俺のスキル『AI』は、今日も世界を最適化する。

肯定ペンギン

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第四話 知恵の光、命のぬくもり

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 村に来て三日目。
 村人は気さくで、声を掛けると色々な話をしてくれた。
 この世界の食べ物や植物、風習など。
 人里での生活にも少し慣れてきた頃、レンは“ある噂”を耳にした。

「村の北の小屋に、病の子がいるんだってさ」
「神官さまでも治せない病気らしいよ。もう二日も寝たきりで……」

 話を聞いた瞬間、レンは走り出した。
 その顔にはいつものマイペースな感じは消えていた。

「アイ、聞いたか今の話?」

《感染症の可能性あり。退避準備を推奨します》

「アーイー?」

《……病状を確認し、医療データに基づき解決方法を提示します》

 レンは迷わず、小屋に向かった。

 
 中は薄暗く、湿った空気が重たく漂っていた。
 藁の敷かれた床に、痩せた小さな身体が横たわっている。
 少女は汗に濡れ、顔を赤らめ、細い息を繰り返していた。

「……彼女は?」

 息を切らせながら入ってきたレンの問いに、付き添っていた年配の女性が小さく答える。

「フエムといいます。三年前、森に捨てられていたのを拾って……村で育ててました」
「でも、ある日熱を出してから、ずっと……中央の神官様にも診てもらいましたが、“神の御心”と……」


 レンは黙って少女に近づき、床に膝をついた。

「アイ。スキャン、頼む」

《生命反応:微弱 体温:39.8℃ 心拍数:不規則 肝機能低下の兆候》
《皮膚赤斑と血液検査パターンより、病名候補:寄生性微胞子菌“ミルフィア菌”による重度感染症》
《致死率:約70%。残り猶予:24時間以内》

「みるふぃ……何だって?」

《ミルフィア菌と名付けました――この地方の土壌に含まれている寄生性の微胞子菌です。基本的には人が重篤に陥るほどの毒性は持ちませんが、稀に耐性のない者が発病すると推測されます》

「……治せるか?」

《仮に有効な抗菌成分を投与できれば、回復可能》
《推奨:ルカニア草の根部抽出液》
《採取地点:村の南、約3キロ先の高湿地帯》
《調合には煮沸と濃縮処理が必要。投与は口から》

 ルカニア草。それは村人から聞いた情報の中にも合った。
 ただ、珍しい植物で大体の位置しかわからないようだった。

「行くぞ」
「えっ、今から? でも日が暮れるし……!」
「関係ない。生きてる今のうちに、助ける。済まないが、彼女の熱だけはしっかり見てやってくれ」

 少女の熱い額に手を置き、レンは立ち上がった。

「フエム。待ってろ。ぜったい、戻ってくるからな」

 そして彼は走った。



 夕闇の森。蚊と湿気とぬかるみに囲まれながら、レンは目的の草を探し続けた。

「これも駄目か。アイ、次の候補」

《右前方、苔むした岩の陰に類似反応》

「確認……あった!」

 引き抜いた根からは、確かに苦く青い香りがした。

《成分濃度:適正範囲内。持ち帰って即時調合を》

 

 村に戻ると、村人にお願いして道具を借り、すぐに火を起こして煎じ始めた。
 鉄鍋の中で苦味をたたえる液体がぐつぐつと泡立ち、濃くなっていく。

「あと3分……よし、冷ましながら濾過ろか

《自動生成、補助開始――濾過作業》

 予め生成しておいた簡易的な濾過装置で不純物を取り除く。
 レンの手元に深緑の液体が出来上がった。

《手順完了。投与を》


「頼む。間に合ってくれ」

 付き添っていた女性の手を借りて寝ている少女の上体を起こすと唇を少し開かせ、レンはスプーンで少しずつ薬を口に持っていく。
 喉が弱々しく動き、苦しげに何度か咳をしたあと、薬が胃へと流れていった。

 あとは――待つだけだ。



 夜が明ける頃、少女は目を開けた。


「……あれ……?」
「お、起きたか。よかった……!」

 レンの声に、少女は小さく微笑んだ。

「ずっと、夢を見てた」
「夢? 怖かったか?」

 レンが尋ねると少女は小さく首を振った。

「ううん……あったかくて、やさしい夢だった……光の声がして……」

《無意識下で音声ナビゲーションを行っていました。リラックス促進のため》

「そいつは“アイ”って言うんだ。……お前を助けてくれた、知恵の妖精みたいなもんさ」
「……うん。ありがと、おにいちゃん……」

 少女は、涙を浮かべながら手を伸ばした。
 レンを握る手は小さく弱々しかったが、確かな命のぬくもりを感じた。

《学習――回避行動より救出行動優先、温もり――分類不明》
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