24 / 28
満月の夜には魚は釣れない
キラキラ光る
しおりを挟む
堤防を行ったり来たり……
ランアンドガンしながら釣り歩くが、魚信は全く来ない。
中層から表層を狙うメバル釣りだけど、もしかしたらと思い、海底近くまでルアーを落とし込んでもみても何も反応がない。魚がいないのだろうか。それとも潮が悪く、魚がエサを追いかけない状態……いわゆる活性していない状態なのだろうか。
『釣れないね……』
『そうですね』
『メバルって年中釣れる魚なんだけどね……おかしいなあ』
『まあ、そんな日もありますよ』
『満月がいけないのかな??』
『満月?月となんか関係があるんですか?』
『あたしが実家にいた頃に地元の釣り人に聞いた話なんだけど……満月の夜は月の光に魚が警戒して何も釣れないという話があるのよ』
『へええ』
『メバルは警戒心が強いからなあ』
里奈は暗い海面に映る月の光を眺めた。
都会の海は決して真っ暗ではない。
街の明かりと満月の明かりで、足場のいい堤防なら歩くのにも苦労しない。
伊豆の田舎とは大違いだ。夜になったら街灯すらない伊豆では、ライトを持っていないと普通に散歩もできない。夜の闇に包まれるというのはああいう感じのことを言うのだろう。
生まれて大人になるまで伊豆で生活していた里奈は大学に通うようになって横浜に出てきた時、都会の夜の明るさにビックリした。
夜でもこんなにも明るいんだ……と感動した。
でも今では実家の夜の闇に包まれるような暗さが懐かしい。
『月……綺麗ですね』
靖男は竿を持って何もせず夜空を見上げて言った。
『そうだね……てゆうか保高くん、案外ロマンチストなところあるんだね』
『いや……まあ……なんというか……』
まだ……打ち解けていないのは里奈も同じなのかもしれない。
そんなことが頭をよぎったのは里奈が靖男のことを『保高くん』と呼んでいることに気づいたからだ。
でも今更『靖男くん』とは呼べない。それはなんとなく不自然だし、それにどう呼ぼうと自分たちの関係が大きく変わることもないからだ。
『ねえ』不意に里奈は言った。
自分でも言おうと思って口についた言葉ではないので驚いている。
『これからどうしようか?』
『これから……ですか?明日も仕事ですし、そろそろ帰りますか?』
『いや、そういうことじゃなくて……』
『そういうことじゃないんですか?じゃあどういうことですか?』
鈍いなあ……
里奈は思った。もちろん口には出さない。
『保高くんって結婚したいと思うことってある?』
自分でもストレートすぎるな、と思う。何も考えずにまっすぐに話をしてしまう癖は性格だから直しようがないのだ。
『結婚ですか?う――ん……特に考えたこともないですねえ』
『え?考えたことないの??』
『はい。いや……なんでですか?』
『いや……だって……』
『今は毎日の生活で精一杯ですからね』
『そ……そうなの?』
『仕事も忙しいですしね』
毎日の生活が忙しいのは分かる。
それは里奈だって同じだ。
でもそんなことを言ったらいつになったら結婚のことを考えればいいのだ。
『あの……あたしと……』
付き合っているのはなんで?
と言いたかったのだけど途中で言葉が途切れてしまった。
気が付いたら涙が止まらない。
悲しくて悲しくて言葉が出てこない。
『だ……大丈夫ですか??』
靖男は心底、何が何だか分からないような顔をして呑気な事を言ってきている。
あんたが原因だよ。
結婚する気がないならなんで付き合ってるの?
あたしのことは恋人とは思っていないわけ??
『大丈夫なわけないじゃん!』
竿を堤防において、里奈はその場にぺたんと座り込んだ。
『いや……あの……』
この後に及んでも、何も分かっていない靖男に、里奈は腹を立てている。……と同時に悲しい気持ちが押し寄せてくる。涙が止まらない。
『結婚する気がないならどうしてあたしたち付き合ってるの?』
絞り出すような声で里奈は言った。
月の光が海面に反射してキラキラと輝いている。
ランアンドガンしながら釣り歩くが、魚信は全く来ない。
中層から表層を狙うメバル釣りだけど、もしかしたらと思い、海底近くまでルアーを落とし込んでもみても何も反応がない。魚がいないのだろうか。それとも潮が悪く、魚がエサを追いかけない状態……いわゆる活性していない状態なのだろうか。
『釣れないね……』
『そうですね』
『メバルって年中釣れる魚なんだけどね……おかしいなあ』
『まあ、そんな日もありますよ』
『満月がいけないのかな??』
『満月?月となんか関係があるんですか?』
『あたしが実家にいた頃に地元の釣り人に聞いた話なんだけど……満月の夜は月の光に魚が警戒して何も釣れないという話があるのよ』
『へええ』
『メバルは警戒心が強いからなあ』
里奈は暗い海面に映る月の光を眺めた。
都会の海は決して真っ暗ではない。
街の明かりと満月の明かりで、足場のいい堤防なら歩くのにも苦労しない。
伊豆の田舎とは大違いだ。夜になったら街灯すらない伊豆では、ライトを持っていないと普通に散歩もできない。夜の闇に包まれるというのはああいう感じのことを言うのだろう。
生まれて大人になるまで伊豆で生活していた里奈は大学に通うようになって横浜に出てきた時、都会の夜の明るさにビックリした。
夜でもこんなにも明るいんだ……と感動した。
でも今では実家の夜の闇に包まれるような暗さが懐かしい。
『月……綺麗ですね』
靖男は竿を持って何もせず夜空を見上げて言った。
『そうだね……てゆうか保高くん、案外ロマンチストなところあるんだね』
『いや……まあ……なんというか……』
まだ……打ち解けていないのは里奈も同じなのかもしれない。
そんなことが頭をよぎったのは里奈が靖男のことを『保高くん』と呼んでいることに気づいたからだ。
でも今更『靖男くん』とは呼べない。それはなんとなく不自然だし、それにどう呼ぼうと自分たちの関係が大きく変わることもないからだ。
『ねえ』不意に里奈は言った。
自分でも言おうと思って口についた言葉ではないので驚いている。
『これからどうしようか?』
『これから……ですか?明日も仕事ですし、そろそろ帰りますか?』
『いや、そういうことじゃなくて……』
『そういうことじゃないんですか?じゃあどういうことですか?』
鈍いなあ……
里奈は思った。もちろん口には出さない。
『保高くんって結婚したいと思うことってある?』
自分でもストレートすぎるな、と思う。何も考えずにまっすぐに話をしてしまう癖は性格だから直しようがないのだ。
『結婚ですか?う――ん……特に考えたこともないですねえ』
『え?考えたことないの??』
『はい。いや……なんでですか?』
『いや……だって……』
『今は毎日の生活で精一杯ですからね』
『そ……そうなの?』
『仕事も忙しいですしね』
毎日の生活が忙しいのは分かる。
それは里奈だって同じだ。
でもそんなことを言ったらいつになったら結婚のことを考えればいいのだ。
『あの……あたしと……』
付き合っているのはなんで?
と言いたかったのだけど途中で言葉が途切れてしまった。
気が付いたら涙が止まらない。
悲しくて悲しくて言葉が出てこない。
『だ……大丈夫ですか??』
靖男は心底、何が何だか分からないような顔をして呑気な事を言ってきている。
あんたが原因だよ。
結婚する気がないならなんで付き合ってるの?
あたしのことは恋人とは思っていないわけ??
『大丈夫なわけないじゃん!』
竿を堤防において、里奈はその場にぺたんと座り込んだ。
『いや……あの……』
この後に及んでも、何も分かっていない靖男に、里奈は腹を立てている。……と同時に悲しい気持ちが押し寄せてくる。涙が止まらない。
『結婚する気がないならどうしてあたしたち付き合ってるの?』
絞り出すような声で里奈は言った。
月の光が海面に反射してキラキラと輝いている。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる