青く澄み渡っている雲一つない空の下に住んでいるボクたちの何もないような日々

阪上克利

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高齢者の一人暮らしを支えるには腹を括る必要があるのだ。

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『どうやらお酒を呑んでいるようなんですよ』

 深刻な声で話す病院の看護師。
 対象者はアルコール依存症の高齢者。
 自宅で一人暮らし。

 入院歴があり、現在は自宅に帰ってきている人で、介護保険に関しては歩行が不安定なので歩行器の利用と、在宅生活でお酒を呑まないように通所介護デイサービスを利用している。

 基本的にこういう人のケアプランはお酒から本人を離すというのがメインになる。
 もちろん飲まないのが一番いいのだけど、自宅で一人でいる以上はもうある程度は仕方ない話なのだ。
 だからこちらとしてはお酒を呑んでいることなど百も承知なのである。

『そうでしょうね……』
『これは問題なのでどうにかならないんでしょうかね?』

 大体、こういう問題が生じた時に電話をしてきた人は必ずと言っていいほど『どうにかならないのか?』と言う。
 ケアマネジャーは万能ではないのだ。
 アルコール依存症の人を誰もいない自宅に帰しておいて『お酒を呑んでるからどうにかしてほしい』と言われてもそれは無理な話である。

『いや、どうにか……と言われましてもどうにもならないですね』
『でもこのままじゃダメでしょう』
『ダメですけど、家に一人にしてしまうとどうしても難しいんじゃないでしょうかね』
『まあ、そうですけど……通所介護を使うとか方法があるんじゃないでしょうか』
『もう使ってますよ』
『毎日ですか?』
 病院の看護師はこれだから困る。
 介護保険には支給限度額という月に仕える上限の単位数があるのだ。
 毎日など行けるわけがない。
『区分支給限度額の関係で毎日は無理ですね』
『でも家に一人にしておくと呑んじゃいますからなんとかしていただかないと』

 これはボクの持論なので、もしかしたら違うと言われるかもしれないが……

 アルコール依存症の人にお酒を断たせるのは、ケアマネジャーの仕事ではないと思っている。
 もちろん、呑ませないように努力はしなくてはならない。
 だけど、一人暮らしの自宅に帰ってきている以上は、100%は無理なのだ。
 だからある程度は仕方ないとこちらも腹を括るしかないのだ。

『なんとかするなら入院させるしかないですよ』

 大体、こういう看護師は入院という言葉を出すともごもごと何かを言ってこちらを嫌な気分にさせつつ引き下がる。
 申し訳ないが、アルコール依存の人をお酒から脱却させるためには一人暮らしの家に帰してはいけないのだ。
 その割り切りができないのなら、在宅で診るという考えは捨てた方がいい。

 同様のことは他のことでもある。
 知らない人は高齢者の問題行動に対して『どうにかしないと……』と騒ぎ立てるが、高齢者が一人で在宅生活をするということはある程度の問題には目をつぶるということが必要不可欠なのである。

 なぜ、それが分からないのだろうか……。
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