【R18】アールグレイの昼下がり ー双子の姉・乙編ー

Silence

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開かずの扉

開かずの扉10

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やがて春がくる頃…
乙は最高学年になった。
乙達の通う学院は四年制だ。

そして、その上には聖高学といういわば大学的なものが3年ある。
日本にとっては特殊なシステム故にそのまま別の大学を受ける生徒は少ない。

入学式も終え、教室に戻ると案の定、神流が少し興奮気味に話し掛けてくる。
お決まりのパターンだ。

「乙♪今年の新入生も可愛い子が沢山いたよなぁ!!な!!」
「ハァ…神流、お前は女以外の話はしないのか?」
「なんだよ!!ノリ悪いなぁ。
そんな事言うなら見せてやんないもんね。
新聞部からの贈り物の新一年生の写・真あるんだけど~?
ああ~、そう言えば新聞部の子がお礼に俺達のセクシーショットが欲しいとか言ってたっけなぁ~。
どうしようかなぁ、返しちゃおうかなぁ~?」

わざとらしく天を見上げる神流の言葉にピクリと眉間が反応するとネクタイをグイツと引っ張り、引き寄せると、少しサディスティクに囁いた。

「見せてくれるよな…、神流ちゃん♪」
「さぁね…」

お互いサディスティックに見つめ逢うと乙は神流の首元を引き寄せて唇を奪った。
途端に教室だけでなく廊下全体に黄色い悲鳴が一気に上がり、中には倒れる生徒もいた。

「…乙、やりすぎ…じゃない?」
「そ、そうだったか…?
こういうのは慣れてないから…」

あまりの反響に冷や汗混じりに、2人がたじろいだのは言うまでもない。
約束通り神流から新入生の写真を見せてもらうと、それなりに粒揃いの女生徒に何となく納得した。

「ふーん、確かに…」
「でしょ!!でしょ♪
なぁ、乙。私と勝負しない?
どっちが多くファンをゲット出来るかさ!!」
「また、そんなくだらん事を…断る!」
「はは~ん、さては私に負けるのが怖いのか?
なら無理にとは言わないけど?」
「……。好きにしろよ…
じゃ、俺はそろそろ帰る」


下校の支度をすると廊下を歩く。

『全く、神流は相変わらずろくでもないことしか言わない』

そんな事を考えていた時だった。

「きゃっ!!」

女生徒の1人とぶつかってしまったらしい。
彼女の持っていた書物が床に散らばる。

「…悪い…」

床にしゃがみ乙が本を拾い、顔をあげた時だった。

「ッ!!!!」

────ドクンッ!!!!
乙は目を見開き、まるで殴られたような激しい鼓動が鳴った。

「…な…み…!!」

そう、何故なら輝李に壊され自我を失い、乙がDollオークションに出したはずの野中 瀾が目の前に居たからだった!!

「あの…ごめんなさい!!
私、入ったばかりで、まだ慣れていなくて…」

そんな時、瀾の背後…つまり乙の目線の先から声が聞こえた。


「こんな所に居たんだ、探しちゃったよ♪」

瀾が振り返る。
乙もその歩いてくる人物に動揺を隠せなかった。

「輝李…」

そんな乙をよそに輝李は、瀾の手を取ると立ち上がらせ、にっこりと微笑むと瀾に優しく問い掛けた。

「どうしたの?」
「輝李さん、あの…私ぶつかってしまって…」
「そう、大丈夫だった?」
「はい♪」
「そうだ、ちょうど良いから紹介するね。
君がぶつかったのは月影 乙。
僕の双子の姉だ」

そこまで言うと、輝李は乙に視線を移し、鈍く光を放ちニヤリと笑うと口を開いた。

「乙…今日からこの学院に入った〔野中 瀾〕ちゃんだ…
仲良くしてあげてね」

途端に瀾が恐る恐る乙に話し掛けた。

「野中 瀾です…。
あの…〔〕…
さっきはごめんなさい」
「…ああ…」

乙の拳に思わず力が入る。
乙は輝李を少し瀾から遠ざけると低い声でポツリと口を開く。

「どういうつもりだ…」

輝李も目を鋭く乙に答える。

「何の事…?」

途端に乙は声を少し荒げた。

「とぼけるな!!!
…これも8-エイトアンダーの仕事なのか…」

乙の言葉に輝李は諦めたように鼻で笑うと問いに答えた。

「なんだ、知ってたの。
…そうだよ、これが僕の仕事だ」
「…ッ、お前、瀾に何をした。
何でお前が瀾と一緒にいる。」
「回収しただけだ。
何をしたかなんて乙には関係ないだろ?クスクス」
「お前!!!」

乙の腕が輝李の襟元を掴むと、それまで妖しく頬笑んでいた輝李の顔がガラリと変り、鋭い眼差しを向けた。

「前、言ったはずだろ…?
大切なものは手放すなと…
僕は約束は守ったよ?」
「何だって…」

輝李は乙の肩にそっと、手を置くと耳元で悪魔のように甘美に囁いた。

「どうせ遊びだったんだろう…?
何故オークションに出したんだ?
壊れたと思ったからか?
もう守る価値が無いと…クスクス。
僕はちょっとした切っ掛けを作ったにすぎない…。
野中 瀾の運命を決めたのは乙…
乙は野中 瀾を捨てたんだ…クスクス」

その言葉に乙の胸はドクンと鳴り、目を見開いた。
輝李は乙から離れると去りぎわに言葉を捨てる。

「僕はその野中 瀾を拾ってきた。
僕がアイツをどうしようと僕の勝手だろう…?
何なら僕から野中 瀾を奪い返してみれば?
…楽しいゲームになると思うよ。
クスクス…僕に勝てるならだけど?
クスクス…クスクス」

立ち去る輝李を目で追うと、そこには楽しそうに笑う瀾と輝李の姿に思わず目を反らした。

それは…今までになく充実している瀾の笑顔だったからだ。
乙はただ、辛そうに拳を握り締めるしかなかった。

「…瀾…」

乙の耳にはメイドの時の瀾の笑顔と声が響いていた。


『…乙様…』
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