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王妹=ゴッデス
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「ええい! 貴様ら! もっと玉座を磨かんか! 我が愛しきロゼッタの輝きに釣り合うのは、この世で最も清らかなる光のみぞ!」
ライオネルは筋肉隆々の腕を組み、不機嫌そうに玉座の間を見回した。彼の不満げな視線の先では屈強な兵士たちが慣れない手つきで玉座を磨いている。普段なら剣を振るうことしかしない彼らにとって、これは苦行以外の何物でもないだろう。しかし、ライオネルにとっては愛しい妹のためなら些細なことだった。
この国、グラン・フォート王国の若き王、ライオネル・グラン・フォートは、剣術と筋力においては右に出る者がいない脳筋王として名を馳せていた。だが、彼には唯一にして絶対の弱点がある。それは8歳になる最愛の妹、ロゼッタ王女だ。
「お兄様、見て見て! このお花、とっても綺麗なの!」
今日も今日とて、ロゼッタは庭園で摘んできたであろう可憐な花を手に無邪気な笑顔でライオネルに駆け寄ってきた。ライオネルの顔に一瞬でデレデレの表情が浮かぶ。
「おお、ロゼッタ! その花も美しいが、お前の笑顔には遠く及ばないな! さあ、おいで。疲れただろう、私が抱き上げてやろう!」
そう言って、ライオネルはロゼッタを軽々と抱き上げた。ロゼッタはケラケラと笑いながら、彼の首に腕を回す。
「もう、お兄様ったら! でも、お兄様の腕、あったかいから好き!」
ロゼッタの言葉にライオネルの胸板はさらに厚くなった気がした。その様子を見ていた宰相のアルフレッドは深いため息をつく。
「陛下、そろそろ執務のお時間でございます。隣国との貿易協定の件、そして街道沿いの魔物討伐の件も……」
アルフレッドの言葉に、ライオネルはげんなりとした顔になる。
「むぅ……面倒だな。ロゼッタ、お前が代わりにやってくれないか? お前ならきっと、私よりも上手くやれるだろう!」
「えーっ!? 私、文字読むのまだ苦手だし、魔物とか怖いよー!」
ロゼッタが首を振ると、ライオネルは途端に顔色を変えた。
「そうか! それは駄目だ! 我が至宝にそんな恐ろしい思いをさせるわけにはいかない! よし、アルフレッド! 今日の執務は全て、私が三倍の速さで片付けてやる! だからロゼッタ、お前は好きなだけ遊んでいなさい!」
アルフレッドは、またも深いため息をついた。彼の苦労は尽きない。
ある日、ロゼッタが熱を出して寝込んでしまった。ライオネルは青ざめた顔でロゼッタの寝室に駆け込み、そのままベッドサイドに座り込んだ。
「ロゼッタ! 大丈夫か!? どこか痛むのか!? すぐに最高の医者を呼べ! いや、世界中の医者を呼び集めろ! もしロゼッタの病が治らなければ、このライオネル、この城をひっくり返すぞ!」
ライオネルの剣幕に、医者たちは震え上がりながらも必死に治療にあたった。ロゼッタは、そんな兄の様子に少し困ったような、でも嬉しそうな顔で熱に浮かされていた。
「お兄様、そんなに大袈裟だよ……ちょっと喉が痛いだけ……」
「なんと! 喉だと!? それは大変だ! 最高の蜂蜜と、最高の薬草を用意しろ! いや、私が直々に魔物の肝臓を獲ってこよう! 魔物の肝臓は滋養強壮に良いと聞く!」
そう言い放つやいなや、ライオネルは「うおおおおお!!」と雄叫びを上げながら城を飛び出し、そのまま近くの森へと駆け込んでいった。彼の後ろ姿を見送りながら、アルフレッドは再び深いため息をつく。医者たちは顔を見合わせて苦笑するしかなかった。
数時間後、血まみれのライオネルが巨大な魔物の肝臓を抱えて帰ってきた。そのあまりの光景に城中の人間がひっくり返りそうになった。しかし、ロゼッタは微熱ながらも笑顔で兄を迎える。
「お兄様、ありがとう! でも、お兄様が怪我しちゃったら嫌だよ!」
「心配ない! 我がロゼッタのためならば、この身がどうなろうと構わない! さあ、この肝臓を煎じて飲むのだ! たちまち元気になれるぞ!」
そうして、ロゼッタは魔物の肝臓のエキス(不味そうだったが)を飲み干し、翌日にはすっかり回復した。ライオネルはロゼッタが元気になったのを見て大いに喜び、城中で盛大な宴を開かせた。
しかし、彼のロゼッタへの溺愛ぶりは、時にとんでもない事件を引き起こす。
ある日、ロゼッタが初めての社交界デビューを控えていた時のこと。ライオネルは彼女に最高に美しいドレスを着せたいと意気込んでいた。だが、彼の選んだドレスは、どう見ても戦場で着るようなゴテゴテの鎧ドレスだった。
「お兄様……これじゃあ、動きにくいよ……」
「何だと!? ロゼッタ! これは最強のドレスだぞ! もし貴様に不埒な輩が近づこうものなら、この硬質な生地が奴らを跳ね返す! しかも、この肩当てには隠しブレードが仕込んである! 万が一の時には、私が駆けつけるまでもなく、貴様自身で身を守れる!」
ライオネルは満面の笑みで力説するが、ロゼッタは半泣き状態だ。アルフレッドが青い顔で割って入る。
「陛下! 社交界でブレードは不要でございます! それに、そのようなドレスでは淑女の皆様の冷たい視線を集めるだけかと!」
結局、アルフレッドの説得により、ロゼッタは無事に可愛らしいドレスを着ることができた。しかし、ライオネルは社交界の間中、ロゼッタの背後で仁王立ちし彼女に近づく全ての貴族たちを威圧的な視線で睨みつけていたため、ロゼッタは誰ともまともに会話できなかったという。
それでも、ロゼッタはそんな脳筋だけど心優しい兄を心から愛していた。そして、ライオネルもまた、世界で一番大切な妹の笑顔を守るためなら、どんな苦労も厭わないのだった。
今日もグラン・フォート王国では、脳筋兄王と天真爛漫な王妹による、賑やかな日常が繰り広げられている。
ライオネルは筋肉隆々の腕を組み、不機嫌そうに玉座の間を見回した。彼の不満げな視線の先では屈強な兵士たちが慣れない手つきで玉座を磨いている。普段なら剣を振るうことしかしない彼らにとって、これは苦行以外の何物でもないだろう。しかし、ライオネルにとっては愛しい妹のためなら些細なことだった。
この国、グラン・フォート王国の若き王、ライオネル・グラン・フォートは、剣術と筋力においては右に出る者がいない脳筋王として名を馳せていた。だが、彼には唯一にして絶対の弱点がある。それは8歳になる最愛の妹、ロゼッタ王女だ。
「お兄様、見て見て! このお花、とっても綺麗なの!」
今日も今日とて、ロゼッタは庭園で摘んできたであろう可憐な花を手に無邪気な笑顔でライオネルに駆け寄ってきた。ライオネルの顔に一瞬でデレデレの表情が浮かぶ。
「おお、ロゼッタ! その花も美しいが、お前の笑顔には遠く及ばないな! さあ、おいで。疲れただろう、私が抱き上げてやろう!」
そう言って、ライオネルはロゼッタを軽々と抱き上げた。ロゼッタはケラケラと笑いながら、彼の首に腕を回す。
「もう、お兄様ったら! でも、お兄様の腕、あったかいから好き!」
ロゼッタの言葉にライオネルの胸板はさらに厚くなった気がした。その様子を見ていた宰相のアルフレッドは深いため息をつく。
「陛下、そろそろ執務のお時間でございます。隣国との貿易協定の件、そして街道沿いの魔物討伐の件も……」
アルフレッドの言葉に、ライオネルはげんなりとした顔になる。
「むぅ……面倒だな。ロゼッタ、お前が代わりにやってくれないか? お前ならきっと、私よりも上手くやれるだろう!」
「えーっ!? 私、文字読むのまだ苦手だし、魔物とか怖いよー!」
ロゼッタが首を振ると、ライオネルは途端に顔色を変えた。
「そうか! それは駄目だ! 我が至宝にそんな恐ろしい思いをさせるわけにはいかない! よし、アルフレッド! 今日の執務は全て、私が三倍の速さで片付けてやる! だからロゼッタ、お前は好きなだけ遊んでいなさい!」
アルフレッドは、またも深いため息をついた。彼の苦労は尽きない。
ある日、ロゼッタが熱を出して寝込んでしまった。ライオネルは青ざめた顔でロゼッタの寝室に駆け込み、そのままベッドサイドに座り込んだ。
「ロゼッタ! 大丈夫か!? どこか痛むのか!? すぐに最高の医者を呼べ! いや、世界中の医者を呼び集めろ! もしロゼッタの病が治らなければ、このライオネル、この城をひっくり返すぞ!」
ライオネルの剣幕に、医者たちは震え上がりながらも必死に治療にあたった。ロゼッタは、そんな兄の様子に少し困ったような、でも嬉しそうな顔で熱に浮かされていた。
「お兄様、そんなに大袈裟だよ……ちょっと喉が痛いだけ……」
「なんと! 喉だと!? それは大変だ! 最高の蜂蜜と、最高の薬草を用意しろ! いや、私が直々に魔物の肝臓を獲ってこよう! 魔物の肝臓は滋養強壮に良いと聞く!」
そう言い放つやいなや、ライオネルは「うおおおおお!!」と雄叫びを上げながら城を飛び出し、そのまま近くの森へと駆け込んでいった。彼の後ろ姿を見送りながら、アルフレッドは再び深いため息をつく。医者たちは顔を見合わせて苦笑するしかなかった。
数時間後、血まみれのライオネルが巨大な魔物の肝臓を抱えて帰ってきた。そのあまりの光景に城中の人間がひっくり返りそうになった。しかし、ロゼッタは微熱ながらも笑顔で兄を迎える。
「お兄様、ありがとう! でも、お兄様が怪我しちゃったら嫌だよ!」
「心配ない! 我がロゼッタのためならば、この身がどうなろうと構わない! さあ、この肝臓を煎じて飲むのだ! たちまち元気になれるぞ!」
そうして、ロゼッタは魔物の肝臓のエキス(不味そうだったが)を飲み干し、翌日にはすっかり回復した。ライオネルはロゼッタが元気になったのを見て大いに喜び、城中で盛大な宴を開かせた。
しかし、彼のロゼッタへの溺愛ぶりは、時にとんでもない事件を引き起こす。
ある日、ロゼッタが初めての社交界デビューを控えていた時のこと。ライオネルは彼女に最高に美しいドレスを着せたいと意気込んでいた。だが、彼の選んだドレスは、どう見ても戦場で着るようなゴテゴテの鎧ドレスだった。
「お兄様……これじゃあ、動きにくいよ……」
「何だと!? ロゼッタ! これは最強のドレスだぞ! もし貴様に不埒な輩が近づこうものなら、この硬質な生地が奴らを跳ね返す! しかも、この肩当てには隠しブレードが仕込んである! 万が一の時には、私が駆けつけるまでもなく、貴様自身で身を守れる!」
ライオネルは満面の笑みで力説するが、ロゼッタは半泣き状態だ。アルフレッドが青い顔で割って入る。
「陛下! 社交界でブレードは不要でございます! それに、そのようなドレスでは淑女の皆様の冷たい視線を集めるだけかと!」
結局、アルフレッドの説得により、ロゼッタは無事に可愛らしいドレスを着ることができた。しかし、ライオネルは社交界の間中、ロゼッタの背後で仁王立ちし彼女に近づく全ての貴族たちを威圧的な視線で睨みつけていたため、ロゼッタは誰ともまともに会話できなかったという。
それでも、ロゼッタはそんな脳筋だけど心優しい兄を心から愛していた。そして、ライオネルもまた、世界で一番大切な妹の笑顔を守るためなら、どんな苦労も厭わないのだった。
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