【R18】アールグレイの昼下がり ー双子の姉・乙編ー

Silence

文字の大きさ
144 / 166
陰陽の鏡

陰陽の鏡4

しおりを挟む
やがて乙の腕の中で瀾が静かになると、乙は少女を本来のベッドの中へ戻し、明くる日には何も無かったかの様に挨拶を交わす。

「先輩、おはようございます」
「ああ、よく眠れたか?」
「はい」
「じゃ、着替えて食事を取ってこよう」

そんな乙の言葉に瀾の疑問が放たれる。


「え…?でも先輩はお部屋で食事をとるんじゃないんですか?」
「ああ、そう言えば昨日はルームサービスだったな…」
「じゃあ、私行ってきます」


瀾が支度をし始めると、乙の声がそれを止めた。

「野中、ちょっと待って。
俺もいくから」
「え?でも…いいんですか?」
「ああ、一人で食べても味気無いしな。
…それに…」
「?」

そこまで言うと、目を背け乙には珍しくうなじを撫でながらも少しはにかんだ。

「折角勉強を見るなら、もう少し野中の事も知りたいんだ…
勿論、野中が迷惑なら…
無理にとは言わない…」

そんな乙の表情に瀾も戸惑いながらも答える。

「そ、そんな事ありません!!
私の方こそ…」
「良かった」

瀾の返事に優しく微笑むと、それはドキッと高鳴り少女の中で一瞬、時を停めるほどにふんわりと映ったのだった。


二人で食事に向かうと奥の席へと通される。
勉強のペアが一緒に食事を取ることは珍しいことではない。
勿論、学院のプリンス達は他にも来ていた。


しかし瀾の運が悪かったのは、そこに乙と輝李側のファンとミーハーなオールマイティーのファンが居たこと。

そして…その料理だった。
朝食は、いくら軽いと言えど洋食だったのだ。
食器の数は違えど、瀾が器用にナイフとフォークを扱うには少しばかり難があった。

あたふたとしている瀾をチラリと見ると乙はスッと手を上げ、ウェイターを呼ぶ。
ウェイターが席に来ると乙が口を開く。

「済まないが、これを下げてくれないか?」
「…何かお口に召さないものでも御座いましたでしょうか?」
「…いや、そういう訳じゃないんだが今、左腕を傷めているんだ。
そのまま食べても失礼でなければ、箸を用意して欲しいんだが…」
「畏まりました」
「ああ、彼女の分も頼めるか?」

ウェイターは、間もなくして二人分の箸を持ってくると二人の前に置いた。
ウェイターが席を離れると瀾が口を開く。

「あの…」
「…その方が食べやすいだろ?」
「あ…」

そこで瀾は、初めて自分への配慮だと気が付いた。
瀾だけに軽薄な視線が集まらないよう自分も同じ条件で食べることで軽減したのだ。

しかし、洋食のコースを箸で食べている光景は、やはり視線を集めてしまったが、乙の食べ方は気品があり、その場にとってはテーブルマナーが出来ず恥をかく程ではなかった。 

一通り食事を済ませると部屋へ戻り一息つきながら乙が口を開いた。

「じゃあ、早速始めるか?」
「は、はい!!」

瀾の返事は思いの外良かったが、時間が経過すればするほど、瀾の表情は硬く影を落としていった。

何故なら緊張と無理にでも理解しなければいけないという使命感のためか思考回路が低下し、説明も上手く飲み込めていなかったからだった。
乙は軽く息をつく。

「…ごめんなさい」

瀾は俯き加減にシュンと肩を落とし、劣等感へと身を埋めた。
そんな瀾をチラリと見ると乙は口を開いた。

「あ…いや、そういう意味じゃない。」
「……」
「これじゃ、授業と変わらないなと思ってな。
野中、少し方法を変えよう」
「はい…すみません…」

俯いたままの瀾に乙は、ソファーから腰を上げると手を差し伸べる。

「野中、行くぞ」
「え…?先輩!!?」

瀾は乙に手を引かれるまま、部屋の外へと出ていった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

処理中です...