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満月の夜には魚は釣れない
9月15日
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カレンダーは9月15日。
9月になっても暑さはさほど8月と変わらない。
学生時代は、なんでこんなに暑いのに学校が始まるのだろうと思ったものだ。
メバル釣りは今日行く約束だ。
今日はお互いに仕事なのだが、靖男も里奈も早番で少し早めに仕事を終えることができるからちょうどいいと思ったのだ。
釣り具は車にあらかじめ積んでおいて、帰ってからシャワーを浴びて着替えてから靖男を迎えに行けば十分に間に合う。
仕事を終えて、家に着いて着替えをして、準備をする。
いつもは釣りに行く時はもっとワクワクしている。何が釣れるのだろうとか、もしかしたら大物に出会えるかもしれないとか……ちょっと自分に都合のいいことばかりを考えている。そんな時間が実は一番楽しいのかもしれないが、今日はそうではない。
ワクワク……というより緊張する。
靖男にはどうやって切り出せばいいのだろう。
あまり考えなしに話をしてもダメだろう。
どういえば靖男の心に響くだろうか。
付き合って2年。
そろそろ結婚を考えて付き合いたいと里奈は思っている。
でも靖男はどうなのか?
そこのところが知りたい。
靖男の性格からすれば、ただ単に恋愛を楽しみたいだけで付き合っているとは思えない。
彼は優柔不断ではあるが誠実な人間だ。ただその優柔不断さが決断を遅らせるのだ。
物事には必ず決断をしなければいけない時がある。
『まあ……いいか』
頭の中が結婚と恋愛とメバル釣りのことでごちゃごちゃになって、何が何だか分からなくなってきたので里奈はもう考えないことにした。
考えなしに行動するのは里奈の悪い癖なのだが、こればかりは性格なので治しようがないのだ。
それに考えたところで結論が出るものでもない。
考えるよりも身体が先に動く……
考えすぎてなかなか決断できない……
もしかしたら里奈と靖男は真逆の性格なのかもしれない。
軽自動車を運転して約束の場所に行くと時間通りに靖男が待っていた。
彼はどこに行くのも同じ格好だ。
男性にはありがちなのかもしれない。でももう少し自分の外見に気を使ってほしいとも思う。
身に着ける物を変えるだけで、男性も女性も随分変わるのだ。
各言う里奈もそんなに外見に気を配る方ではなかった。
良平と愛依のおかげで里奈は身に着ける物に気を配るようになった。
あの二人との思い出は楽しかったのだが、なんだか不思議な思い出だ。
やたら二人は里奈にいろんなものを薦めてくる。最初の頃はそうだった。
良平も今でこそ平気で女性と話せるようになったが、あの頃は里奈以外の女性とはまともに話せなかった。愛依も恥ずかしがってなかなか良平と話さなかった。
こそばがゆくも甘酸っぱい……そして青臭い思い出だ。
二人は里奈にとっては兄妹みたいなものだ。
二人が結婚するのが嬉しくて仕方ない。
早く結婚式の招待状を受け取りたいものだ。
『よろしくお願いします』
靖男は助手席に座って言った。
『よろしく―』
敬語は気にしない。
彼は人と打ち解けるまで時間がかかるのだ。ただそうだとするとまだ今は結婚の話はしない方がいいのかもしれない。
『仕事早く終わった?』
『はい。まあ残業はほとんどないですね』
『いいなあ。うちは意外と残業多いから疲れるんだよねえ』
『そうなんですか?釣具屋も大変なんですね』
『客商売だからね』
靖男との会話は最初に比べると途切れなくなってきた。
慣れてきたのだろうか。
いや。そのようなことはないだろう。
相変わらず、里奈ばかりが話題を振って、会話の中心であることは変わりがないからだ。
ただ……靖男は無口なようで、こちらが話題を振るとそれを膨らませることができる。最近では会話を終わらせるようなことはなくなってきたように思える。実は豊富な知識量があるのだろう。ただそれを話すタイミングを計りかねているのかもしれない。
彼がコミュニケーションの取り方ががあまり上手くないのは、元からそういうことが苦手な上に仕事で人と話をする機会が少ないからだろう。本人もそんなに人と話したいと思っていない。これも大きな原因なのかもしれない。
9月になっても暑さはさほど8月と変わらない。
学生時代は、なんでこんなに暑いのに学校が始まるのだろうと思ったものだ。
メバル釣りは今日行く約束だ。
今日はお互いに仕事なのだが、靖男も里奈も早番で少し早めに仕事を終えることができるからちょうどいいと思ったのだ。
釣り具は車にあらかじめ積んでおいて、帰ってからシャワーを浴びて着替えてから靖男を迎えに行けば十分に間に合う。
仕事を終えて、家に着いて着替えをして、準備をする。
いつもは釣りに行く時はもっとワクワクしている。何が釣れるのだろうとか、もしかしたら大物に出会えるかもしれないとか……ちょっと自分に都合のいいことばかりを考えている。そんな時間が実は一番楽しいのかもしれないが、今日はそうではない。
ワクワク……というより緊張する。
靖男にはどうやって切り出せばいいのだろう。
あまり考えなしに話をしてもダメだろう。
どういえば靖男の心に響くだろうか。
付き合って2年。
そろそろ結婚を考えて付き合いたいと里奈は思っている。
でも靖男はどうなのか?
そこのところが知りたい。
靖男の性格からすれば、ただ単に恋愛を楽しみたいだけで付き合っているとは思えない。
彼は優柔不断ではあるが誠実な人間だ。ただその優柔不断さが決断を遅らせるのだ。
物事には必ず決断をしなければいけない時がある。
『まあ……いいか』
頭の中が結婚と恋愛とメバル釣りのことでごちゃごちゃになって、何が何だか分からなくなってきたので里奈はもう考えないことにした。
考えなしに行動するのは里奈の悪い癖なのだが、こればかりは性格なので治しようがないのだ。
それに考えたところで結論が出るものでもない。
考えるよりも身体が先に動く……
考えすぎてなかなか決断できない……
もしかしたら里奈と靖男は真逆の性格なのかもしれない。
軽自動車を運転して約束の場所に行くと時間通りに靖男が待っていた。
彼はどこに行くのも同じ格好だ。
男性にはありがちなのかもしれない。でももう少し自分の外見に気を使ってほしいとも思う。
身に着ける物を変えるだけで、男性も女性も随分変わるのだ。
各言う里奈もそんなに外見に気を配る方ではなかった。
良平と愛依のおかげで里奈は身に着ける物に気を配るようになった。
あの二人との思い出は楽しかったのだが、なんだか不思議な思い出だ。
やたら二人は里奈にいろんなものを薦めてくる。最初の頃はそうだった。
良平も今でこそ平気で女性と話せるようになったが、あの頃は里奈以外の女性とはまともに話せなかった。愛依も恥ずかしがってなかなか良平と話さなかった。
こそばがゆくも甘酸っぱい……そして青臭い思い出だ。
二人は里奈にとっては兄妹みたいなものだ。
二人が結婚するのが嬉しくて仕方ない。
早く結婚式の招待状を受け取りたいものだ。
『よろしくお願いします』
靖男は助手席に座って言った。
『よろしく―』
敬語は気にしない。
彼は人と打ち解けるまで時間がかかるのだ。ただそうだとするとまだ今は結婚の話はしない方がいいのかもしれない。
『仕事早く終わった?』
『はい。まあ残業はほとんどないですね』
『いいなあ。うちは意外と残業多いから疲れるんだよねえ』
『そうなんですか?釣具屋も大変なんですね』
『客商売だからね』
靖男との会話は最初に比べると途切れなくなってきた。
慣れてきたのだろうか。
いや。そのようなことはないだろう。
相変わらず、里奈ばかりが話題を振って、会話の中心であることは変わりがないからだ。
ただ……靖男は無口なようで、こちらが話題を振るとそれを膨らませることができる。最近では会話を終わらせるようなことはなくなってきたように思える。実は豊富な知識量があるのだろう。ただそれを話すタイミングを計りかねているのかもしれない。
彼がコミュニケーションの取り方ががあまり上手くないのは、元からそういうことが苦手な上に仕事で人と話をする機会が少ないからだろう。本人もそんなに人と話したいと思っていない。これも大きな原因なのかもしれない。
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