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開かずの扉
開かずの扉9
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冬も間近に近づいた頃、乙は以前から、ずっと頭から離れず気になっていた事を考えていた。
フォレストが言っていた輝李が8-に所属しているという情報。
小田切 隼人への行動。
看病されている最中、時折見せた疲れた表情。
子供の頃の自分と同じ瞳をするようになった輝李。
そして…
あの看病の日、輝李は眠りながら泣いていたのだ。
輝李に何かあるのは明白だった。
相変わらず、学院以外で輝李を見る事は少ない。
乙は、何かを決心したようにガタンと席を立った。
「どうしたの、月影さん。
まだ授業中ですよ」
「すみません、気分が悪いので早退します」
「あ…月影さん!!」
乙は教師の言葉に耳を傾けることなく、教室を後にした。
乙が向かった所は、一番気掛かりだった8-日本支部のビルだった。
大きな大企業を思わせるようなビルを乙は見上げた。
8-におもむいたのは、いつぐらいぶりだろうか。
最も、乙が行ったのはアメリカだったが…。
まだ乙が幼少の頃…
父の秘書の北条と言う女性との関係が始まったばかりの頃だった。
乙にとっての初体験の相手は、女性だった…。
それも媚薬の人体実験も兼ねて、何人もの研究員の見て居る中の公開強姦をされていた。
そして、その性教育は中学までずっと続いていた。
それをいつ知ったのか、乙を助けたのは他でもない輝李だった。
(『アールグレイの月夜』参照)
その輝李が…
よりによって8-に所属した。
つまり、あの試験を輝李も受けたことになる。
「人を1人殺して来てくれ…」
乙の脳裏に当時の8-トップの顔が浮かんだ。
あの冷徹な瞳で同じ事を輝李にも言ったに違いない。
思わず乙の拳に力が入った。
あの時、乙は自分のこめかみに銃を向け引き鉄を引いた。
生きている実感もなく、命を惜しいとも思っていなかった幼年期。
『輝李…』
8-の入り口へ向かって歩いていると途中で、1人の女性とすれ違う。
それは生前、母の専属メイドだった佐伯 由佳[サエキ ユカ]だ。
一瞬、乙の瞳がピクリと反応した。
由佳も瞳で軽く会釈をした。
由佳が自分の横を通り過ぎると、乙は思わず振り向いた。
由佳は此方を向く事無く、黒塗りの車に乗り込むと走り去った。
「佐伯 由佳…アイツも8-[エイトアンダー]だったのか…」
病弱だった母の専属メイド。
賢く姉のような優しさを乙と輝李にも向けていた。
あの由佳が、8-[エイトアンダー]の一員だったとは…。
すれ違った由佳の瞳はメイドの瞳ではなかった。
凛とした貫禄と組織特有の隙のない瞳。
あれが佐伯 由佳だとは信じられないが、母の身の安全を考えれば頷ける。
大きな企業は恨まれる事も少なくはないからだ。
そのために乙も輝李もある程度の心得は幼少の頃から植え付けられた。
乙は、ビルの中に入ると受付嬢がその場で立ち上がり会釈する。
「お待ちしておりました
月影 乙様…」
静かな礼儀正しい中にも威圧感を感じる。
普通の企業のような笑顔すら見せる事はない。
乙は、受付嬢に冷静かつ静かに口を開いた。
「相変わらず徹底しているな。
アンタ達の事だ。
…用件も解っているんだろ?
アンタ達のボスに会わせろ」
「…それは了解しかねます。お引き取り下さい」
「…ほぅ」
乙の眉間に皺が寄る。
すると、向こう側から1人の男性が歩いてきた。
「月影 乙様、秘書の足森と申します。どうぞ、此方へ」
足森と名乗る男は、乙を来客用部屋へと通した。
「先程は大変失礼致しました。
ご無礼をお許しください。
しかしながら社長は、ただいま手が放せない状態でして。
差し支えなければ私がご用件を聞かせて頂きます」
乙は、足森に向け口を開いた。
「…ここに俺の妹が居るだろう。
月影 輝李と言う人物が…」
一瞬、足森の瞳が鈍く光る。
乙も同じ眼差しを向けた。
「ご存知だったのですか…」
「ああ…アンタ等のクソジジイに伝えておけ…
輝李にもしもの事があってみろ…
今度は俺がお前を殺して8-ごと潰してやるとな…」
「…畏まりました…」
乙はそれだけ伝えるとドアを開く。
立ち去る乙に足森が一言だけ声をかけた。
「貴方は輝李様を恨んではいないのですか…?
輝李様はこれからも貴方を苦しめるかも知れないと言うのに…」
乙はクールに横目で見るとポツリと口をついた。
「…アンタ達には関係ない事だ…」
それだけ言うとビルを後にした。
フォレストが言っていた輝李が8-に所属しているという情報。
小田切 隼人への行動。
看病されている最中、時折見せた疲れた表情。
子供の頃の自分と同じ瞳をするようになった輝李。
そして…
あの看病の日、輝李は眠りながら泣いていたのだ。
輝李に何かあるのは明白だった。
相変わらず、学院以外で輝李を見る事は少ない。
乙は、何かを決心したようにガタンと席を立った。
「どうしたの、月影さん。
まだ授業中ですよ」
「すみません、気分が悪いので早退します」
「あ…月影さん!!」
乙は教師の言葉に耳を傾けることなく、教室を後にした。
乙が向かった所は、一番気掛かりだった8-日本支部のビルだった。
大きな大企業を思わせるようなビルを乙は見上げた。
8-におもむいたのは、いつぐらいぶりだろうか。
最も、乙が行ったのはアメリカだったが…。
まだ乙が幼少の頃…
父の秘書の北条と言う女性との関係が始まったばかりの頃だった。
乙にとっての初体験の相手は、女性だった…。
それも媚薬の人体実験も兼ねて、何人もの研究員の見て居る中の公開強姦をされていた。
そして、その性教育は中学までずっと続いていた。
それをいつ知ったのか、乙を助けたのは他でもない輝李だった。
(『アールグレイの月夜』参照)
その輝李が…
よりによって8-に所属した。
つまり、あの試験を輝李も受けたことになる。
「人を1人殺して来てくれ…」
乙の脳裏に当時の8-トップの顔が浮かんだ。
あの冷徹な瞳で同じ事を輝李にも言ったに違いない。
思わず乙の拳に力が入った。
あの時、乙は自分のこめかみに銃を向け引き鉄を引いた。
生きている実感もなく、命を惜しいとも思っていなかった幼年期。
『輝李…』
8-の入り口へ向かって歩いていると途中で、1人の女性とすれ違う。
それは生前、母の専属メイドだった佐伯 由佳[サエキ ユカ]だ。
一瞬、乙の瞳がピクリと反応した。
由佳も瞳で軽く会釈をした。
由佳が自分の横を通り過ぎると、乙は思わず振り向いた。
由佳は此方を向く事無く、黒塗りの車に乗り込むと走り去った。
「佐伯 由佳…アイツも8-[エイトアンダー]だったのか…」
病弱だった母の専属メイド。
賢く姉のような優しさを乙と輝李にも向けていた。
あの由佳が、8-[エイトアンダー]の一員だったとは…。
すれ違った由佳の瞳はメイドの瞳ではなかった。
凛とした貫禄と組織特有の隙のない瞳。
あれが佐伯 由佳だとは信じられないが、母の身の安全を考えれば頷ける。
大きな企業は恨まれる事も少なくはないからだ。
そのために乙も輝李もある程度の心得は幼少の頃から植え付けられた。
乙は、ビルの中に入ると受付嬢がその場で立ち上がり会釈する。
「お待ちしておりました
月影 乙様…」
静かな礼儀正しい中にも威圧感を感じる。
普通の企業のような笑顔すら見せる事はない。
乙は、受付嬢に冷静かつ静かに口を開いた。
「相変わらず徹底しているな。
アンタ達の事だ。
…用件も解っているんだろ?
アンタ達のボスに会わせろ」
「…それは了解しかねます。お引き取り下さい」
「…ほぅ」
乙の眉間に皺が寄る。
すると、向こう側から1人の男性が歩いてきた。
「月影 乙様、秘書の足森と申します。どうぞ、此方へ」
足森と名乗る男は、乙を来客用部屋へと通した。
「先程は大変失礼致しました。
ご無礼をお許しください。
しかしながら社長は、ただいま手が放せない状態でして。
差し支えなければ私がご用件を聞かせて頂きます」
乙は、足森に向け口を開いた。
「…ここに俺の妹が居るだろう。
月影 輝李と言う人物が…」
一瞬、足森の瞳が鈍く光る。
乙も同じ眼差しを向けた。
「ご存知だったのですか…」
「ああ…アンタ等のクソジジイに伝えておけ…
輝李にもしもの事があってみろ…
今度は俺がお前を殺して8-ごと潰してやるとな…」
「…畏まりました…」
乙はそれだけ伝えるとドアを開く。
立ち去る乙に足森が一言だけ声をかけた。
「貴方は輝李様を恨んではいないのですか…?
輝李様はこれからも貴方を苦しめるかも知れないと言うのに…」
乙はクールに横目で見るとポツリと口をついた。
「…アンタ達には関係ない事だ…」
それだけ言うとビルを後にした。
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