152 / 166
アザレア
アザレア2
しおりを挟む
しばらくして、乙がベッドに首をもたげ俯き加減に座っていると、部屋には誰かの気配が入ってきた。
「…乙」
その声は輝李の声だった。
いつものトーンより低めで、感情が読み取りづらい。
瀾の事を傷つけて、追い返してしまった。
輝李が乗り込んでくるのは必然的と言えるだろう。
乙は、微かに顔をあげると口を開いた。
「……野中のことなら…」
そこまで言った時だった。
───バシンッ!!!
輝李の平手が、乙の頬を捕らえた。
それは、あまりに強い衝撃だった。
今までにない程に…。
乙は、切れた口元を左の手の甲で押さえ、目線をあげた。
「はぁはぁ…」
輝李は息を切らし、その最後のポーズのまま睨み付けていた。
当然と言えば当然だろう。
瀾に、あんな追い返し方をしたのだから。
しかし次の瞬間、輝李が見せた顔は憎しみではなく、哀しみを必死で堪えた表情だった。
見ていて胸が苦しくなるほどの…
何を言うわけでもなく、ジッと乙を見つめていたが、やがて言葉を詰まらせ何かを振りきるように、その場を後にした。
「ッ!!!」
しかし、乙は思い出した。
あの表情が、鈴音の時の数年前と同じだったことを。
…そして、今の輝李が去り行きざまに泣いていたことを。
乙は、ハッとすると直ぐ様追いかけ部屋を出ようとドアに向かう輝李の腕を掴んだ。
「輝李!!」
「放してよっ!!!」
強い口調は腕を払おうとしたが、乙はそれ以上の力で連結を留めた。
輝李は下を俯いたまま此方を向くと抵抗しながら力いっぱい声を発した。
「放してったら!!」
「輝李!!話を…」
「乙は、いつもそう!!
鈴音の時も…ッ、今も僕の事なんか見向きもしない!!…ヒック
僕の事なんか…僕の事なんか!!
本当は何とも想ってないくせに!!
ウッ…都合の良い時だけ優しくしないで!!」
激しく抵抗しながら、乙にはその拳がパタパタと飛んで暴れている。
しかし、その声は涙で震えているのが解った。
そして、輝李が顔を上げるとあの少女だった時と同じ、弱々しく大粒の雨を降らせた瞳で叫んだ。
「乙なんか大っ嫌い!!!」
「輝李!!…ッ!!」
乙は埒の空かない輝李を痛む腕をも使い、引き寄せるとその唇を重ねた。
やがて唇が離れると少女を抱きしめ、その胸の中で雨が止むのを待ったのだった。
「…乙」
その声は輝李の声だった。
いつものトーンより低めで、感情が読み取りづらい。
瀾の事を傷つけて、追い返してしまった。
輝李が乗り込んでくるのは必然的と言えるだろう。
乙は、微かに顔をあげると口を開いた。
「……野中のことなら…」
そこまで言った時だった。
───バシンッ!!!
輝李の平手が、乙の頬を捕らえた。
それは、あまりに強い衝撃だった。
今までにない程に…。
乙は、切れた口元を左の手の甲で押さえ、目線をあげた。
「はぁはぁ…」
輝李は息を切らし、その最後のポーズのまま睨み付けていた。
当然と言えば当然だろう。
瀾に、あんな追い返し方をしたのだから。
しかし次の瞬間、輝李が見せた顔は憎しみではなく、哀しみを必死で堪えた表情だった。
見ていて胸が苦しくなるほどの…
何を言うわけでもなく、ジッと乙を見つめていたが、やがて言葉を詰まらせ何かを振りきるように、その場を後にした。
「ッ!!!」
しかし、乙は思い出した。
あの表情が、鈴音の時の数年前と同じだったことを。
…そして、今の輝李が去り行きざまに泣いていたことを。
乙は、ハッとすると直ぐ様追いかけ部屋を出ようとドアに向かう輝李の腕を掴んだ。
「輝李!!」
「放してよっ!!!」
強い口調は腕を払おうとしたが、乙はそれ以上の力で連結を留めた。
輝李は下を俯いたまま此方を向くと抵抗しながら力いっぱい声を発した。
「放してったら!!」
「輝李!!話を…」
「乙は、いつもそう!!
鈴音の時も…ッ、今も僕の事なんか見向きもしない!!…ヒック
僕の事なんか…僕の事なんか!!
本当は何とも想ってないくせに!!
ウッ…都合の良い時だけ優しくしないで!!」
激しく抵抗しながら、乙にはその拳がパタパタと飛んで暴れている。
しかし、その声は涙で震えているのが解った。
そして、輝李が顔を上げるとあの少女だった時と同じ、弱々しく大粒の雨を降らせた瞳で叫んだ。
「乙なんか大っ嫌い!!!」
「輝李!!…ッ!!」
乙は埒の空かない輝李を痛む腕をも使い、引き寄せるとその唇を重ねた。
やがて唇が離れると少女を抱きしめ、その胸の中で雨が止むのを待ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる