青く澄み渡っている雲一つない空の下に住んでいるボクたちの何もないような日々

阪上克利

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理不尽な何か

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 ああ……もうやだ。
 仕事辞めよう。

 社会に出て何度も思ったこの言葉。
 思ったことはあっても実行した人はボクの世代では少ないかもしれない。
 今の若い子はどうなのだろうか。

 高校を卒業して専門学校に1年通い、ボクは電気の仕事に就いた。
 工業高校を卒業し、専門学校も電気工事科を卒業しているのだから電気関係の仕事に就くのは当然のように思えるが、当の本人でもあるボクはそんなに乗り気ではなかった。
 なぜかと言うと、学校で学んだ知識が社会に出て通用するとはとても思えなかったからだ。
 結局、会社に就職して分からないことがあって教わらなければならないのだけど……そのたびに理不尽に怒られるのは嫌だったのだ。

 世の中、理不尽に怒られることは多い。
 実は社会に出る前でも理不尽に怒られることはある。
 例えば体育会系の部活動をやっていれば、先輩や先生、または監督から理不尽なことで怒られることもあるだろう。
 完璧な人間などいないのだから『教える』という分野をあまりうまくできずに、つい分からないことに対してイライラしてしまうことはよくある話だ。
 親が子供に教える時でさえ『なんでできないんだ?!』などと自分の子供に言ってしまうのだから、他人でもある指導者がこの『教える』という分野でイライラして、当たり散らしてしまうということは、大なり小なりどうしても避けては通れないのかもしれない。

 理不尽に怒られるのが嫌で、ボクは人の顔色ばかり見ていた。
 この歳になって初めて分かったのだけど、実は仕事というものは失敗して覚えていくことの方が多い。
 失敗しながら……
 そして同じ失敗を繰り返さないように、自分なりに工夫しながら仕事することによって、一人前になっていくのだ。

 だから若い頃のボクのように怒られるのが嫌で、失敗を恐れながら仕事をしているようでは何もものにはならないのだ。

 怒られるのが嫌で何もしなければ、それはそれで『なんでやらないんだ』と怒られる。
 自分から工夫して仕事をしようとして、失敗すると『なんで聞かないんだ』と怒られる。
 怒られると頭の中はパニックになるから何をどうすればいいかなんて頭には入ってこない。
 だからいくら怒られてもものにはならない。
 結果……
 同じ失敗を繰り返してしまうのだ。

 仕事に対して指摘されるのが嫌なのではない。
 感情的に怒られるのが嫌なのだ。

 仕事を辞めたいと思う気持ちにはいろんな要因があるのだけど、大抵は人間関係で、職場の人間で苦手な人がいると言うのが大半だった。

『そのぐらい我慢した方がいいよ』

 そんなふうによく言われた。
 だけど、簡単に『そのぐらい』というが当人にとっては山よりも大きな問題なのである。
 最近では新人をかなりソフトに扱ってくれる。
 若い子は何かあればすぐに辞めてしまうからだ。
 でも若い頃、『すぐに辞めて』いたボクからすれば彼らの気持ちがよく分かる。

 理不尽な何かを押し付けられるのはかなり精神的にしんどいのだ。

 それでもってボクの体験から言えば、その理不尽な何かを押し付けるようなものは会社によってはまったくないところもあるのだ。

『理不尽な何か』と言ったが、それは人によって違う。
 同じことでも人によって感じ方が違うように、理不尽だと感じる何かも人によって違うのだ。
 そして『理不尽な何か』は転職先にはないこともある。
 だけど不思議なことに、前の職場で感じていた『理不尽な何か』はないが新たな『理不尽な何か』が現れることがある。

 すると仕事が嫌になる。

 こうやってボクは転職を繰り返した。
 結局、どうなったのか。
 まあ、ちゃんと仕事はできている。
『理不尽な何か』を最近は感じなくなってきた。
 それはボク自身が以前なら我慢できなかった『理不尽な何か』に対して、耐性がついたということもある。それなりに成長したということだろう。

 ただ……
 それだけではない。

 今までの経験から自分が仕事を嫌になる『理不尽な何か』が具体的になにかを見極めることができるようになったのである。見極めることができれば対処もそれなりにできるようになる。

 何度も転職を繰り返してはいけない……みたいなことを言う人がいるが、それは間違いだ。
 自分に合う職場とは何かということを常に考え続けて、転職を続ける。
 そんな生き方もアリではないかと思う。

 みんな、ガンバレ!!
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