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満月の夜には魚は釣れない
堤防の上で……
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なんでこんなに悲しいのか分からないけど涙が止まらない。
ここ数か月……
一人で真剣に悩んでいたのがバカみたいだと思えたからだろうか。
人はどうして恋をするの?
好きになった人と恋人になるのはなんで?
ただ単に恋がしたいから?
遊びたいから?
里奈はそうは思わない。
恋人を作るのは将来の伴侶を探すためだと思う。その考え方は人それぞれで、多様性があり、いろんな考えがあって構わないと思うが、少なくとも里奈は結婚を前提に恋人を作ると決めている。
もし結婚する気がないのなら、恋人など作らない。
一人でなんでもできるというのなら、恋人などいらないではないか。
好きになるきっかけは様々だろう。
顔がかっこよかったとか、気遣いができる人だったとか……。
里奈の場合はどうだっただろうか?
靖男は無口な人だと最初は感じた。でも時折話す、たどたどしい一言が何か面白いし、どことなく誠実さも垣間見えた。外見はひょろっとして色白でもやしみたいな彼だけど、外見なんか関係ない。
何も言わないしほっといたらずっと話さないでいるような人だけど、あの誠実さは人に安心感を与える。だから彼を好きになった。
恋人となった今となってはそれだけでなくもっと相手のことを知りたい。
彼にとって里奈は必要な存在なのだろうか?
そして自分にとって靖男は必要な人なのだろうか?
恋はとてもいいものだ。
人を好きになるのは素晴らしい。
付き合うようになって、一生を共にするのは少し違うと感じて……結果、結婚には至らず友人に戻るということもあるだろう。
逆に付き合っていくうちにお互いの好きなところがたくさん見えてきて、同時に嫌なところも見えてきて、話をしているうちに相手に対する好きな気持ちも嫌な気持ちもすべてひっくるめてゆっくりと愛を育み、相手が自分にとってかけがえのない存在になることもあるのではないだろうか。
ただ好きになるだけで終わるような恋愛ならしたくない。
靖男の良いところも嫌なところもすべて分かったうえで好きでいたい。
鈍いところ。
決断できないところ。
女心に疎いところ。
でも優しいところ。
誠実なところ。
そして実は無口なようでとても面白いところ。
里奈は涙を拭いて靖男を見た。
『あ……あの……なんかすみません。なんかよく分からないんですけど……たぶんボクがいけないんだと思います』
あからさまに動揺しながら靖男は言った。
真剣だけど何も分かっていない顔。
きょとんとしているもやしみたいな顔。
でもなんとなく自分が悪いと思って謝ってくるところが誠実だ。
『ぷっ』里奈は思わず吹き出してしまった。
泣いたり笑ったり……忙しいことだ。
『あの……』
『ごめんね、泣いたりなんかして』
『いや……その……』
『保高くんが結婚考えてないって言うから……あたしのことは恋人だと思ってないのかな?って……』
相変わらずストレートな物言いだ。でも里奈にはこれしかできない。オブラートに包んで物を言うことなど今までだってできなかったし、考えてみれば靖男のように鈍い人にはこれぐらいストレートに言ってちょうどいいのだ。
『あ。すみません。なんかそうでしたね。あの……ボク……今までこういう経験したことないんでよく分からないんですよ』
『こういう経験?』
『はい。女性と二人きりで遊びに行ったりとか、橘さんと出会うまで一回もなかったんでどうしていいか分からなくて』
『そういうのって答えなんかないよ』
『そう……なんですか??』
『そうだよ。女子だっていろいろだからね』
『そうなんですね』
『でも……『最近変わったことがある?』って恋人から聞かれたら『可愛い彼女ができたよ』ぐらいのことは言わないとダメだよ』
『ははは。すみません。つぼの話なんかして』
二人は誰もいない堤防でしばらく笑った。
月の光が優しく二人を包んだ。
まるで不思議な力が作用して、時間がゆったりと流れていくようだった。
ここ数か月……
一人で真剣に悩んでいたのがバカみたいだと思えたからだろうか。
人はどうして恋をするの?
好きになった人と恋人になるのはなんで?
ただ単に恋がしたいから?
遊びたいから?
里奈はそうは思わない。
恋人を作るのは将来の伴侶を探すためだと思う。その考え方は人それぞれで、多様性があり、いろんな考えがあって構わないと思うが、少なくとも里奈は結婚を前提に恋人を作ると決めている。
もし結婚する気がないのなら、恋人など作らない。
一人でなんでもできるというのなら、恋人などいらないではないか。
好きになるきっかけは様々だろう。
顔がかっこよかったとか、気遣いができる人だったとか……。
里奈の場合はどうだっただろうか?
靖男は無口な人だと最初は感じた。でも時折話す、たどたどしい一言が何か面白いし、どことなく誠実さも垣間見えた。外見はひょろっとして色白でもやしみたいな彼だけど、外見なんか関係ない。
何も言わないしほっといたらずっと話さないでいるような人だけど、あの誠実さは人に安心感を与える。だから彼を好きになった。
恋人となった今となってはそれだけでなくもっと相手のことを知りたい。
彼にとって里奈は必要な存在なのだろうか?
そして自分にとって靖男は必要な人なのだろうか?
恋はとてもいいものだ。
人を好きになるのは素晴らしい。
付き合うようになって、一生を共にするのは少し違うと感じて……結果、結婚には至らず友人に戻るということもあるだろう。
逆に付き合っていくうちにお互いの好きなところがたくさん見えてきて、同時に嫌なところも見えてきて、話をしているうちに相手に対する好きな気持ちも嫌な気持ちもすべてひっくるめてゆっくりと愛を育み、相手が自分にとってかけがえのない存在になることもあるのではないだろうか。
ただ好きになるだけで終わるような恋愛ならしたくない。
靖男の良いところも嫌なところもすべて分かったうえで好きでいたい。
鈍いところ。
決断できないところ。
女心に疎いところ。
でも優しいところ。
誠実なところ。
そして実は無口なようでとても面白いところ。
里奈は涙を拭いて靖男を見た。
『あ……あの……なんかすみません。なんかよく分からないんですけど……たぶんボクがいけないんだと思います』
あからさまに動揺しながら靖男は言った。
真剣だけど何も分かっていない顔。
きょとんとしているもやしみたいな顔。
でもなんとなく自分が悪いと思って謝ってくるところが誠実だ。
『ぷっ』里奈は思わず吹き出してしまった。
泣いたり笑ったり……忙しいことだ。
『あの……』
『ごめんね、泣いたりなんかして』
『いや……その……』
『保高くんが結婚考えてないって言うから……あたしのことは恋人だと思ってないのかな?って……』
相変わらずストレートな物言いだ。でも里奈にはこれしかできない。オブラートに包んで物を言うことなど今までだってできなかったし、考えてみれば靖男のように鈍い人にはこれぐらいストレートに言ってちょうどいいのだ。
『あ。すみません。なんかそうでしたね。あの……ボク……今までこういう経験したことないんでよく分からないんですよ』
『こういう経験?』
『はい。女性と二人きりで遊びに行ったりとか、橘さんと出会うまで一回もなかったんでどうしていいか分からなくて』
『そういうのって答えなんかないよ』
『そう……なんですか??』
『そうだよ。女子だっていろいろだからね』
『そうなんですね』
『でも……『最近変わったことがある?』って恋人から聞かれたら『可愛い彼女ができたよ』ぐらいのことは言わないとダメだよ』
『ははは。すみません。つぼの話なんかして』
二人は誰もいない堤防でしばらく笑った。
月の光が優しく二人を包んだ。
まるで不思議な力が作用して、時間がゆったりと流れていくようだった。
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