化け猫の憂鬱

阪上克利

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化け猫の憂鬱

返事をしてほしい

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それから数日間は仕事をしているとき以外はカンナからのメールに返事をする毎日だった。
メールの内容は他愛のないものが多く、やはり年頃の女の子らしいメールだった。
仕事をしているときは、メールなどはチェックできないが、暇を見つけてはカンナに会いに行くようにしていた。
そしてそのたびに、足や手をさすってあげた。

カンナはあたしが行くときにいつも起きているわけではなかった。
日に日に起きている時間が短くなっている感じが受けた。
でも起きていてもいなくてもそんなことはお構いなく足や手をさするようにした。
こうしてあげると患者は気持ちがよく、少し楽になるということを学んだからだ。
それに寝ているように見えても起きている場合もある。
だるくて話す気になれないだけなのかもしれない。
だから話もするようにしている。

「ひまわり…植えといたよ。」
「…。」
返事はない。
あたしは手をさすりながらカンナを見る。
少しやせてしまっただろうか…。
相変わらず肌は透き通るほど白い。
「知ってる人に聞いたんだけどね。ひまわりって少しぐらい土が悪くてもキレイに咲いてくれるらしいよ。」
カンナは何も話さない。
寝ているのだろうか…
起きているのだろうか…
でもあたしは話続ける。
きっとカンナには聞こえてるはずだから。
「この間、メールで教えてくれたディズニーランドの話だけどね…。」
聞こえているはず…
聞こえているはずだから…起きて返事をしてほしい。
元気になって、外を思いきり駆け回ってほしい。

「三池さん。」
「はい。」
ナースステーションで師長に呼ばれたので、あたしはまた何かしでかしてしまったのかと一瞬ドキリとした。
少し背筋が伸びる…。
なにせ、最近はカンナのことが気になってなんとなく気の抜いた仕事をしていたからである。
「あなた、最近偉いわね。」
「は、はい…。」
怒られるのかと思いきや褒められてしまった。
「あなたが最初にここに来たときは感情というか…優しさみたいなものがないように感じたのよね。でも最近のあなたはちょっと違うわ。」
「そ、そうですか?」
「そうよ。患者さんに接するときの笑顔がとてもよくなったわよ。」
「あ…ありがとうございます。」
思わずあたしは笑顔で答えた。
すると師長はあたしに言った。
「きっとあなたのその表情をみて気持ちが楽になっている患者さんがたくさんいるわよ。その調子でお互いがんばりましょう。」
そういうと師長は職務に戻っていった。
あたしはなぜ褒められたのかもよく分からなかったが、それでも褒められたことが嬉しくてカンナのことで重くなっていた気持ちがすーっと軽くなっていくのが分かった。

気分が良かったのであたしは仕事が終わった後、「ふるだぬき」に行くことにした。

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