アリスと女王

ちな

文字の大きさ
82 / 149

鎖を引いて!

しおりを挟む
「ああ見て凛…」
崩れた煉瓦の先から目をそらすことが出来なくなってしまった凛の耳元に唇を寄せ、低く囁きます。肩を抱き、指先でしっとりと汗ばむ首筋を撫でてやりました。
広場の噴水は相変わらず宝石を散らしたような飛沫が目に眩しく、涼やかな音を奏でます。噴水の下は小さな波紋がいくつも広がって、映りこんだアリスたちが水に歪みました。
凛は熱い息を零しながら耳をそばだてます。下衆な笑い声は段々大きくなり、凛は唇を結びました。
「ふふっ。これからあの子たちは、凛が大好きなことをしてもらうんだね」
縄を足して長くした鎖は、彼女たちの足の間を通っていました。縦一列に並んだ彼女たちの前後には、それぞれ端を持った衛兵が嫌な笑みを貼りつけています。
これから彼女たちの身に起こることは、凛にも簡単に想像が付きました。
凛は唇をぐっと噛んで、眉間に皺を寄せました。心臓がどきどきして、膝を擦り合わせます。そのタイミングを見計らっていたように、蓮は凛の背後に立ちました。
「ダメだよ凛。あの子たちはこれから可哀想な思いをするんだから、凛が気持ちよくなっちゃ悪いでしょ」
くすくすと笑う蓮は、凛の足の間に膝を割り込み、閉じられなくしてしまいました。
そうして大事なものを抱えるように、蓮は凛をぎゅっと抱きしめてやります。温かい蓮の腕の中で、凛は熱く長い息を吐き出しました。
「可哀想だよね。彼女たちの役割は、餌なんだ。ああやってただただ蜜を搾り取られて見世物にされて…ああ、始まったね」
凛の細い首筋に、流れ星みたいな汗が一筋流れました。ふうふうと荒い息の先は、四人のアリス達です。鎖が引かれ、噴水の端っこに映った四人の顔が一斉に歪みました。

1階分高いことろとはいえ、凛の耳にも彼女たちの悲鳴が良く聞こえました。汚い野次や下品な笑い声、拍手や手拍子。それから、じゃらじゃらと冷たい金属の音。
四人の足の間に通った鎖は、前後の衛兵にじゃらじゃらと擦られて、逃げ場のない彼女たちは泣き叫ぶ以外にできることなどないのです。前の衛兵が、その腕力の限り鎖を引きました。
「ひぎゃああああぁぁぁぁッッ!!!!」
ジャリジャリジャリ…。冷たく響く金属は、4人分の股を擦り上げます。一枚板で首と両手を括られた4人分のアリスたちが一斉に腰を仰け反らせました。
今度は後方に立つ衛兵が、同じく強い腕力を試すが如く、一気に鎖を引きました。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッ…!!!!」
悲痛な叫び声と、鎖が摺れる音。そうしてやっぱり4人一斉に前屈みになるのです。鎖に繋がれたマリオネットのような動きに、歓声は段々大きくなっていきました。
鎖で足の間を容赦なくすり上げられるアリスを中心に、囲んだ衛兵たちからは汚い野次と拍手、歓声や怒号が飛び交いました。
泣こうが叫ぼうが、ジャリジャリと甲高い鎖の悲鳴は一瞬も休まず、重たい鎖が彼女たちの足の間を駆け抜けます。最早誰の蜜なのか分かりませんが、鎖は噴水の煌めきに負けじと、太陽をいっぱいに浴びてきらきらと輝きました。

長さを足した鎖は、幾度となく彼女たちの足の間を往復しました。悲鳴は泣き声が混じり始め、悲痛な音に変わっていきますが、止みそうもありません。
「ふふっ。凛、蔦にしてもらったことがあるよね。あの時僕が助けてあげなかったら、今頃蔦の餌になってるところだったよ」
「あっ…ぁ…!」
森での出来事を懐かしむように、蓮は背後から凛の耳に唇を寄せて低く囁きました。蓮が南に行くように指示をして、帽子の男に会ったあとのことです。
凛は思わず足を擦り合わせようとしましたが、長い蓮の足に阻まれて叶いません。腰が勝手にひくひくと踊りだし、あまい匂いがふわっと立ち上りました。
凛の爪の先に古い煉瓦が入り込みました。じくじくと熱を持つ足の間は刺激を待ちわび、切ないと号泣します。蓮は徐々に赤みを増した首筋に、ちゅう、と吸い付いてやりました。真っ赤に染まり切った耳にも同じく唇をたっぷりあてがい、小さな耳の穴に舌を差し込みます。ざりざりとした音、耳から背中に掛けてびりびりと流れる電気に、凛は背中を反らせて小鳥のように鳴きました。
小さな隙間から、そよそよと優しい風が流れ込みます。吹き抜けていった風は、熱を帯び過ぎた凛の体をちっとも冷ましてくれませんでした。
蓮は凛の耳に唇を宛がったまま、低い声を這わせます。
「僕がしてあげたこともあったでしょ。静電気責め、とっても気に入ってくれたよね」
「ひんっん!やっ…!」
体がその感覚を思い出し、欲するようにとろとろと蜜が零れます。抱きしめられたことによって凛は満足に身じろぐこともできないまま、目をとろんと蕩けさせました。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...