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陰陽の鏡
陰陽の鏡4
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やがて乙の腕の中で瀾が静かになると、乙は少女を本来のベッドの中へ戻し、明くる日には何も無かったかの様に挨拶を交わす。
「先輩、おはようございます」
「ああ、よく眠れたか?」
「はい」
「じゃ、着替えて食事を取ってこよう」
そんな乙の言葉に瀾の疑問が放たれる。
「え…?でも先輩はお部屋で食事をとるんじゃないんですか?」
「ああ、そう言えば昨日はルームサービスだったな…」
「じゃあ、私行ってきます」
瀾が支度をし始めると、乙の声がそれを止めた。
「野中、ちょっと待って。
俺もいくから」
「え?でも…いいんですか?」
「ああ、一人で食べても味気無いしな。
…それに…」
「?」
そこまで言うと、目を背け乙には珍しくうなじを撫でながらも少しはにかんだ。
「折角勉強を見るなら、もう少し野中の事も知りたいんだ…
勿論、野中が迷惑なら…
無理にとは言わない…」
そんな乙の表情に瀾も戸惑いながらも答える。
「そ、そんな事ありません!!
私の方こそ…」
「良かった」
瀾の返事に優しく微笑むと、それはドキッと高鳴り少女の中で一瞬、時を停めるほどにふんわりと映ったのだった。
二人で食事に向かうと奥の席へと通される。
勉強のペアが一緒に食事を取ることは珍しいことではない。
勿論、学院のプリンス達は他にも来ていた。
しかし瀾の運が悪かったのは、そこに乙と輝李側のファンとミーハーなオールマイティーのファンが居たこと。
そして…その料理だった。
朝食は、いくら軽いと言えど洋食だったのだ。
食器の数は違えど、瀾が器用にナイフとフォークを扱うには少しばかり難があった。
あたふたとしている瀾をチラリと見ると乙はスッと手を上げ、ウェイターを呼ぶ。
ウェイターが席に来ると乙が口を開く。
「済まないが、これを下げてくれないか?」
「…何かお口に召さないものでも御座いましたでしょうか?」
「…いや、そういう訳じゃないんだが今、左腕を傷めているんだ。
そのまま食べても失礼でなければ、箸を用意して欲しいんだが…」
「畏まりました」
「ああ、彼女の分も頼めるか?」
ウェイターは、間もなくして二人分の箸を持ってくると二人の前に置いた。
ウェイターが席を離れると瀾が口を開く。
「あの…」
「…その方が食べやすいだろ?」
「あ…」
そこで瀾は、初めて自分への配慮だと気が付いた。
瀾だけに軽薄な視線が集まらないよう自分も同じ条件で食べることで軽減したのだ。
しかし、洋食のコースを箸で食べている光景は、やはり視線を集めてしまったが、乙の食べ方は気品があり、その場にとってはテーブルマナーが出来ず恥をかく程ではなかった。
一通り食事を済ませると部屋へ戻り一息つきながら乙が口を開いた。
「じゃあ、早速始めるか?」
「は、はい!!」
瀾の返事は思いの外良かったが、時間が経過すればするほど、瀾の表情は硬く影を落としていった。
何故なら緊張と無理にでも理解しなければいけないという使命感のためか思考回路が低下し、説明も上手く飲み込めていなかったからだった。
乙は軽く息をつく。
「…ごめんなさい」
瀾は俯き加減にシュンと肩を落とし、劣等感へと身を埋めた。
そんな瀾をチラリと見ると乙は口を開いた。
「あ…いや、そういう意味じゃない。」
「……」
「これじゃ、授業と変わらないなと思ってな。
野中、少し方法を変えよう」
「はい…すみません…」
俯いたままの瀾に乙は、ソファーから腰を上げると手を差し伸べる。
「野中、行くぞ」
「え…?先輩!!?」
瀾は乙に手を引かれるまま、部屋の外へと出ていった。
「先輩、おはようございます」
「ああ、よく眠れたか?」
「はい」
「じゃ、着替えて食事を取ってこよう」
そんな乙の言葉に瀾の疑問が放たれる。
「え…?でも先輩はお部屋で食事をとるんじゃないんですか?」
「ああ、そう言えば昨日はルームサービスだったな…」
「じゃあ、私行ってきます」
瀾が支度をし始めると、乙の声がそれを止めた。
「野中、ちょっと待って。
俺もいくから」
「え?でも…いいんですか?」
「ああ、一人で食べても味気無いしな。
…それに…」
「?」
そこまで言うと、目を背け乙には珍しくうなじを撫でながらも少しはにかんだ。
「折角勉強を見るなら、もう少し野中の事も知りたいんだ…
勿論、野中が迷惑なら…
無理にとは言わない…」
そんな乙の表情に瀾も戸惑いながらも答える。
「そ、そんな事ありません!!
私の方こそ…」
「良かった」
瀾の返事に優しく微笑むと、それはドキッと高鳴り少女の中で一瞬、時を停めるほどにふんわりと映ったのだった。
二人で食事に向かうと奥の席へと通される。
勉強のペアが一緒に食事を取ることは珍しいことではない。
勿論、学院のプリンス達は他にも来ていた。
しかし瀾の運が悪かったのは、そこに乙と輝李側のファンとミーハーなオールマイティーのファンが居たこと。
そして…その料理だった。
朝食は、いくら軽いと言えど洋食だったのだ。
食器の数は違えど、瀾が器用にナイフとフォークを扱うには少しばかり難があった。
あたふたとしている瀾をチラリと見ると乙はスッと手を上げ、ウェイターを呼ぶ。
ウェイターが席に来ると乙が口を開く。
「済まないが、これを下げてくれないか?」
「…何かお口に召さないものでも御座いましたでしょうか?」
「…いや、そういう訳じゃないんだが今、左腕を傷めているんだ。
そのまま食べても失礼でなければ、箸を用意して欲しいんだが…」
「畏まりました」
「ああ、彼女の分も頼めるか?」
ウェイターは、間もなくして二人分の箸を持ってくると二人の前に置いた。
ウェイターが席を離れると瀾が口を開く。
「あの…」
「…その方が食べやすいだろ?」
「あ…」
そこで瀾は、初めて自分への配慮だと気が付いた。
瀾だけに軽薄な視線が集まらないよう自分も同じ条件で食べることで軽減したのだ。
しかし、洋食のコースを箸で食べている光景は、やはり視線を集めてしまったが、乙の食べ方は気品があり、その場にとってはテーブルマナーが出来ず恥をかく程ではなかった。
一通り食事を済ませると部屋へ戻り一息つきながら乙が口を開いた。
「じゃあ、早速始めるか?」
「は、はい!!」
瀾の返事は思いの外良かったが、時間が経過すればするほど、瀾の表情は硬く影を落としていった。
何故なら緊張と無理にでも理解しなければいけないという使命感のためか思考回路が低下し、説明も上手く飲み込めていなかったからだった。
乙は軽く息をつく。
「…ごめんなさい」
瀾は俯き加減にシュンと肩を落とし、劣等感へと身を埋めた。
そんな瀾をチラリと見ると乙は口を開いた。
「あ…いや、そういう意味じゃない。」
「……」
「これじゃ、授業と変わらないなと思ってな。
野中、少し方法を変えよう」
「はい…すみません…」
俯いたままの瀾に乙は、ソファーから腰を上げると手を差し伸べる。
「野中、行くぞ」
「え…?先輩!!?」
瀾は乙に手を引かれるまま、部屋の外へと出ていった。
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