隣の二階堂さん

阪上克利

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美味しいことは栄養よりも大事なのか否か

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 隣の二階堂さんには変な癖がある。
 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。
 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。
 ちょっと変わっている二階堂さんは実は子供や動物が大好きだ。

 彼女が何かに煮詰まってきている時にお茶に誘って話を聞くのはとても楽しい。そんな時間をあたしも夕凪ゆうなも楽しみにしている。

 今日は早番の仕事だったので17時ちょっと過ぎにあたしたちは帰ってきた。
 お隣からはいい匂いがした。何を作っているのだろうか……

 どんどんどんどん…

 あたしと夕凪ゆうなは顔を見合わせる。
 やっぱり壁を叩く音がする。
 あたしは夕凪ゆうなに言った。
 『お姉ちゃん、呼んできてくれる?甘いものでも食べましょうって。』


 --------------


 車の免許の更新があって会社を休んだので午前中はゆっくり朝の情報番組などを見てみた。
 けっこうこの手の番組は好きである。
 普段は会社に行っていて見れないこういう番組を午前中に少し濃いめのコーヒーを飲みながらみるのはなかなか楽しい。

 大抵……。
 朝の情報番組というのは主婦向けに作られているから、料理とか掃除とかのネタが多い。
 今日はたまたま料理のネタだった。
 あたしは自宅で独り呑みするのが好きだから、料理の情報はけっこう敏感に仕入れていたりする。
 こういう情報を知っていると美味しい料理に出会えるし、晩酌もいつもの倍以上楽しくなったりもする。

 今日はキャベツの料理をやっていた。

 そんなことを思い出しながら、今は夕方。
 朝の情報番組でやっていた簡単ロールキャベツを食べようと思い、実はキャベツを買ってきた。

 時間は17時。
 お隣は帰ってきていない。
 料理ができる頃には帰ってくるだろうか。
 少したくさん作っておすそ分けしよう。

 キャベツの葉っぱを剥きながら朝の情報番組で出ていた栄養士の言葉を思い出す。
 『外側の葉っぱ。皆さん捨ててしまいがちなんですけどここに栄養がたくさんあるんです』

 確かに外側の葉っぱには栄養がたくさんあるのだろう。
 なんだっけ。
 ビタミンとなんとかが豊富に含まれているから、身体にいいとか悪いとか……。

 いや。悪くはないか……。

 お鍋の中でロールキャベツを弱火で煮込む。
 いい匂いがしてきた。
 これで少しの時間、煮込めば出来上がりだ。

 それにしても……栄養を度外視するならばキャベツは真ん中の柔らかいところが美味しい。
 基本的に外側の葉っぱは固いし、ちょっと青臭いからあたしは食べない。

 栄養があるって言われてもねえ……。
 美味しくないものは食べたくないのだよ。
 分かるかな……。
 分からんかな……。

 同じことが玉ねぎにも言えている。
 さらし玉ねぎなんかも栄養のことをなんだかんだ言われる。
 あれは冷たい水に薄くスライスした玉ねぎをさらしておくから辛さが適度に消えて美味しいのだ。
 栄養が水に溶けだすから、さらすのは良くないとか言う人がいるけど……

 辛いじゃん。

 栄養のことだけを考えるのなら、なんかのサプリだけで十分だ。
 美味しく食べて栄養もとるというところに食べる意味があるのではないかとあたしは思う。

 うーーん。
 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。

 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。
 我に返ってお鍋をみたら、ロールキャベツはいい感じで出来上がっていた。

 よし。持って行ってあげよう。
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