阪上くんと保田くん

阪上克利

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最後の1年

自分なりに……

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 ようやく結論が出た……
 と思ったら反対された……

 だからやる気がなくなった。
 でも元はそこまで仕事がしたかったわけではない。
 やる気がなくなったのは元からそんなに熱意がなかったからだ。
 やりたいことがない。
 それがこのころのボクだった。

 もう卒業まで時間がない。
 どうすればいいのだろう。

 ボクは自分なりにいろいろ考えた。

 いろいろ考えたのはあくまで『自分なりに』であるからして、今から振り返ってみると、結果的にはたいして何も考えていなかったのだと思う。

 シンプルに考えて……就職するのと進学するのはどちらがいいのか……
 そう考えたとき、どう考えても社会に出るよりは学生をもう少し続けたいという気持ちが強かった。
 結局、就職と言ってもやりたいことはないし、やりたいことまでは行かないまでも自分でも継続して続けられそうな仕事などもない。
 なんとなく仕事はそんなに甘いものではないというのは勘付いていたので、こんな中途半端な自分が適当に就職した会社で続くわけがないような気はしていた。

 かと言って……今更進学と言っても……行けそうな学校など見当たらない。

 どうしようか……
 進路は決めなければならない。

 焦りながら毎日を送っていたボクだったが……

 残念なことに……
 頼みの綱であった保田くんは就職を決めた。
 頼みの綱という表現はおかしいが、保田くんが決まっていなければ大丈夫、という変な安心感がボクにあったことは否めない。



 彼はボクのそんな気持ちなどおかまいなしに川崎の稲田堤にある会社に就職したのである。
 まあ……当たり前の話である。

 ボクはというと……
 とりあえず進路は進学一本にすることを決めた。
 ただ、進学と言ってもやはりどの学校に行けばいいかは分からなかった。

『何がやりたいんだ??』
 親や先生たちはそう言った。

 またその問題か……
 そう思ってウンザリしたことを覚えている。
 やりたいことなどないのだ。
 強いて言えば小説家になりたいのだ。
 でもそんなことは無理なのだから口に出せるわけもない。

 社会に出て仕事なんかしたくないというのがあの時の正直なボクの思いだった。
 だから、最終的な仕事を見据えての進学なんてものもまったく考えられるわけがなかった。

 大学に行ければ一番良かったのだが、高校3年間で全くと言っていいほど勉強をしなかったボクが入れる大学があるわけもない。地方の大学なら可能であるというようなことも聞いたが、そんなことを両親が許すわけがない。

 大体……『進学したい』と言った時も『なんのために?』と執拗に聞いてきた両親なのだ。

 ただこの両親の気持ちは分からないでもない。
 心配には心配だったのだろうとも思う。
 両親にしても子供を社会に送り出すのは初めての経験だったわけだから、分からずに悩んでいたのはボクだけではなかったのかもしれない。

 この問題は実に難しい問題である。
 というのも『やりたいこと』など通常の若者は持っていない。
 持っていたとしても、それが現実的かどうかを見極め、あきらめるか、もしくは無駄と分かりつつもその道を突き進むか……。
 突き進める強さをもった者はごく一部である。
 大抵はあきらめてしまう者が大半で、そのあきらめの中でもうまく妥協できるのが通常の人間である。

 問題はこの妥協がうまくできない人間である。
 ボクはそういうたぐいの人間だった。
 だから『何がやりたいんだ?』と問われると本気で自分がやりたいことを考える。
 それでもやりたいことなど見つかるわけもない。そんな中、妥協して仕事に就きたいとも思わなかった。だから毎日を鬱積うっせきしたストレスを抱えながら過ごしていた。

 職業訓練を行ってくれる大学校という名目の公立の学校を受験してみないかと担任の久保山先生に言われたのは、ちょうど保田くんが就職を決めた1ヶ月後だった。

 卒業まで4ヶ月。
 1994年も残りわずか……
 師走の忙しい時期だったと記憶している。
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