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アザレア
アザレア7
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その朝、いつものように輝李と登校をし、輝李に誘われ昼休みに中庭の木の下で昼食をとる約束をした。
乙が中庭へ向かう途中、校舎の視角に入る所で人の声が聞こえた。
チラリと横目でそちらを見ると、数人の女生徒がいる。
「!!」
その中に後ろ姿でも乙が見れば直ぐに解る人物がいた。
野中 瀾だ。
乙は、そのグループに気づかれないように死角側の壁に寄りかかり様子を見た。
女生徒の一人が瀾に口を開く。
「貴女、まだ居たの?
劣等生のくせに乙お姉様に色目を使ってパートナー面していい気なものね!!
そういえば最近、輝李お姉様と一緒にいないけど、捨てられちゃったんじゃない?」
「!!!」
「輝李お姉様だけでなく、乙お姉様にまで手を出そうとするからバチが当たったのかしら?
≪二兎を追うもの一兎も得ず≫っていうじゃない。
ああ、輝李お姉様が居なくなったのも貴女のせいだったりして?」
「違…」
瀾がそこまで言った時だった。
「誰が色目を使ってるって?」
「!!!…乙お姉様!!」
乙は、思わず少女達の前に出ていた。
途端に少女達の顔が青ざめていく。
「最近の淑女ってのは、寄って集って一人を吊し上げるのか?」
「…そんな!私達はお姉様にまとわり着いてるこの子を…」
───ガンッ!!!
拳を壁に投げると乙は、少女達に鋭い視線を向ける。
「誰がそんな事を頼んだ?
安心しろよ…
俺はお前らのようなプライドのない女は最初から相手にしない!!
…二度と野中に近づくな!!」
すると少女達は、泣きながら立ち去っていく。
本当は瀾とは、もう関わるまいと思った…。
合宿旅行の時、乙は瀾をつけ離したのだから…。
しかし、そうせざるを得ない自分がいた。
「…野中、大丈…」
「余計なことしないでっ!!!」
「!!」
瀾の言葉に途端に胸が締め付けられる。
そんな乙の顔を見た瀾が口を開く。
「フン…何よ…
傷付いたような顔して…
私の方が貴方より傷付いてるわ!」
「……ッ」
「ずっと傍にいてくれたのに…
…返してよ…」
瀾は俯き加減にそう言うと、乙をキッと睨み荒い声で乙を責めた。
「輝李さんを返してっ!!!」
乙の胸が、まるで握り潰されるように締まり言葉すら詰まりそうになるほどに痛んだ。
「…ッ…野中…」
「貴方は欲しいものを全て手に入れたはずでしょ!!
…私に近付いたのだって…
輝李さんを自分のものにするためじゃない…
…それなのに…」
俯き加減に呟くように瀾の声は徐々に涙声に変わっていき、やがてそれは精一杯の哀しみと怒りが混じり涙目で乙に訴えた。
「これ以上、私から何を奪うつもりなんですか!!!」
瀾は顔を両手で覆い泣きながら、乙を更に責め立てた。
「…もう私には何もないのに!!
こんな時だけ優しくするなんて…卑怯ですっ!!!」
「…ッ…」
乙は今にも『違う!!』と口を付きそうになるのを必死で押さえた。
泣いている瀾に抱き締める事すら許されないことに胸が張り裂けてしまいそうになる。
瀾は言葉の出ない乙に続けた。
「貴方の顔なんか、もう見たくない!!
…私の前に現れないで…
ウッ…ヒック…こんな風になったのも全部貴方のせいじゃない!!」
そして、瀾は最後に力の限り叫び乙の前から走り去ったのだ。
「…貴方なんか…大っ嫌い!!!」
乙は締め付けられる胸に思わず目を伏せた。
「俺が本当に欲しいものなんか…
もう…手に入らない…」
誰もいなくなったその場所で乙は、小さく呟いたのだった…。
乙が待ち合わせ場所の中庭の木にたどり着く頃、輝李は既についていた。
乙を見つけると輝李は嬉しそうに手を振る。
「あ♪乙、こっちこっち♪」
「…悪い…待たせたな」
そう言うと輝李の傍に座る。
「はい、乙のお弁当♪」
輝李は、いそいそと一生懸命作った弁当を手渡す。
しかし乙は、先程の瀾との事を考えていた。
ずっと消えない胸の痛み。
「……乙?」
「…!!
ああ、悪い…サンキューな」
「…何かあった?」
何となく顔色の優れない乙を心配した輝李が口を開くと、乙は地に付いている輝李の手に自分の手を重ねる。
「あ…」
輝李は、一瞬ピクッと手を動かし顔をあげると、何処か淋しそうな柔かな眼差しの乙の顔が輝李に近づいてくる。
「乙、ダメだよ…//
学院でそんなこと…誰か来たら…」
「…構わない」
乙は、辛そうにすがるような顔で輝李に自分の唇を重ねた。
『…俺は、ズルい…
輝李の気持ちを利用して、
こんな風に逃げることしか出来ないなんて…』
強く握られた輝李の手…。
そんな乙の思いは双子の輝李にも伝わっていく。
『乙…何かあったんだ…
何か忘れたいことが…
僕が支えられるなら、僕はどんな事だって受け入れられる…』
そして二人の思いが同調する。
『もしも…願いが叶うなら…
俺(僕)が犠牲になったとしても
…構わない…』
そして…
【昼と月】の運命の歯車が廻り始める…
乙が中庭へ向かう途中、校舎の視角に入る所で人の声が聞こえた。
チラリと横目でそちらを見ると、数人の女生徒がいる。
「!!」
その中に後ろ姿でも乙が見れば直ぐに解る人物がいた。
野中 瀾だ。
乙は、そのグループに気づかれないように死角側の壁に寄りかかり様子を見た。
女生徒の一人が瀾に口を開く。
「貴女、まだ居たの?
劣等生のくせに乙お姉様に色目を使ってパートナー面していい気なものね!!
そういえば最近、輝李お姉様と一緒にいないけど、捨てられちゃったんじゃない?」
「!!!」
「輝李お姉様だけでなく、乙お姉様にまで手を出そうとするからバチが当たったのかしら?
≪二兎を追うもの一兎も得ず≫っていうじゃない。
ああ、輝李お姉様が居なくなったのも貴女のせいだったりして?」
「違…」
瀾がそこまで言った時だった。
「誰が色目を使ってるって?」
「!!!…乙お姉様!!」
乙は、思わず少女達の前に出ていた。
途端に少女達の顔が青ざめていく。
「最近の淑女ってのは、寄って集って一人を吊し上げるのか?」
「…そんな!私達はお姉様にまとわり着いてるこの子を…」
───ガンッ!!!
拳を壁に投げると乙は、少女達に鋭い視線を向ける。
「誰がそんな事を頼んだ?
安心しろよ…
俺はお前らのようなプライドのない女は最初から相手にしない!!
…二度と野中に近づくな!!」
すると少女達は、泣きながら立ち去っていく。
本当は瀾とは、もう関わるまいと思った…。
合宿旅行の時、乙は瀾をつけ離したのだから…。
しかし、そうせざるを得ない自分がいた。
「…野中、大丈…」
「余計なことしないでっ!!!」
「!!」
瀾の言葉に途端に胸が締め付けられる。
そんな乙の顔を見た瀾が口を開く。
「フン…何よ…
傷付いたような顔して…
私の方が貴方より傷付いてるわ!」
「……ッ」
「ずっと傍にいてくれたのに…
…返してよ…」
瀾は俯き加減にそう言うと、乙をキッと睨み荒い声で乙を責めた。
「輝李さんを返してっ!!!」
乙の胸が、まるで握り潰されるように締まり言葉すら詰まりそうになるほどに痛んだ。
「…ッ…野中…」
「貴方は欲しいものを全て手に入れたはずでしょ!!
…私に近付いたのだって…
輝李さんを自分のものにするためじゃない…
…それなのに…」
俯き加減に呟くように瀾の声は徐々に涙声に変わっていき、やがてそれは精一杯の哀しみと怒りが混じり涙目で乙に訴えた。
「これ以上、私から何を奪うつもりなんですか!!!」
瀾は顔を両手で覆い泣きながら、乙を更に責め立てた。
「…もう私には何もないのに!!
こんな時だけ優しくするなんて…卑怯ですっ!!!」
「…ッ…」
乙は今にも『違う!!』と口を付きそうになるのを必死で押さえた。
泣いている瀾に抱き締める事すら許されないことに胸が張り裂けてしまいそうになる。
瀾は言葉の出ない乙に続けた。
「貴方の顔なんか、もう見たくない!!
…私の前に現れないで…
ウッ…ヒック…こんな風になったのも全部貴方のせいじゃない!!」
そして、瀾は最後に力の限り叫び乙の前から走り去ったのだ。
「…貴方なんか…大っ嫌い!!!」
乙は締め付けられる胸に思わず目を伏せた。
「俺が本当に欲しいものなんか…
もう…手に入らない…」
誰もいなくなったその場所で乙は、小さく呟いたのだった…。
乙が待ち合わせ場所の中庭の木にたどり着く頃、輝李は既についていた。
乙を見つけると輝李は嬉しそうに手を振る。
「あ♪乙、こっちこっち♪」
「…悪い…待たせたな」
そう言うと輝李の傍に座る。
「はい、乙のお弁当♪」
輝李は、いそいそと一生懸命作った弁当を手渡す。
しかし乙は、先程の瀾との事を考えていた。
ずっと消えない胸の痛み。
「……乙?」
「…!!
ああ、悪い…サンキューな」
「…何かあった?」
何となく顔色の優れない乙を心配した輝李が口を開くと、乙は地に付いている輝李の手に自分の手を重ねる。
「あ…」
輝李は、一瞬ピクッと手を動かし顔をあげると、何処か淋しそうな柔かな眼差しの乙の顔が輝李に近づいてくる。
「乙、ダメだよ…//
学院でそんなこと…誰か来たら…」
「…構わない」
乙は、辛そうにすがるような顔で輝李に自分の唇を重ねた。
『…俺は、ズルい…
輝李の気持ちを利用して、
こんな風に逃げることしか出来ないなんて…』
強く握られた輝李の手…。
そんな乙の思いは双子の輝李にも伝わっていく。
『乙…何かあったんだ…
何か忘れたいことが…
僕が支えられるなら、僕はどんな事だって受け入れられる…』
そして二人の思いが同調する。
『もしも…願いが叶うなら…
俺(僕)が犠牲になったとしても
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