本に。

 日本には奥さんも子供も居たらしいよ。今までそんな事一言も言わなかったのに。」

「それは…。」

「それが三年前の事。それから僕はまたストリートチルドレンに戻ったんだけど、もう僕の居場所は無かった。飼われてる間にさ、僕はもう、ここをシマにしてるマフィアの保護から外れちゃってたんだ。そりゃあ三年間も不在にしていて、ずっと媚びを売ってなかったんだもの。仕方ないよね…。
 
 だから僕はさ、もう碌な仕事を回してもらえないから、自分で探すしかないんだ。
 クイ人とか、あんまり金にならない客を中心にさ。」

 え?つまりその日本人駐在員の人は、今16歳のアーティを三年前に捨てて、更にその三年前から飼い始めたから…え!?
 俺は更に何も言えなくなってしまった。聞けば聞くほど悲しくなる。

 世界にそんな経験をしている子供がいるなんて。しかも、同じ日本人がそんな悲しい経験をさせているなんて…。


 俺はどうアーティに謝って良いのか解らなかった。本当は沢山謝りたい。
 でも、口から零れ落ちたのは、「ごめん。」という、思っていたよりも軽い言葉だった。情けなくて、涙が滲んでくる。


「え??なんでリョウが謝るの?」
 それだけでもアーティは驚いたみたいだった。

「いや…その…同じ日本人が。だからごめん。」

「まぁ、ここではよくある事だよ。別に僕の経歴なんて、恵まれてる方だよ。少なくとも三年間は、食事と寝床に不自由しなかったからね。」

「でも…。」

「あーあーあー変な話してごめんね!明日から観光でしょ?寺は朝早くからやってるから、今夜は早く寝たら?僕ももう寝たいし。おやすみなさい!」

 そう言って、アーティはすぐに寝てしまったから、俺も寝ることにした。
 広いと思っていたベッドも、二人で寝ると案外狭く感じるものだな。男の子と同じベッドに寝るのも初めてだ。

 隣にアーティが居ると思うと、ちっとも眠れない。さっき視線の端でのぞき見してしまったアーティの裸体が、脳裏を過ぎる。
 明日も観光があるんだから、早く静まってくれ!!俺の童貞マインドよ!!
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

あの部屋でまだ待ってる

名雪
BL
アパートの一室。 どんなに遅くなっても、帰りを待つ習慣だけが残っている。 始まりは、ほんの気まぐれ。 終わる理由もないまま、十年が過ぎた。 与え続けることも、受け取るだけでいることも、いつしか当たり前になっていく。 ――あの部屋で、まだ待ってる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。