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化け猫の憂鬱
悲しい
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「それは良かったわね。」
アキさんはあたしに言った。
やっぱり誰かに褒められるのは嬉しいものだ。
あたしは気持ちよく仕事後のビールを楽しんだ。
「心配してたのよ。アヤコちゃん、最近ちょっと元気なかったから。」
「すみません。でも…もう大丈夫って、しばらくは言えそうにもありません。」
あたしの脳裏にベッドで眠るカンナの顔をよぎった。
最近、眠っていることが多くなった…。いや…正確には眠っていないのだ。目を開けることさえつらいから、周りからは眠っているように見えるだけなのだ。
彼女との別れが迫っていることはあたしにはよく分かる。
それを考えるとあたしは元気がでないのだ。
「やっぱり本当だったのかしら?」
「え?なんですか?」
アキさんが意味深なことを言うのであたしはすごく気になった。
「本来、化け族には関係ないことなんだけど…ネコと魔女の関係って知ってる?」
「魔女?」
「そう。」
アキさんは少し話しづらそうだった。
そんな空気の重さを振り払うように空気の読めない男が店に入ってきた。
「よう!ネコむすめ。ちったあ元気になったか?!」
平九郎だ。
こいつはいつも肝心な時に邪魔してくる。
「何よ。バカ犬。めずらしく今日は人間の姿してきたわね。」
平九郎はどちらかというと犬の姿の方が多い。
なぜ犬の姿の方が多いのか…あたしは本人に聞いたことがある。
「ふふん。よくぞ聞いてくれた、ネコむすめ。」
「別にそこまで知りたいわけじゃないけど。」
「いや…聞けよ。」
「えー。じゃあ仕方ないから聞いてやるよ。」
「オレは元はイギリス王家の犬だからな。この姿に誇りを持っているんだ。」
うーん。
王家の犬がこんなに足短いのか?
そしてさらに人間の姿のときは、足の短い小太りの男だ。いつも額に汗をかいている。
お店に入った途端、平九郎は犬の姿になる。
「ここまで来るにはさすがのおいらも人間の姿をするしかないからな。なんせ犬が放し飼いになってたら保健所につかまっちまうからな。」
「つかまっちまえ。」
「相変わらず、憎たらしい奴だな。ま、いいよ。オレは今日は機嫌がいいんだ。女将、生中1つ。」
平九郎はずうずうしくあたしの横に座った。
機嫌のいい理由はおそらく阪神タイガースが勝ったからだろう。聞かなくても分かる。
それにしても…いつみてもユーモラスな体型してるなあ。
足が極端に短く、毛がもこもこ。犬の顔は柴犬みたいな感じ。
「ん?なんだよ。じろじろ見んなよ。」
「見てねえよ。」
「ならいいが…ところでお前。あの子の件はその後どうなったんだ?」
「あの子?カンナのこと?」
「そうだよ。それ以外になにがある。」
「なんであんたに言わなきゃなんないのよ。」
「いや、別に言いたくなきゃいいけどよ。」
「あ、そう。」
あたしはそっぽを向いてビールを飲んだ。
「はい。おまたせ。」
アキさんが平九朗のビールを持ってきて、カウンターにおいた。
平九朗は器用にジョッキをつかんでぐびぐびやっていた。
足の短い犬がジョッキを器用につかんで飲んでいる様はちょっとしたコントのように見えておもしろい。
「ヘイちゃん。アヤコちゃん元気になったみたいで良かったわね。」
アキさんがあたしと平九郎を見て言った。
「ま、そやな。」
「あたしもヘイちゃんも心配してたのよ。何かあったら相談に乗ってあげるからなんでも言いなさいよ。」
アキさんはにっこり笑いながら「これサービスよ。」といってあたしの大好物のサンマのミリン干を焼いて出してくれた。
「ありがとう…。」
なぜかあたしは泣けてきた。
ぽろぽろと涙が頬を伝うのが分かった。
なんでこんなに悲しいの?
生き物はみんないつか寿命が来て死ぬだけじゃない。
カンナはそれが少し早いだけなのに。
カンナ…。
カンナ…。
死なないで。
また元気になって人生を楽しんでよ。
恋も愛も、失恋の痛みも、お酒の味も、素敵な仲間も…あなたは何一つ味わってないのよ。
アキさんはあたしに言った。
やっぱり誰かに褒められるのは嬉しいものだ。
あたしは気持ちよく仕事後のビールを楽しんだ。
「心配してたのよ。アヤコちゃん、最近ちょっと元気なかったから。」
「すみません。でも…もう大丈夫って、しばらくは言えそうにもありません。」
あたしの脳裏にベッドで眠るカンナの顔をよぎった。
最近、眠っていることが多くなった…。いや…正確には眠っていないのだ。目を開けることさえつらいから、周りからは眠っているように見えるだけなのだ。
彼女との別れが迫っていることはあたしにはよく分かる。
それを考えるとあたしは元気がでないのだ。
「やっぱり本当だったのかしら?」
「え?なんですか?」
アキさんが意味深なことを言うのであたしはすごく気になった。
「本来、化け族には関係ないことなんだけど…ネコと魔女の関係って知ってる?」
「魔女?」
「そう。」
アキさんは少し話しづらそうだった。
そんな空気の重さを振り払うように空気の読めない男が店に入ってきた。
「よう!ネコむすめ。ちったあ元気になったか?!」
平九郎だ。
こいつはいつも肝心な時に邪魔してくる。
「何よ。バカ犬。めずらしく今日は人間の姿してきたわね。」
平九郎はどちらかというと犬の姿の方が多い。
なぜ犬の姿の方が多いのか…あたしは本人に聞いたことがある。
「ふふん。よくぞ聞いてくれた、ネコむすめ。」
「別にそこまで知りたいわけじゃないけど。」
「いや…聞けよ。」
「えー。じゃあ仕方ないから聞いてやるよ。」
「オレは元はイギリス王家の犬だからな。この姿に誇りを持っているんだ。」
うーん。
王家の犬がこんなに足短いのか?
そしてさらに人間の姿のときは、足の短い小太りの男だ。いつも額に汗をかいている。
お店に入った途端、平九郎は犬の姿になる。
「ここまで来るにはさすがのおいらも人間の姿をするしかないからな。なんせ犬が放し飼いになってたら保健所につかまっちまうからな。」
「つかまっちまえ。」
「相変わらず、憎たらしい奴だな。ま、いいよ。オレは今日は機嫌がいいんだ。女将、生中1つ。」
平九郎はずうずうしくあたしの横に座った。
機嫌のいい理由はおそらく阪神タイガースが勝ったからだろう。聞かなくても分かる。
それにしても…いつみてもユーモラスな体型してるなあ。
足が極端に短く、毛がもこもこ。犬の顔は柴犬みたいな感じ。
「ん?なんだよ。じろじろ見んなよ。」
「見てねえよ。」
「ならいいが…ところでお前。あの子の件はその後どうなったんだ?」
「あの子?カンナのこと?」
「そうだよ。それ以外になにがある。」
「なんであんたに言わなきゃなんないのよ。」
「いや、別に言いたくなきゃいいけどよ。」
「あ、そう。」
あたしはそっぽを向いてビールを飲んだ。
「はい。おまたせ。」
アキさんが平九朗のビールを持ってきて、カウンターにおいた。
平九朗は器用にジョッキをつかんでぐびぐびやっていた。
足の短い犬がジョッキを器用につかんで飲んでいる様はちょっとしたコントのように見えておもしろい。
「ヘイちゃん。アヤコちゃん元気になったみたいで良かったわね。」
アキさんがあたしと平九郎を見て言った。
「ま、そやな。」
「あたしもヘイちゃんも心配してたのよ。何かあったら相談に乗ってあげるからなんでも言いなさいよ。」
アキさんはにっこり笑いながら「これサービスよ。」といってあたしの大好物のサンマのミリン干を焼いて出してくれた。
「ありがとう…。」
なぜかあたしは泣けてきた。
ぽろぽろと涙が頬を伝うのが分かった。
なんでこんなに悲しいの?
生き物はみんないつか寿命が来て死ぬだけじゃない。
カンナはそれが少し早いだけなのに。
カンナ…。
カンナ…。
死なないで。
また元気になって人生を楽しんでよ。
恋も愛も、失恋の痛みも、お酒の味も、素敵な仲間も…あなたは何一つ味わってないのよ。
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