【R18】アールグレイの昼下がり ー双子の姉・乙編ー

Silence

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「俺が…」

輝李が部屋から出ていくと、乙は力なくグラリと壁にもたれ、ズルズルと腰が砕けていく。

《「これが乙が野中 瀾に下しDOLLオークションでボロボロにされた女の現実だよッ!!!」》

輝李の言葉が胸をつく。


「…俺が…瀾をあんな風にしたのか…
あの時…俺がDOLLオークションなんかに送らなければ…」


《「…もっと苦しめばいい…
乙が捨てた僕と同じように…
僕以上に苦しめばいいんだ!!」》


悲痛な輝李の叫び…
そして…


《「乙様…」
「あ゙ぁあ!!怖い!!怖い怖い!!」》

はにかむ瀾の笑顔と狂乱の声…

グルグルと回る2人の言葉は、乙の胸を突き刺し裂いていく。

何よりも重く鋭く…渦巻く光と闇の中、乙はその呼吸さえも絞めていく幻影に頭を抱えて、その断末魔を響かせた。


「ぅあぁあ゙ぁ゙あ゙───!!!!!」


やがて、力なく両腕が床にボトリと落ちると、その苦痛の胸の圧迫に乙の頬には一筋の証が流れて存在を示した…。


《「乙…愛してるよ…」》


輝李の優しい笑顔が乙の瞳を掠めた。
あの笑顔を狂気の笑みと憎しみに変えたのも自分…。

彼女は、どれ程の痛みと苦痛に耐えたのだろうか…?

乙の重い鼓動は締め付けと共に、主人を苛み続けた。


「…ッ…輝李…」


まるで…
輝李の苦しみの数を綴るように…


その日、乙が眠りに就くことはなかった。

ほぼ放心状態に一日を過ごし、
自分がいつ学院に来たのか、
いつ授業が終わったのかすら解らず寮へ歩いている。

横断歩道を渡ろうとした時、自分の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。

「乙ッ!!!」

その声に何となく顔を上げた時、乙の瞳に飛び込んできたのは乗用車が自分に向かいクラクションを鳴らしながら近付いてくる姿だった。

一瞬の出来事…。

乙の体が…
その瞬間、乙の腕を思い切り引いた衝撃があった。

「お前!!何やってんだ!!!」

背中の後には、自分と同じ丈の体が乙を受けとめていた。
それは、神流の腕だった。


「…神…流…」
「もう少しでひかれるところだったんだぞッ!!!
しっかりしろよ!!!」

神流の言葉にハッとすると、途端に辛そうに顔を歪め、神流に抱きついてきた。

「なっ!!!き…きの…と?」

突然の乙の行動に困惑を隠せなかったが、その身体には確実に伝わってくる。
乙はフルフルと身を震わせていた事が。

「神流…ッ…暫く・・こうしていてくれ…」

それは恐怖からではない。
乙は、声もなく泣いていたのだ。
あの冷静で感情を容易に表に出さない乙が…!!

神流は、静かに目を伏せると乙を抱き締めたまま、素早く寮へ入って乙を自分の部屋へ連れていく。

その日、乙はずっと何も言わず泣いていた。

やがて、泣き疲れて眠ってしまうまで神流は乙の顔を見ることなく何も聞かず、ずっと肩を貸していたのだった。
自分のベッドで眠る乙をジッと見つめる。

ソレはとても小さくまとまって、自分を抱き締めるように佇んで、儚く弱々しい子犬のようにさえ見える。
乙を見つめる神流の表情は、普段見せる柔かな優しさの表情ではなく、クールな面持ちだった。

神流の脳裏にこの間の移動教室の日、授業をサボってまで聞き出した輝李から放たれた言葉が渦巻いた。

(『アールグレイの月夜』参照)


《「悪い事は言わない…
これ以上、この事に首を突っ込むな…
乙の事を思うなら尚更…」》


あの時の輝李の表情…
あれは並大抵の事では、あんな瞳は出来ないだろう…。
殺意さえ感じる重く鋭い光…。

そして、こんなにも弱々しく小さく見えてしまう乙。

「一体、2人に何があったんだ…
君は、もう乙を愛しては居ないのか…」


ポツリと口をつくと、神流の腕は乙の髪に伸びた。

「乙…お前は何を抱えているんだよ…」

神流は目を伏せると、もどかしい溜め息をつき辛そうな表情を見せた。

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