【R18】アールグレイの昼下がり ー双子の姉・乙編ー

Silence

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アザレア

アザレア2

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しばらくして、乙がベッドに首をもたげ俯き加減に座っていると、部屋には誰かの気配が入ってきた。

「…乙」


その声は輝李の声だった。
いつものトーンより低めで、感情が読み取りづらい。
瀾の事を傷つけて、追い返してしまった。
輝李が乗り込んでくるのは必然的と言えるだろう。
乙は、微かに顔をあげると口を開いた。


「……野中のことなら…」


そこまで言った時だった。


───バシンッ!!!


輝李の平手が、乙の頬を捕らえた。

それは、あまりに強い衝撃だった。
今までにない程に…。
乙は、切れた口元を左の手の甲で押さえ、目線をあげた。

「はぁはぁ…」


輝李は息を切らし、その最後のポーズのまま睨み付けていた。
当然と言えば当然だろう。
瀾に、あんな追い返し方をしたのだから。


しかし次の瞬間、輝李が見せた顔は憎しみではなく、哀しみを必死で堪えた表情だった。

見ていて胸が苦しくなるほどの…


何を言うわけでもなく、ジッと乙を見つめていたが、やがて言葉を詰まらせ何かを振りきるように、その場を後にした。


「ッ!!!」


しかし、乙は思い出した。
あの表情が、鈴音りんねの時の数年前と同じだったことを。


…そして、今の輝李が去り行きざまに泣いていたことを。 


乙は、ハッとすると直ぐ様追いかけ部屋を出ようとドアに向かう輝李の腕を掴んだ。

「輝李!!」
「放してよっ!!!」


強い口調は腕を払おうとしたが、乙はそれ以上の力で連結を留めた。
輝李は下を俯いたまま此方を向くと抵抗しながら力いっぱい声を発した。

「放してったら!!」
「輝李!!話を…」
「乙は、いつもそう!!
鈴音の時も…ッ、今も僕の事なんか見向きもしない!!…ヒック
僕の事なんか…僕の事なんか!!
本当は何とも想ってないくせに!!
ウッ…都合の良い時だけ優しくしないで!!」


激しく抵抗しながら、乙にはその拳がパタパタと飛んで暴れている。
しかし、その声は涙で震えているのが解った。

そして、輝李が顔を上げるとあの少女だった時と同じ、弱々しく大粒の雨を降らせた瞳で叫んだ。

「乙なんか大っ嫌い!!!」
「輝李!!…ッ!!」

乙は埒の空かない輝李を痛む腕をも使い、引き寄せるとその唇を重ねた。

やがて唇が離れると少女を抱きしめ、その胸の中で雨が止むのを待ったのだった。
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