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アザレア
アザレア1
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『アールグレイの月夜』章 勿忘草とリンク
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
次の日、乙は傷の痛みと発熱により早く目覚めた。
上がらない右腕を庇い、左手で顔を洗うと鏡と向き合った。
昨晩、瀾が快楽の中で発した言葉が脳裏を巡っていた。
≪「乙様…私…怖イ
アイツが閉じ込めるの…」
「…一体誰が?」
「私は、ただ乙様の傍に居たいだケナノに…」
「……ッ」
「また私を呼んで…瀾って呼んで…」
「いつでも呼んでやるよ」
「傍に居たい…私…約束を…」
「約束?」
「明日…話スかラ…」≫
そこまで言うと瀾の意識は途切れて乙の腕の中へ戻ってきた。
最近、夜の瀾が出ている時間が多くなっていた。
記憶が途切れて乙の事を覚えていなくとも、その何処かで乙を求めて安楽の感覚だけを本能的に思い出す。
乙にとってはそれは罪滅ぼしであり、偽善であること…。
そして罪悪感の中、無意識に乙もそこに安楽を求めてしまう自分も許せない事だった。
その度に一緒に居てはいけないという罪悪感に胸が痛み…
その中で芽生えた、それでも傍に居たいという恋心の真逆の連鎖が絡み付く。
運命とは何と残酷なことだろう。
乙が必要とした時…
瀾が必要とした時…
お互いの時と心は重なることなく、ただ…愛しさと狂おしいさだけが重なり二人の心の祝福を望んではくれなかった。
一方、乙が顔を洗っている間に瀾も眠りから目覚めた。
今しがたまで有ったであろう温もりはベッドを冷やすことなく瀾を温めていた。
「ん…温かい…」
寝返りをうち、シーツが少女の白い肌を撫でる。
瀾は、そのいつもと違う感触に違和感を覚えた。
すると、乙がベッドルームに帰ってくる。
「起きたのか?」
「…ッ!!!」
何故だろうか…
ベッドに座り、体を掛け布団で隠している瀾の顔は乙を見ると血の気が引き、怯えているようにも見える。
「どうした?
具合でも悪いのか?」
乙が心配そうにベッドに近づいた時だった。
「こ、来ないで!!」
「!!」
瀾の荒い声が響くと次に小さく口をついた。
「どういうことですか…」
「何が?」
「どうして貴女は下着のままで、私は裸なんですか!!」
乙の瞳がハッと一瞬大きく開く。
「それに…この胸のアザ…」
乙の胸が一気に鷲掴みにされ途端に痛みが走る。
「それは…」
「…私に…何をしたの…?」
瀾の声は、静寂よりも静かで重く乙にのし掛かると小さく小さく呟いた。
「そうか…夢は終わったんだな…
解っていた…
いつかは覚めてしまう夢だと…」
乙の口が無意識に言葉をつくと、その言葉にリンクするように目を伏せ辛そうに表情を見せたが、ガラリと冷たい表情に変わると静かに瀾に言葉を投げた。
「…見てわからないのか?
想像通りだ、俺はお前を抱いた」
「!!!」
瀾の血の気は更に引き、青ざめている。
そんな瀾をクールにほくそ笑むと更に続けた。
「意外と楽しめた。
だが、もうお前に用はない。
さっさと主人の所へ帰れ…」
「…うそ…でしょ…」
「なんだ、信じられないのか?
それなら…」
そう言うとベッドに座り、瀾の顎をクイッと上げ、残酷な言葉を投げる。
「思い出させてやろうか?
その身体に直接…」
───バシッ!!
乾いた音が乙の頬を打ち、少女は涙ながらに叫んだ。
「貴女、最低よ!!」
「…ッ……最低…か…
ああ、そうだ!
俺は、お前が輝李に大切にされていることを知っていた!!
だから抱いたんだよ!!
また犯されたくなきゃ、輝李の所に帰ればいいだろう?
そして優しく慰めてもらえ!!
お前の〔王子様〕にな…」
冷めた眼で小馬鹿に笑う乙を振り切りバスローブを羽織ると瀾は、乙の部屋を逃げるように出ていった。
乙はベッドに左腕をつき俯くと、誰もいない部屋に囁いた。
「これで…いいんだ…」
その顔は哀しく重苦しく、1つの小さな雫を落とした。
呼吸を遮られた胸の痛みと共に
その罪と罰を受け入れるように…
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次の日、乙は傷の痛みと発熱により早く目覚めた。
上がらない右腕を庇い、左手で顔を洗うと鏡と向き合った。
昨晩、瀾が快楽の中で発した言葉が脳裏を巡っていた。
≪「乙様…私…怖イ
アイツが閉じ込めるの…」
「…一体誰が?」
「私は、ただ乙様の傍に居たいだケナノに…」
「……ッ」
「また私を呼んで…瀾って呼んで…」
「いつでも呼んでやるよ」
「傍に居たい…私…約束を…」
「約束?」
「明日…話スかラ…」≫
そこまで言うと瀾の意識は途切れて乙の腕の中へ戻ってきた。
最近、夜の瀾が出ている時間が多くなっていた。
記憶が途切れて乙の事を覚えていなくとも、その何処かで乙を求めて安楽の感覚だけを本能的に思い出す。
乙にとってはそれは罪滅ぼしであり、偽善であること…。
そして罪悪感の中、無意識に乙もそこに安楽を求めてしまう自分も許せない事だった。
その度に一緒に居てはいけないという罪悪感に胸が痛み…
その中で芽生えた、それでも傍に居たいという恋心の真逆の連鎖が絡み付く。
運命とは何と残酷なことだろう。
乙が必要とした時…
瀾が必要とした時…
お互いの時と心は重なることなく、ただ…愛しさと狂おしいさだけが重なり二人の心の祝福を望んではくれなかった。
一方、乙が顔を洗っている間に瀾も眠りから目覚めた。
今しがたまで有ったであろう温もりはベッドを冷やすことなく瀾を温めていた。
「ん…温かい…」
寝返りをうち、シーツが少女の白い肌を撫でる。
瀾は、そのいつもと違う感触に違和感を覚えた。
すると、乙がベッドルームに帰ってくる。
「起きたのか?」
「…ッ!!!」
何故だろうか…
ベッドに座り、体を掛け布団で隠している瀾の顔は乙を見ると血の気が引き、怯えているようにも見える。
「どうした?
具合でも悪いのか?」
乙が心配そうにベッドに近づいた時だった。
「こ、来ないで!!」
「!!」
瀾の荒い声が響くと次に小さく口をついた。
「どういうことですか…」
「何が?」
「どうして貴女は下着のままで、私は裸なんですか!!」
乙の瞳がハッと一瞬大きく開く。
「それに…この胸のアザ…」
乙の胸が一気に鷲掴みにされ途端に痛みが走る。
「それは…」
「…私に…何をしたの…?」
瀾の声は、静寂よりも静かで重く乙にのし掛かると小さく小さく呟いた。
「そうか…夢は終わったんだな…
解っていた…
いつかは覚めてしまう夢だと…」
乙の口が無意識に言葉をつくと、その言葉にリンクするように目を伏せ辛そうに表情を見せたが、ガラリと冷たい表情に変わると静かに瀾に言葉を投げた。
「…見てわからないのか?
想像通りだ、俺はお前を抱いた」
「!!!」
瀾の血の気は更に引き、青ざめている。
そんな瀾をクールにほくそ笑むと更に続けた。
「意外と楽しめた。
だが、もうお前に用はない。
さっさと主人の所へ帰れ…」
「…うそ…でしょ…」
「なんだ、信じられないのか?
それなら…」
そう言うとベッドに座り、瀾の顎をクイッと上げ、残酷な言葉を投げる。
「思い出させてやろうか?
その身体に直接…」
───バシッ!!
乾いた音が乙の頬を打ち、少女は涙ながらに叫んだ。
「貴女、最低よ!!」
「…ッ……最低…か…
ああ、そうだ!
俺は、お前が輝李に大切にされていることを知っていた!!
だから抱いたんだよ!!
また犯されたくなきゃ、輝李の所に帰ればいいだろう?
そして優しく慰めてもらえ!!
お前の〔王子様〕にな…」
冷めた眼で小馬鹿に笑う乙を振り切りバスローブを羽織ると瀾は、乙の部屋を逃げるように出ていった。
乙はベッドに左腕をつき俯くと、誰もいない部屋に囁いた。
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