ほおつきよ

兎守 優

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一 盲目

十二枚め

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 ここ一週間のことがまるで記憶にない。
 早く来ないかなと切望したのは、お気に入りのレシピの発売を心待ちにしたとき以来だ。

 誰にも見せられないような浮かれようで帰宅するなり、もらったしおりを本から抜き取って眺めたり、何か作って持っていったら喜ぶかなと妄想してみたり。

 とうとう神田さんの招待を受けて自宅にお邪魔する当日になってしまった。
 目覚ましが相変わらず、うるさい。うっとりしていた夢見がすっかり台無しだ。
 朝食の用意をしていると、玄関のベルが鳴った。滅多に鳴らないはずなのに。相手は一人しかいない。

「はい?」
「斎藤夕空ゆらです! おは」

 元気な挨拶が飛んでくる前に、ガチャリとドアを開けて、聞こえてますよの合図を送った。ドアの前で大声で話されるのは、毎度のことながらとても困る。
 開けるなり、ズンっと迫ってくる。

「よっ! おはよう!」
「おはようございます」

 語尾を強めて、ちょっと不快感を露わにして、一歩引いた。

「わっ! ごめん、また、つい。今日、予定入ってたのすっかり忘れてた。だから、駅で夜一さんと待ち合わせて二人で行ってくんねえ?」
「神田さんに連絡したんですか?」
「ごめん、バス、間に合わなくなるから、頼む!」

 ペコリと頭を下げて、斎藤くんは走り去っていった。角にぶつかるギリギリ手前で曲がって、危なっかしいなとため息をつきながら見送った。

 困ったなぁ。彼が神田さんの家まで案内してくれるはずだったのに。

『朝早くにすみません。
斎藤くん、
急用で来れないみたいで。
どうしますか?』

 夜遅くの仕事もあるって言ってたからまだ起きてないかなと思ったけど、すぐに返事がきた。

『おはよう。
この間の駅前まで来れる?』
『はい。』
『じゃあ、十時頃待ち合わせでいい?』
『お願いします。』
『はーい。
気をつけて来てね。
また後で。』
『はい。』

 メッセージアプリのパリンを閉じた。
 斎藤くん、どうしてあんなに自由奔放で勝手なんだろう。予定があったのに約束したなんて失礼すぎる。

 ムカムカする気持ちとドキドキ高鳴る鼓動で気持ち悪くなりそうだった。
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