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残響
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「結名ちゃん、いい子にしてるんだよ」
あたしより年下のくせに、紫音は幼子に言い聞かせるような慈愛に満ちた声でそんなことを言う。柔らかい笑みのおまけ付き。本当は腹の奥に棲む真っ黒で獰猛なオスの顔を持ってるくせに。人前でなど絶対見せないその顔を見る度、ぞくぞくと背中が震えちゃう。
紫音は先程と同じく、音もなく部屋から出ていった。
「足閉じんなよ」
背後にいた蓮音が前触れなく突然立ち上がったせいで体勢を崩し、仰向けでベッドの上に倒れ込んだ。濡れそぼってしまった黒いショーツを隠したいのに、蓮音が閉じるなというから従うしかない。
…そう、抵抗したり反抗したりして、いいことなどひとつもなかったのだ。恥ずかしさを我慢するほうがよっぽどいい…。
双子の思うように教化されてしまったあたしは、仰向けで後ろ手に拘束されたままベッドの上で膝を立て、大きく開いて見せた。蓮音がいい子、なんて言うから、ちょっと、ほんのちょっと嬉しくなっちゃう…。それに後ろ手に拘束されてベッドの上に転がされてるなんて、ああ本当に食べられる前の家畜みたい。
痺れた頭でぼんやりとそんなことを思っている間に、蓮音はあたしの前、さっきまで紫音が占領していた場所まで移動した。あたしの視界は手入れはされているものの古びた天井、明かりのついていない蛍光灯、それから、世界とあたしたちを完全に隔てたグリーンの分厚いカーテンでいっぱいになる。
この分厚いカーテンで遮断された四角い箱の外はきっと凛と冷えた冬晴れで、人々は指を擦らせながら肩を竦めて歩いていることだろう。あたしは暖房器具を一切つけていない部屋で、じっとりと汗をかいているというのに。
少しばかりそんなことを思って現実逃避しているが、現実が変わるわけでない。あたしの正面にどかりと座った蓮音は、スカートがめくれあがってしまったあたしの太ももに指を添わせた。思わずひくんと反応してしまうと、蓮音は実に愉しそうに笑った。悔しいと思う反面、這わせる進行方向に期待して、体の奥からとろりとした熱い体液が零れてしまう。蓮音は見逃してはくれなかった。
「期待してんだ?」
「やっ…」
紫音に足で踏まれたり指で叩かれたり手のひらで叩かれたりと、散々までに酷い扱いを受けたはずなのに。もう砦の意味を成していないクロッチ部分を蓮音がじーっと凝視する。熱を当てられたみたいになっちゃってるそこは、自分でもわかるくらいに歓喜に震えていた。蓮音の視線はあたしのクロッチの中をねっとりと愛撫するみたいに、ゆったりと瞬きを繰り返す。足を閉じたい。恥ずかしいに決まってるじゃない。足を思いっきり閉じて、この四角い部屋から飛び出したい。経験上、この先はドロドロに溶かされる未来しか残ってないことを知っている。逃げてしまいたい。
はぁはぁと勝手に荒くなっていく呼吸に合わせて、視界の一番下の端っこに映りこんだ黒いエプロンが上下に揺れていた。
期待か恐怖か分からなかった。
蓮音ががちゃがちゃと自分のベルトを外す。そのベルトを見せつけるようにタイトなデニムからしゅるりと抜き取って、笑った。
「期待に応えてやるよ」
いやいいです結構です。そう言いたいのに、蓮音はベルトを二つ折りにすると、輪のほうであたしの内腿を撫でた。
「あっ…蓮音っ…」
「この真っ白い肌があかくなってくのって、最高に綺麗だよな」
するすると撫で上げる感触に膝が震える。このあと起こるであろう感覚に恐怖して…期待して。息を詰め、ベルトの行方と蓮音の顔を交互に見遣る。蓮音は目をぎらぎらさせて頬をあかくしていた。
その顔にぞくりと背中が粟立つ。
──ああ、オスの顔…
思った瞬間、蓮音がベルトを振り上げた。
「っきゃああっ!」
ぴしりと鋭い音の後、右の内腿が火傷したみたいな感覚。体がびくんびくんと跳ね上がり、必死に内腿同士を擦り合わせる。蓮音は乱暴にあたしの足を開かせると、間髪入れずに二回目の音。余韻が醒めないうちに、三回目。四回目で蓮音の拘束を無視して完全に足を閉じてしまったから、彼を纏う空気が一変した。
「閉じるな」
蓮音の低い声が荒い呼吸の合間に聞こえる。あたしはじんじんと広がる痛みと、僅かな甘い余韻に頭が痺れて、謝罪のことばすら出せなかった。
返事がないことに怒ったのかあたしの足を力づくで開かせると、六回目のベルト打ちは、見事にクロッチ部分を直撃した。自分の叫ぶ声が自分の耳を劈く。
いたい、いたい、あつい、きもちい、きもちいいの…!
叫び声に混ぜたあまい感覚は、蓮音に届いたかどうかなんて分からない。だけど、蓮音は笑った。直接打ってやるよって、あたしのぐしょぐしょに濡れたショーツを乱暴に脱がせた。
あたしより年下のくせに、紫音は幼子に言い聞かせるような慈愛に満ちた声でそんなことを言う。柔らかい笑みのおまけ付き。本当は腹の奥に棲む真っ黒で獰猛なオスの顔を持ってるくせに。人前でなど絶対見せないその顔を見る度、ぞくぞくと背中が震えちゃう。
紫音は先程と同じく、音もなく部屋から出ていった。
「足閉じんなよ」
背後にいた蓮音が前触れなく突然立ち上がったせいで体勢を崩し、仰向けでベッドの上に倒れ込んだ。濡れそぼってしまった黒いショーツを隠したいのに、蓮音が閉じるなというから従うしかない。
…そう、抵抗したり反抗したりして、いいことなどひとつもなかったのだ。恥ずかしさを我慢するほうがよっぽどいい…。
双子の思うように教化されてしまったあたしは、仰向けで後ろ手に拘束されたままベッドの上で膝を立て、大きく開いて見せた。蓮音がいい子、なんて言うから、ちょっと、ほんのちょっと嬉しくなっちゃう…。それに後ろ手に拘束されてベッドの上に転がされてるなんて、ああ本当に食べられる前の家畜みたい。
痺れた頭でぼんやりとそんなことを思っている間に、蓮音はあたしの前、さっきまで紫音が占領していた場所まで移動した。あたしの視界は手入れはされているものの古びた天井、明かりのついていない蛍光灯、それから、世界とあたしたちを完全に隔てたグリーンの分厚いカーテンでいっぱいになる。
この分厚いカーテンで遮断された四角い箱の外はきっと凛と冷えた冬晴れで、人々は指を擦らせながら肩を竦めて歩いていることだろう。あたしは暖房器具を一切つけていない部屋で、じっとりと汗をかいているというのに。
少しばかりそんなことを思って現実逃避しているが、現実が変わるわけでない。あたしの正面にどかりと座った蓮音は、スカートがめくれあがってしまったあたしの太ももに指を添わせた。思わずひくんと反応してしまうと、蓮音は実に愉しそうに笑った。悔しいと思う反面、這わせる進行方向に期待して、体の奥からとろりとした熱い体液が零れてしまう。蓮音は見逃してはくれなかった。
「期待してんだ?」
「やっ…」
紫音に足で踏まれたり指で叩かれたり手のひらで叩かれたりと、散々までに酷い扱いを受けたはずなのに。もう砦の意味を成していないクロッチ部分を蓮音がじーっと凝視する。熱を当てられたみたいになっちゃってるそこは、自分でもわかるくらいに歓喜に震えていた。蓮音の視線はあたしのクロッチの中をねっとりと愛撫するみたいに、ゆったりと瞬きを繰り返す。足を閉じたい。恥ずかしいに決まってるじゃない。足を思いっきり閉じて、この四角い部屋から飛び出したい。経験上、この先はドロドロに溶かされる未来しか残ってないことを知っている。逃げてしまいたい。
はぁはぁと勝手に荒くなっていく呼吸に合わせて、視界の一番下の端っこに映りこんだ黒いエプロンが上下に揺れていた。
期待か恐怖か分からなかった。
蓮音ががちゃがちゃと自分のベルトを外す。そのベルトを見せつけるようにタイトなデニムからしゅるりと抜き取って、笑った。
「期待に応えてやるよ」
いやいいです結構です。そう言いたいのに、蓮音はベルトを二つ折りにすると、輪のほうであたしの内腿を撫でた。
「あっ…蓮音っ…」
「この真っ白い肌があかくなってくのって、最高に綺麗だよな」
するすると撫で上げる感触に膝が震える。このあと起こるであろう感覚に恐怖して…期待して。息を詰め、ベルトの行方と蓮音の顔を交互に見遣る。蓮音は目をぎらぎらさせて頬をあかくしていた。
その顔にぞくりと背中が粟立つ。
──ああ、オスの顔…
思った瞬間、蓮音がベルトを振り上げた。
「っきゃああっ!」
ぴしりと鋭い音の後、右の内腿が火傷したみたいな感覚。体がびくんびくんと跳ね上がり、必死に内腿同士を擦り合わせる。蓮音は乱暴にあたしの足を開かせると、間髪入れずに二回目の音。余韻が醒めないうちに、三回目。四回目で蓮音の拘束を無視して完全に足を閉じてしまったから、彼を纏う空気が一変した。
「閉じるな」
蓮音の低い声が荒い呼吸の合間に聞こえる。あたしはじんじんと広がる痛みと、僅かな甘い余韻に頭が痺れて、謝罪のことばすら出せなかった。
返事がないことに怒ったのかあたしの足を力づくで開かせると、六回目のベルト打ちは、見事にクロッチ部分を直撃した。自分の叫ぶ声が自分の耳を劈く。
いたい、いたい、あつい、きもちい、きもちいいの…!
叫び声に混ぜたあまい感覚は、蓮音に届いたかどうかなんて分からない。だけど、蓮音は笑った。直接打ってやるよって、あたしのぐしょぐしょに濡れたショーツを乱暴に脱がせた。
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