アリスと女王

ちな

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箱庭アリス

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一本鞭が地面に振り下ろされると、可哀想なアリスたちを囲んでいた衛兵たちが面白がって、同じように地面に向かって鞭を振りました。ばちんばちんとあちこちから鋭い音が響き、土埃がぶわっと舞います。立ち込めた土埃は、彼女たちを囲みました。

「お前とお前」

指示を出す衛兵は、四人のうち、真ん中ふたりのアリスを指しました。びくりと肩を震わせるふたりは、ぶるぶると足を震わせます。楽しい未来など待っていないと分かりきっていました。前後ふたりのアリスもそうです。決して他人事でないと、唇を震わせて嗚咽を漏らしました。

「そこにしゃがめ」

恐ろしい命令は、1階分高い場所からこっそり覗き込んでいた凛でさえ震え上がりました。

ただでさえ四人の足の間には、一本の鎖が痛いほど食い込んでいるのです。真ん中のふたりがしゃがみ込めばどうなるかなど、確認せずとも分かります。

凛はすり、と膝を擦り合わせ、唇を噛みました。

「…ん、」

乾いた唇を真っ赤な舌でちらりと舐め、彼女たちがどうなってしまうのか、じっと見守りました。


「さっさとしろ!」

「きゃあああっ!」

パシンっ…!バラ鞭が真ん中ふたりの背中と腹を叩き上げます。一番前にいるアリスは唇をガタガタと震わせて、ハラハラと涙を零しました。許してください、許してください…呪文のように繰り返す言葉は、誰の耳にも届きませんでした。

ただ泣き出すアリスたちに、衛兵は終ぞ痺れを切らしました。

「手伝ってやろう」

ニマニマといやらしい笑みを浮かべた体格のいい衛兵が近づいてきました。

首と両手を一枚板で拘束されたアリスたちに逃げ場も抗う術もありません。

噴水の涼やかな音が響く清新な広場に、下卑た笑い声が地を這います。歓声すら上がりました。

汚い歯を見せて笑う体格のいい衛兵は、前から二番目のアリスの肩を掴みました。

「止めてっ…止めてくださいお願いします…!!」

奥歯をガチガチ鳴らして懇願しますが、下卑た笑い声に掻き消されてしまいました。

衛兵がにまぁっ…と笑った瞬間。

「いやぁあああああああ!!!!!!」

真ん中に設置された噴水のように、悲鳴が吹き上がりました。



「ねぇ、凛。僕はさ、あの光景を見てどれほど凛が心を痛めるだろうって、すごく心苦しく思ってたんだ」

じっとりと重い空気の中、蓮がぽつりと呟きました。凛がひくっと腰を震わせました。

「凛は優しいから、きっとすごく傷付いてしまうだろうなって心配してたんだけど…」

凛の肩に回していた手を、ワンピースの裾へするりと這わせました。

凛は煉瓦の壁に手を着いたまま、背中に冷たい汗が流れるのを感じます。

温かい蓮の手は、裾から内腿へと撫で付けます。

「これはなに?」

にちゅ、と粘着質な音が、外の悲鳴に紛れました。どくどくと鼓動が早くなった凛はもう、言い逃れできません。はっはっ、と短く呼吸を繰り返し、蓮の手の行先に足が震えそうです。

「可愛い僕の凛。あれを見て濡らしたの?自分もあんなことされたいって、想像したんだ?」

「ちがっ…」

弱い否定の声は、肯定しているも同然です。蓮は喉の奥で小さく笑い、蜜が溢れる泉の際にまで指を這わせました。

「可哀想なアリスたち。ああ見てあの子…一番前の子。あの子、クリトリス蹴られてる」

凛はごくりと喉を鳴らしました。視線を少し下げると、真ん中ふたりがしゃがみこむことによって信じられないほどくい込んでしまった鎖の上から、衛兵が硬い革靴で先頭のアリスの股間あたりを蹴りあげていました。

「あーぁ…惨めで痛そうで……」

蓮は凛の内腿をゆっくりと撫で回しながら、凛の耳元へ唇を寄せました。

「気持ちよさそうだね?」

「あぁっあ…!」

古い煉瓦の壁を引っ掻いて、凛は熱い息を吐き出しました。

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