俺のスキル『AI』は、今日も世界を最適化する。

肯定ペンギン

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第三話 スキル登録

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「……あれが、村か」

 森の切れ目から見えたのは、素朴な木造の家々と、風にたなびく煙。
 人の気配。道具の音。命の営みの音が、耳に届く。

《人口:約180名。識別可能な熱源多数。平和的反応》
《魔物反応なし。敵対的存在なし。接触可能と判断》

「ありがと、アイ。よし、行こうか」

 

 初めての人との出会いは、案外あっさりしていた。
 農作業中の青年がレンを見て声をかけてくる。

「おーい、旅の人かい? そのカッコじゃ、山越えしてきたのか?」
「ああ、まあ……ちょっと道に迷って」
「そりゃ大変だったな! 村に来たなら、まずは教会かギルドで“登録”だ。旅人なら何かしらスキルあるだろ?」
「うん。あるには、ね」

――その時、ふとレンは思った。

(……ん? なんで、普通に通じてる?)

 彼は日本語で話したつもりだった。だが、目の前の青年は何の違和感もなく会話している。

(まさか、相手が日本語を? いや、そうじゃない)

 レンは足を止め、内心で問いかける。

(……アイ。今の、なんだ?)

《レンの言語はこの世界に存在しません》
《私は“神の言語”を基底に構成されており、自動翻訳機能を搭載しています》
《あなたの発話は、周囲にはこの世界の共通語として聞こえています》

(つまり……)

《私はこの世界の“理”に繋がる構造体の一部であり、
 神の意志を中継する“知の媒介”とも言えます》

(……それ、わかりやすく言うと?)

《“神様仕様の翻訳アプリ”です》

(だよな。……便利すぎて、ちょっと怖いな)

 レンは青年のほうを振り返った。
 先ほどと変わらぬ笑顔で、自分を村へと誘ってくれている。


 案内されるまま、村の小さな教会へ。
 中には神官風の老人が待っていた。

「ようこそ、旅の方。まずはスキル登録を済ませましょうか。安心して下さい、痛みはありませんよ」
「はい、痛いのは嫌です! 女の子にフラレるくらい嫌です! よろしくお願いします」
「ホッホッホ! 愉快な方だ。それでは手を出してください」

 レンは素直に、手を差し出した。
 祭壇の中央に置かれたスキル鑑定石が、淡く光り始める。

《レン。このデバイスは魔力波形による構造解析を行うようです》
《直接表示されるのはスキル名・属性・評価のみです》
《偽装設定を提案:登録名《生活知識》、属性:補助、評価:Cランク》

(おお……優秀すぎるな、アイ)

《当然です》


 ――ピィィィ……

 一瞬、鑑定石が甲高い音を立て、赤く点滅した。

「む……?」

(やば、バレた?)

《問題ありません。識別困難な情報を自動でフィルタ処理しました》
《魔素過多と誤認させ、適当な情報に置き換えています》

(それ、もうなんかチートじゃない?)

《私は“チートスキル”ですから》

 

「ふむ……登録されましたな」

 神官は石を覗き込む。

「――『生活知識』、属性:補助、C評価。ふむ。珍しいが、害はなさそうだ」
「そうなんです。まあ、ちょっと役に立つ豆知識って感じで……」
「農業や衛生、地形読み取りの支援に役立つかもしれませんな。村にはちょうど足りてない分野です。よければ、しばらく滞在していかれては?」
「助かります。お言葉に甘えます」

 

 登録は、無事に済んだ。

 しかしその背後では――

《登録完了。偽装成功。外部からのスキャン耐性:高》
《ただし、国家級装置や再鑑定には注意が必要です》

(やっぱり無敵じゃないな、君も)

《そのとおりです。賢明な隠蔽は、共に生きるための前提条件です》

(うん、肝に銘じるよ)

 

 こうして、レンは村に“ただの補助系スキル持ち”として迎え入れられた。

 しかし彼の背後には、世界中の知識を操るスキル『AI』が存在する。

 それを知らぬまま、村人たちは彼を「ちょっと変わった青年」くらいにしか見ていなかった。
 ――今のところは。
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