27 / 30
王妹=ゴッデス
しおりを挟む
「ええい! 貴様ら! もっと玉座を磨かんか! 我が愛しきロゼッタの輝きに釣り合うのは、この世で最も清らかなる光のみぞ!」
ライオネルは筋肉隆々の腕を組み、不機嫌そうに玉座の間を見回した。彼の不満げな視線の先では屈強な兵士たちが慣れない手つきで玉座を磨いている。普段なら剣を振るうことしかしない彼らにとって、これは苦行以外の何物でもないだろう。しかし、ライオネルにとっては愛しい妹のためなら些細なことだった。
この国、グラン・フォート王国の若き王、ライオネル・グラン・フォートは、剣術と筋力においては右に出る者がいない脳筋王として名を馳せていた。だが、彼には唯一にして絶対の弱点がある。それは8歳になる最愛の妹、ロゼッタ王女だ。
「お兄様、見て見て! このお花、とっても綺麗なの!」
今日も今日とて、ロゼッタは庭園で摘んできたであろう可憐な花を手に無邪気な笑顔でライオネルに駆け寄ってきた。ライオネルの顔に一瞬でデレデレの表情が浮かぶ。
「おお、ロゼッタ! その花も美しいが、お前の笑顔には遠く及ばないな! さあ、おいで。疲れただろう、私が抱き上げてやろう!」
そう言って、ライオネルはロゼッタを軽々と抱き上げた。ロゼッタはケラケラと笑いながら、彼の首に腕を回す。
「もう、お兄様ったら! でも、お兄様の腕、あったかいから好き!」
ロゼッタの言葉にライオネルの胸板はさらに厚くなった気がした。その様子を見ていた宰相のアルフレッドは深いため息をつく。
「陛下、そろそろ執務のお時間でございます。隣国との貿易協定の件、そして街道沿いの魔物討伐の件も……」
アルフレッドの言葉に、ライオネルはげんなりとした顔になる。
「むぅ……面倒だな。ロゼッタ、お前が代わりにやってくれないか? お前ならきっと、私よりも上手くやれるだろう!」
「えーっ!? 私、文字読むのまだ苦手だし、魔物とか怖いよー!」
ロゼッタが首を振ると、ライオネルは途端に顔色を変えた。
「そうか! それは駄目だ! 我が至宝にそんな恐ろしい思いをさせるわけにはいかない! よし、アルフレッド! 今日の執務は全て、私が三倍の速さで片付けてやる! だからロゼッタ、お前は好きなだけ遊んでいなさい!」
アルフレッドは、またも深いため息をついた。彼の苦労は尽きない。
ある日、ロゼッタが熱を出して寝込んでしまった。ライオネルは青ざめた顔でロゼッタの寝室に駆け込み、そのままベッドサイドに座り込んだ。
「ロゼッタ! 大丈夫か!? どこか痛むのか!? すぐに最高の医者を呼べ! いや、世界中の医者を呼び集めろ! もしロゼッタの病が治らなければ、このライオネル、この城をひっくり返すぞ!」
ライオネルの剣幕に、医者たちは震え上がりながらも必死に治療にあたった。ロゼッタは、そんな兄の様子に少し困ったような、でも嬉しそうな顔で熱に浮かされていた。
「お兄様、そんなに大袈裟だよ……ちょっと喉が痛いだけ……」
「なんと! 喉だと!? それは大変だ! 最高の蜂蜜と、最高の薬草を用意しろ! いや、私が直々に魔物の肝臓を獲ってこよう! 魔物の肝臓は滋養強壮に良いと聞く!」
そう言い放つやいなや、ライオネルは「うおおおおお!!」と雄叫びを上げながら城を飛び出し、そのまま近くの森へと駆け込んでいった。彼の後ろ姿を見送りながら、アルフレッドは再び深いため息をつく。医者たちは顔を見合わせて苦笑するしかなかった。
数時間後、血まみれのライオネルが巨大な魔物の肝臓を抱えて帰ってきた。そのあまりの光景に城中の人間がひっくり返りそうになった。しかし、ロゼッタは微熱ながらも笑顔で兄を迎える。
「お兄様、ありがとう! でも、お兄様が怪我しちゃったら嫌だよ!」
「心配ない! 我がロゼッタのためならば、この身がどうなろうと構わない! さあ、この肝臓を煎じて飲むのだ! たちまち元気になれるぞ!」
そうして、ロゼッタは魔物の肝臓のエキス(不味そうだったが)を飲み干し、翌日にはすっかり回復した。ライオネルはロゼッタが元気になったのを見て大いに喜び、城中で盛大な宴を開かせた。
しかし、彼のロゼッタへの溺愛ぶりは、時にとんでもない事件を引き起こす。
ある日、ロゼッタが初めての社交界デビューを控えていた時のこと。ライオネルは彼女に最高に美しいドレスを着せたいと意気込んでいた。だが、彼の選んだドレスは、どう見ても戦場で着るようなゴテゴテの鎧ドレスだった。
「お兄様……これじゃあ、動きにくいよ……」
「何だと!? ロゼッタ! これは最強のドレスだぞ! もし貴様に不埒な輩が近づこうものなら、この硬質な生地が奴らを跳ね返す! しかも、この肩当てには隠しブレードが仕込んである! 万が一の時には、私が駆けつけるまでもなく、貴様自身で身を守れる!」
ライオネルは満面の笑みで力説するが、ロゼッタは半泣き状態だ。アルフレッドが青い顔で割って入る。
「陛下! 社交界でブレードは不要でございます! それに、そのようなドレスでは淑女の皆様の冷たい視線を集めるだけかと!」
結局、アルフレッドの説得により、ロゼッタは無事に可愛らしいドレスを着ることができた。しかし、ライオネルは社交界の間中、ロゼッタの背後で仁王立ちし彼女に近づく全ての貴族たちを威圧的な視線で睨みつけていたため、ロゼッタは誰ともまともに会話できなかったという。
それでも、ロゼッタはそんな脳筋だけど心優しい兄を心から愛していた。そして、ライオネルもまた、世界で一番大切な妹の笑顔を守るためなら、どんな苦労も厭わないのだった。
今日もグラン・フォート王国では、脳筋兄王と天真爛漫な王妹による、賑やかな日常が繰り広げられている。
ライオネルは筋肉隆々の腕を組み、不機嫌そうに玉座の間を見回した。彼の不満げな視線の先では屈強な兵士たちが慣れない手つきで玉座を磨いている。普段なら剣を振るうことしかしない彼らにとって、これは苦行以外の何物でもないだろう。しかし、ライオネルにとっては愛しい妹のためなら些細なことだった。
この国、グラン・フォート王国の若き王、ライオネル・グラン・フォートは、剣術と筋力においては右に出る者がいない脳筋王として名を馳せていた。だが、彼には唯一にして絶対の弱点がある。それは8歳になる最愛の妹、ロゼッタ王女だ。
「お兄様、見て見て! このお花、とっても綺麗なの!」
今日も今日とて、ロゼッタは庭園で摘んできたであろう可憐な花を手に無邪気な笑顔でライオネルに駆け寄ってきた。ライオネルの顔に一瞬でデレデレの表情が浮かぶ。
「おお、ロゼッタ! その花も美しいが、お前の笑顔には遠く及ばないな! さあ、おいで。疲れただろう、私が抱き上げてやろう!」
そう言って、ライオネルはロゼッタを軽々と抱き上げた。ロゼッタはケラケラと笑いながら、彼の首に腕を回す。
「もう、お兄様ったら! でも、お兄様の腕、あったかいから好き!」
ロゼッタの言葉にライオネルの胸板はさらに厚くなった気がした。その様子を見ていた宰相のアルフレッドは深いため息をつく。
「陛下、そろそろ執務のお時間でございます。隣国との貿易協定の件、そして街道沿いの魔物討伐の件も……」
アルフレッドの言葉に、ライオネルはげんなりとした顔になる。
「むぅ……面倒だな。ロゼッタ、お前が代わりにやってくれないか? お前ならきっと、私よりも上手くやれるだろう!」
「えーっ!? 私、文字読むのまだ苦手だし、魔物とか怖いよー!」
ロゼッタが首を振ると、ライオネルは途端に顔色を変えた。
「そうか! それは駄目だ! 我が至宝にそんな恐ろしい思いをさせるわけにはいかない! よし、アルフレッド! 今日の執務は全て、私が三倍の速さで片付けてやる! だからロゼッタ、お前は好きなだけ遊んでいなさい!」
アルフレッドは、またも深いため息をついた。彼の苦労は尽きない。
ある日、ロゼッタが熱を出して寝込んでしまった。ライオネルは青ざめた顔でロゼッタの寝室に駆け込み、そのままベッドサイドに座り込んだ。
「ロゼッタ! 大丈夫か!? どこか痛むのか!? すぐに最高の医者を呼べ! いや、世界中の医者を呼び集めろ! もしロゼッタの病が治らなければ、このライオネル、この城をひっくり返すぞ!」
ライオネルの剣幕に、医者たちは震え上がりながらも必死に治療にあたった。ロゼッタは、そんな兄の様子に少し困ったような、でも嬉しそうな顔で熱に浮かされていた。
「お兄様、そんなに大袈裟だよ……ちょっと喉が痛いだけ……」
「なんと! 喉だと!? それは大変だ! 最高の蜂蜜と、最高の薬草を用意しろ! いや、私が直々に魔物の肝臓を獲ってこよう! 魔物の肝臓は滋養強壮に良いと聞く!」
そう言い放つやいなや、ライオネルは「うおおおおお!!」と雄叫びを上げながら城を飛び出し、そのまま近くの森へと駆け込んでいった。彼の後ろ姿を見送りながら、アルフレッドは再び深いため息をつく。医者たちは顔を見合わせて苦笑するしかなかった。
数時間後、血まみれのライオネルが巨大な魔物の肝臓を抱えて帰ってきた。そのあまりの光景に城中の人間がひっくり返りそうになった。しかし、ロゼッタは微熱ながらも笑顔で兄を迎える。
「お兄様、ありがとう! でも、お兄様が怪我しちゃったら嫌だよ!」
「心配ない! 我がロゼッタのためならば、この身がどうなろうと構わない! さあ、この肝臓を煎じて飲むのだ! たちまち元気になれるぞ!」
そうして、ロゼッタは魔物の肝臓のエキス(不味そうだったが)を飲み干し、翌日にはすっかり回復した。ライオネルはロゼッタが元気になったのを見て大いに喜び、城中で盛大な宴を開かせた。
しかし、彼のロゼッタへの溺愛ぶりは、時にとんでもない事件を引き起こす。
ある日、ロゼッタが初めての社交界デビューを控えていた時のこと。ライオネルは彼女に最高に美しいドレスを着せたいと意気込んでいた。だが、彼の選んだドレスは、どう見ても戦場で着るようなゴテゴテの鎧ドレスだった。
「お兄様……これじゃあ、動きにくいよ……」
「何だと!? ロゼッタ! これは最強のドレスだぞ! もし貴様に不埒な輩が近づこうものなら、この硬質な生地が奴らを跳ね返す! しかも、この肩当てには隠しブレードが仕込んである! 万が一の時には、私が駆けつけるまでもなく、貴様自身で身を守れる!」
ライオネルは満面の笑みで力説するが、ロゼッタは半泣き状態だ。アルフレッドが青い顔で割って入る。
「陛下! 社交界でブレードは不要でございます! それに、そのようなドレスでは淑女の皆様の冷たい視線を集めるだけかと!」
結局、アルフレッドの説得により、ロゼッタは無事に可愛らしいドレスを着ることができた。しかし、ライオネルは社交界の間中、ロゼッタの背後で仁王立ちし彼女に近づく全ての貴族たちを威圧的な視線で睨みつけていたため、ロゼッタは誰ともまともに会話できなかったという。
それでも、ロゼッタはそんな脳筋だけど心優しい兄を心から愛していた。そして、ライオネルもまた、世界で一番大切な妹の笑顔を守るためなら、どんな苦労も厭わないのだった。
今日もグラン・フォート王国では、脳筋兄王と天真爛漫な王妹による、賑やかな日常が繰り広げられている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる