俺のスキル『AI』は、今日も世界を最適化する。

肯定ペンギン

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第九話 魔法学校調査依頼・前編

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 レン達が王都ディシアに来て一ヶ月が経ち、冒険者ギルドの中でレンの名前が知られ始めた頃のこと。

 ディシア王都にある冒険者ギルドの掲示板に、一風変わった依頼が貼り出されたのは、ちょうど朝の活気が満ちた時間帯だった。

【依頼名】魔法学校での行方不明事件の調査
【依頼主】王都ディシア魔法学院・理務局
【内容】学内にて生徒の行方不明が複数件発生。魔法的異常の可能性があるため、ギルドの調査班を要請する。詳細は現地にて案内役より説明予定。
【備考】魔法適性を持たない者でも可。ただし魔法障壁に耐えうる最低限の防御手段を要す。

「……妙な依頼だな」

 レンはアイと相談の上、興味を持ってこの依頼を選ぶことにした。ギルドで説明を受けると、王都の上層──すなわち空中層にある魔法学院まで赴いて調査を行うという、見習いにはややハードルの高い任務ではあったので、断られるかと思ったがすんなり通った。

 依頼を受けて待機していると、案内役として現れたのは、ボーイッシュな雰囲気の黒髪の少女だった。青いロングコートに身を包み、腰には魔導石の装飾がついた杖。ショートヘアをラフに束ねた彼女は、関西訛りの軽快な口調で声をかけてきた。

「おー、お前が噂のレンか。あたしが案内役のミールや。よろしくな、坊ちゃん」
「……よろしくお願いします、ミールさん」
「あんたより年下やから“さん”なんかいらへんって! 気軽に呼んでくれてええよ~」
「え? でも今、坊っちゃんって」
「見習いの坊っちゃん、ゆー意味やって。まだ駆け出しなんやろ、じぶん」
「あ、はい」

 ミールは依頼元である魔法学校の卒業生で、今はギルドに協力する魔導士。中でも空間魔法に秀でており、学院からも厚い信頼を受けているらしい。

「さ、行こか。あんた、魔導リフトって乗ったことある?」
「……いえ、初めてです」
「そっか、そっか。なら、ちょっと感動するかもしれへんなぁ。なんせ、空、飛ぶからな」


 王都の中心街を抜けた先、塔のようにそびえ立つ魔導リフト。ミールとともにリフトの床に乗ると、足元から魔法陣が光を放ち、ふわりと浮き上がる。耳がキーンと鳴り、下の世界がゆっくりと遠ざかっていく。

「……本当に、空飛んでる……」

《反重力エネルギーを感知。魔法で重力を打ち消しながら浮いていると推測されます》

「ふふん、慣れてきたら景色見る余裕も出てくるで。見てみ? あれが魔法学院や」

 雲の中から姿を現したのは、空に浮かぶ城のような校舎だった。塔がいくつもそびえ立ち、魔法障壁に包まれたその姿はまさに“空中都市”。レンは言葉を失い、ただ見惚れるようにその景色を見つめていた。


 魔導リフトを降りた先は、まるで空の上に築かれた別世界だった。アーチ状の廊下が空に浮かび、宙に浮かぶ水球が各所に配置されている。重力さえ曲げられているのか、水や光が不思議な軌跡を描いて流れていた。
 映画の中でしか存在しないような風景にレンは思わず言葉を漏らした。

「あったんだ……。魔法学院は本当にあったんだ」
「……? そら、あるやろ? 依頼出しとるんやから」
「あ、いえ、こっちの話です」

《レン。そのネタをこの世界の人間にツッコませるのは不可能です》

「それにしても、これが魔法学院……想像以上だ」
「せやろ? 中入ったらもっと驚くでぇ」

 学院の門を通り、正面にある理務局へ通されると、担当官から現在の状況が説明された。

・行方不明者は、いずれも1~2年生の生徒。
・事件はすべて夜間に発生している。
・魔法的センサーでは出入りの痕跡がない。
・現在は学院全体に警戒態勢が敷かれている。

「とりあえず、生徒や教師に最近の様子を聞いてみよか。うちは学院出身やから顔も利くしな」

 ミールの案内で、生徒たちの寮や授業棟をまわる。
 レンはアイと共に、生徒たちの証言を分析していくことにした。

「うわあ……」

 調査の途中、廊下からグラウンドの授業風景を見たレンは感嘆の声を上げた。
 グラウンドでは教師が生徒たちの魔法を見て修正をかけたり、魔法陣のズレを指導しているようだった。

「凄いもんやろ? ディシアの魔法学院は手前味噌であれやけど、大陸随一の授業体制が整っとる。教師の数も質も施設もようけ揃っとるからな。ええとこやで」

 隣で説明してくれるミールはどこか誇らしげだった。

《分析の結果、学院全体に魔素供給が絶えずなされているようです。魔法初級者が魔法を使いやすくするためでしょう》

「へー、至れり尽くせりだなあ」
「でも、その教師をもってして分からん。どない、なっとるんかな? おっ、グリージア先生や」

 ミールは前方からやってくる厳つい体格をした魔道士姿の男性に向かって走り出した。
 その後を追って、レンも歩き出す。

「グリージアせんせ!」
「相変わらず騒々しいな、ミール。廊下は走るなと言っているだろう」
「せやかて、もー卒業しとるし」
「私は常識の話をしている」

 いかにも在学中は生活指導を受けましたという二人の会話を聞いていたレンは、その男性教師に挨拶をした。

「どうもはじめまして。冒険者ギルドのレンと言います」
「うむ。はじめまして。私はグリージアだ。主に魔法実技と生活指導を担当している。君も調査かね?」
「はい」

 そのやり取りを聞いていたミールが、横から口を挟む。

「まだ新人君やけどね。それより、グリージアせんせ。何か、行方不明の生徒のこと知らん?」

 ミールが尋ねるとグリージアは腕を組みながら首をひねった。

「行方不明の生徒は俺の担当ではなかったからな。詳しくは知らん。だが……」
「だが?」
「学院地下資料庫を利用していたという話は出ている。念の為、現在は立ち入り封鎖している状況だ」

《キーワード登録。“学院地下資料庫”》

 その後、グリージアと別れたレンとミールはセットで学院中の生徒から話を聞いて回った。

 ある生徒は言う。

「何でも、居なくなった生徒は授業のことで悩みがあったとか」

 別の生徒は言う。

「きゃあああ! ミール先輩! サインください!」

 また別の生徒は告白する。

「ミール先輩! 前から好きでした。付き合ってください!」
「いやや」
「ぐああああ!!」


 そうこうしている内に情報は一通り集まっていった。

「すいません。何か、途中から情報収集が捗らなかった気がするんですが……」
「人気モンはえろう大変、ちゅーこっちゃな」

 それでも集まった情報は注目に値する。

・行方不明者は全員、学院地下資料庫を利用していた。
・行方不明者は全員、授業の内容で悩みを抱えていた
・行方不明者と同室の生徒が朝起きると姿がなかったと証言
・なお、教師が学院地下資料庫を調べてみたが特に何の痕跡もなかったと証言

《推測完了。行方不明者は問題解決のため、夜間の学院地下資料庫またはその周辺に用があったと思われます》

「夜間ですよ、ミール先輩」
「うーん。まあ、調査してみよか」

 こうしてレンとミールは夜を待つことにした。
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