書庫『宛先のない手紙』

かわいいひ孫の孫たちへ。

どうじゃ、そっちは元気にしてるかの？

こっちは最近になって、とんと忙しくなっての。



なんでも、自主隔離とやらが影響しているらしいのじゃ。

これまではおむすび追いかけていればよかったものを、ここのところ、得点とかいうものに振り回されてな。


「ステイ・ホーム」
とかいうんじゃろ？
まるで、犬を躾しつけるように、家にいなさい、と言われているそうな。

かわいそうじゃの。



だがそれがいかんかった。

家にいれば、飽きてくる。

飽きてくれば、何かしたくなる。

でも家にいなけりゃならんから、じゃ、ゲームなどを。
となって、ゲーム需要がぐんと伸びた。

そのせいで、コンテンツとやらが足りなくなって、わしまで駆り出されたというわけじゃ。


ゲームが始まると、わしはいきなり、おむすびを追いかけされる。
何回も、何回も。

難儀なもんじゃ。

画面を見ている子どもたちは、よくもまあ、おにぎりを追いかけるだけの姿を見て喜べるもんじゃと感心する。

それでもわしは毎日毎日、おむすびを追いかけ続けなければならんのじゃ。




気に食わんことがひとつある。


かつて、頭をたたいて遊んでおったモグラが、わしのゲームを仕切っとるらしい。

なんでも「今度はオレが遊ばせてもらうぜ」とほざいているらしい。


世の中、変わっちまったもんだ。



・・・・・。

というわけで、爺は元気にやっておる。

また手紙書くでの。

おまえさんがたも達者でな。



おむすびころりんの爺より