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プロローグ
物語の序章
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魔法が謳歌する世界。人々はこの世界を魔星と呼ぶ。魔星は魔法の源となる原石を産み出す星だ。その原石は宝石と呼ばれ、小さな欠片でも人々の生活を大いに潤す力を持っている。
そのため宝石は体内に魔力を持たない人間でさえ魔法を使うことができ、その利用価値は人々の生活から軍事利用まで幅広く使われていた。それゆえに、太古の昔には宝石を巡って戦争が起こった。
小国で成り立っていた魔星は戦争の渦に呑まれ、最終的には一つの大国にまとまった。今では一つの大国が世界を納めているため宝石の独占はなく、静かで平和な世界へと落ち着いている。
これは、そんな魔星に住まう一人の天才魔法少年と、彼によって作られた魔法の人形との友情物語である。
◆◆◆◆◆
分厚い本が部屋一面に隙間なく埋まっている空間の中心で、一人の少年が薄ら笑いを浮かべて座っていた。彼の回りには赤い色で魔方陣と文字が描かれ、その中心には一つの人形が置かれている。
「そなたに生きるための条件を出す。一つ、そなたはいついかなるときでも我の味方であること。一つ、そなたの命は我の命の半分であること。一つ、我が命には背かぬこと。以上の三つがそなたの生きる条件である」
少年は指先から血を一滴、人形へと滴らせる。それを吸った人形が淡く光り出したかと思うと、一瞬にして眩く激しい光へと変化した。その光は少年にも降り注ぐ。
「そなたに名を与える。この名をもって、そなたは人となる。目覚めよ、そなたの名はウィズ」
彼が名前を呼ぶと、人形は人一倍輝き始めた。その光が強くなればなるほど、少年の顔には汗が浮かんでいる。しかし、その光が弱くなってくると、人形があった場所には青年が座っていた。
人形と同じ髪色に、同じ服装。閉じられた瞼が開かれると、そこには清んだ蒼色の瞳が現れた。
「おはようございます、ご主人様」
「うん、おはよう。でも、ご主人様って呼ばれたら友達っぽくないなぁ。僕のことはシリウス。そう呼んでよ」
「分かりました。それでは、シリウス様とお呼びいたします」
「うーん……まぁ、今はそれでいいや。よろしく、ウィズ」
「はい、よろしくお願いいたします、シリウス様」
シリウスと名乗った少年はニッコリと笑い、ウィズは平坦な表情のまま差し出された彼の手を握った。
彼らは本棚に囲まれた地下の部屋から出ていくと、ダイニングへと入る。
「ここがキッチンだよ。好きに使っていいよ」
「それでは、シリウス様のお世話をさせていただきます。食べたい物などあればお申し付けください」
「え、人形だったのに料理なんてできるの?」
「やったことはございませんが、シリウス様のお力が非常に強く、ある程度の能力もついたものかと。早速、なにかをお作りしましょうか?」
「そうだね~。それじゃ、パニーニを作ってくれるかい? ちょっと小腹空いちゃったし、夕飯にしよう」
「かしこまりました」
早速夕食作りへと入ったウィズの姿が見れる位置のソファーに座り、シリウスは彼を見つめる。
今まで一人だった空間に新しい存在がある。そのことが嬉しいのか、シリウスは夕食を作るウィズをずっと見ていた。
「ねぇ、ウィズは僕のこと、どれだけ理解しているの?」
「シリウス様の情報は、魔力とともに送られてきた一部しかございません。たとえば、ご両親がいらっしゃらないことやこの世に始まって以来の天才魔法使いであられること。大まかな情報はインプットされております」
「へぇ~。そこまで考えてなかったけど、やっぱり魔力には色々と情報がつまってるもんなんだねー」
「いいえ。それは個人により様々かと。私のような人形に生命を吹き込み、さらに成功させてしまった方は貴方様一人でございます」
「そういうことも分かってるの?」
「私に意識というものはありませんが、作り手の情報は入ってくるものなのです。それを人間的に言えば命を吹き込む、というらしいのですが、私には命という概念がありません。なので、こうして動けるようになる魔法をかけられる魔法使いは貴方様しかおりません」
ウィズに誉められたと感じたシリウスは嬉しそうに笑った。
他愛のない会話を繰り返すシリウスを、ウィズは相づちを打ちながらもパニーニを作る手を休めない。そうしてあっという間に出来た夕食を、シリウスの目の前に置いた。
「お待たせしました、シリウス様。ご注文のパニーニでございます」
「すごーい、美味しそう!!」
目前に出された夕食に目を輝かせ、シリウスは一口かじった。サクッとした音とともに香ばしいパンの香りが口内いっぱいに広がる。
「ん、美味しい!」
「お口に合ったようで光栄でございます」
美味しいと絶賛し、シリウスは笑みを溢す。しかし、ウィズは淡々とした表情のままお辞儀をした。
それは、まるでロボットのように、いまだ人間らしいとは言いがたい光景だった。
それでも、シリウスは特に気にした風もなく、香ばしく焼けたパニーニを口一杯に頬張っていた。
そうして日は暮れ、いつの間にか闇が蹂躙する夜へと変貌した。シリウスは自分の魔法で起こした火を暖炉へと注ぎ、ソファーに寝転がると毛布をその身に包んだ。
「シリウス様、ベッドでお休みされないのですか?」
「いーの。僕はいつもこのスタイルで寝てるから」
「左様でございますか。ならば、火の番は私にお任せください」
「ん、寝なくて平気なの?」
「本来、人形に眠るという概念は存在しません。睡眠という行動は必要ないのです」
「そう。でも、眠くなったら寝てもいいよ。別に僕の部屋で寝たって構わない。ここは、君の家でもあるんだから、好きなようにしなよ」
「ご心配、痛み入ります。私のことなど気になさらず、シリウス様はお休みください」
「……ん、そろそろ寝るよ。もう眠い……」
「はい、お休みなさいませ」
目を何回か擦ったあと、シリウスの意識は深い眠りへと誘われていく。そのままでも眠ってしまいそうだったが、ウィズは竪琴を取り出すと静かな音を奏で始めた。
まるで眠れない子に子守唄を聞かせるようなその竪琴の音色は、シリウスをさらに深い熟睡の海へと誘った。
シリウスが眠ったあとも、ウィズはしばらく竪琴を引いていた。それはまるで不思議な感覚で、頭に流れる曲をそのまま引いていたのだった。それもまたシリウスから流れた情報だったのだろう。
(不思議だ……シリウス様の記憶の一部なのだろうが、所々は抜けている。幼すぎた故の記憶の欠落だろうか……)
竪琴を引き終わってから、ウィズはソファーで静かな寝息を立てている自分の主を見つめた。
意識を持って初めて目にした瞬間、彼が自分の主なのだということはすぐさま理解できた。しかし、自分を造り出した主は見るからに幼く、初めて出会った瞬間はまるで泣き出しそうな顔をしていた。彼が何を想い、自分を造り出したのか。
その疑問は人形から生まれたウィズに不可思議な感情を抱かせた。そもそも魔法で人形に命を吹き込むこと自体が不可能なのである。似せることはできても、魔法で命を生み出すことはできない。命を生み出すエネルギーとそれを維持するために生じるエネルギー。それは両方とも膨大な量を必要とし、そしてそれを補えるほどの魔力を持てる存在はいない。
世界に存在している宝石を世界一つ分集めてもいまだ足りないほど途方もないエネルギーが必要になるのだった。そのためウィズは理解していた。自分がシリウスの望む”人”として生まれているのではないのだと。
今はまだシリウスから貰った条約とその魂の半分によって動ける人形になっているに過ぎなかった。ウィズが抱く不可思議な感情は、シリウスという人間の血と魔法を通じて生じている誤算に過ぎなかったのである。
それでも、彼との契約は彼の友達として存在し味方で居続けること。
その契約こそが真髄であり、ウィズが生まれる誤算となった要因だった。
「もう悲しまないでください、シリウス様。もう独りという孤独を味わうことのないよう……この契約と貴方様から頂いた血と魂を捧げ、貴方様の味方であり続けると、ここに誓います」
ウィズをこの世界に繋ぎ止めているシリウスの想い。それは他の何とも儚い子供の望み。
大きな家に一人きりの少年は家族を失い、友を知らないまま一人ぼっちという苦しみの中、誰かの温もりを探していた。誰一人として、その少年の傍に歩み寄る者はおらず、孤独に耐えかねた少年は人形に己の魂を半分与えた。家族として、友として、自分の味方として望まれた人形は不完全ながらもその少年の望み通りになった。
「私の名はウィズ。シリウス様に、永遠の忠誠を……」
今の彼にはシリウスとの契約が絶対であることに変わりはない。そして、そこにウィズの意志などは存在してはいない。それでも、ウィズを生み出したためか、シリウスの寝顔は今までにないほど安らいだ表情をしていた。
そのため宝石は体内に魔力を持たない人間でさえ魔法を使うことができ、その利用価値は人々の生活から軍事利用まで幅広く使われていた。それゆえに、太古の昔には宝石を巡って戦争が起こった。
小国で成り立っていた魔星は戦争の渦に呑まれ、最終的には一つの大国にまとまった。今では一つの大国が世界を納めているため宝石の独占はなく、静かで平和な世界へと落ち着いている。
これは、そんな魔星に住まう一人の天才魔法少年と、彼によって作られた魔法の人形との友情物語である。
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分厚い本が部屋一面に隙間なく埋まっている空間の中心で、一人の少年が薄ら笑いを浮かべて座っていた。彼の回りには赤い色で魔方陣と文字が描かれ、その中心には一つの人形が置かれている。
「そなたに生きるための条件を出す。一つ、そなたはいついかなるときでも我の味方であること。一つ、そなたの命は我の命の半分であること。一つ、我が命には背かぬこと。以上の三つがそなたの生きる条件である」
少年は指先から血を一滴、人形へと滴らせる。それを吸った人形が淡く光り出したかと思うと、一瞬にして眩く激しい光へと変化した。その光は少年にも降り注ぐ。
「そなたに名を与える。この名をもって、そなたは人となる。目覚めよ、そなたの名はウィズ」
彼が名前を呼ぶと、人形は人一倍輝き始めた。その光が強くなればなるほど、少年の顔には汗が浮かんでいる。しかし、その光が弱くなってくると、人形があった場所には青年が座っていた。
人形と同じ髪色に、同じ服装。閉じられた瞼が開かれると、そこには清んだ蒼色の瞳が現れた。
「おはようございます、ご主人様」
「うん、おはよう。でも、ご主人様って呼ばれたら友達っぽくないなぁ。僕のことはシリウス。そう呼んでよ」
「分かりました。それでは、シリウス様とお呼びいたします」
「うーん……まぁ、今はそれでいいや。よろしく、ウィズ」
「はい、よろしくお願いいたします、シリウス様」
シリウスと名乗った少年はニッコリと笑い、ウィズは平坦な表情のまま差し出された彼の手を握った。
彼らは本棚に囲まれた地下の部屋から出ていくと、ダイニングへと入る。
「ここがキッチンだよ。好きに使っていいよ」
「それでは、シリウス様のお世話をさせていただきます。食べたい物などあればお申し付けください」
「え、人形だったのに料理なんてできるの?」
「やったことはございませんが、シリウス様のお力が非常に強く、ある程度の能力もついたものかと。早速、なにかをお作りしましょうか?」
「そうだね~。それじゃ、パニーニを作ってくれるかい? ちょっと小腹空いちゃったし、夕飯にしよう」
「かしこまりました」
早速夕食作りへと入ったウィズの姿が見れる位置のソファーに座り、シリウスは彼を見つめる。
今まで一人だった空間に新しい存在がある。そのことが嬉しいのか、シリウスは夕食を作るウィズをずっと見ていた。
「ねぇ、ウィズは僕のこと、どれだけ理解しているの?」
「シリウス様の情報は、魔力とともに送られてきた一部しかございません。たとえば、ご両親がいらっしゃらないことやこの世に始まって以来の天才魔法使いであられること。大まかな情報はインプットされております」
「へぇ~。そこまで考えてなかったけど、やっぱり魔力には色々と情報がつまってるもんなんだねー」
「いいえ。それは個人により様々かと。私のような人形に生命を吹き込み、さらに成功させてしまった方は貴方様一人でございます」
「そういうことも分かってるの?」
「私に意識というものはありませんが、作り手の情報は入ってくるものなのです。それを人間的に言えば命を吹き込む、というらしいのですが、私には命という概念がありません。なので、こうして動けるようになる魔法をかけられる魔法使いは貴方様しかおりません」
ウィズに誉められたと感じたシリウスは嬉しそうに笑った。
他愛のない会話を繰り返すシリウスを、ウィズは相づちを打ちながらもパニーニを作る手を休めない。そうしてあっという間に出来た夕食を、シリウスの目の前に置いた。
「お待たせしました、シリウス様。ご注文のパニーニでございます」
「すごーい、美味しそう!!」
目前に出された夕食に目を輝かせ、シリウスは一口かじった。サクッとした音とともに香ばしいパンの香りが口内いっぱいに広がる。
「ん、美味しい!」
「お口に合ったようで光栄でございます」
美味しいと絶賛し、シリウスは笑みを溢す。しかし、ウィズは淡々とした表情のままお辞儀をした。
それは、まるでロボットのように、いまだ人間らしいとは言いがたい光景だった。
それでも、シリウスは特に気にした風もなく、香ばしく焼けたパニーニを口一杯に頬張っていた。
そうして日は暮れ、いつの間にか闇が蹂躙する夜へと変貌した。シリウスは自分の魔法で起こした火を暖炉へと注ぎ、ソファーに寝転がると毛布をその身に包んだ。
「シリウス様、ベッドでお休みされないのですか?」
「いーの。僕はいつもこのスタイルで寝てるから」
「左様でございますか。ならば、火の番は私にお任せください」
「ん、寝なくて平気なの?」
「本来、人形に眠るという概念は存在しません。睡眠という行動は必要ないのです」
「そう。でも、眠くなったら寝てもいいよ。別に僕の部屋で寝たって構わない。ここは、君の家でもあるんだから、好きなようにしなよ」
「ご心配、痛み入ります。私のことなど気になさらず、シリウス様はお休みください」
「……ん、そろそろ寝るよ。もう眠い……」
「はい、お休みなさいませ」
目を何回か擦ったあと、シリウスの意識は深い眠りへと誘われていく。そのままでも眠ってしまいそうだったが、ウィズは竪琴を取り出すと静かな音を奏で始めた。
まるで眠れない子に子守唄を聞かせるようなその竪琴の音色は、シリウスをさらに深い熟睡の海へと誘った。
シリウスが眠ったあとも、ウィズはしばらく竪琴を引いていた。それはまるで不思議な感覚で、頭に流れる曲をそのまま引いていたのだった。それもまたシリウスから流れた情報だったのだろう。
(不思議だ……シリウス様の記憶の一部なのだろうが、所々は抜けている。幼すぎた故の記憶の欠落だろうか……)
竪琴を引き終わってから、ウィズはソファーで静かな寝息を立てている自分の主を見つめた。
意識を持って初めて目にした瞬間、彼が自分の主なのだということはすぐさま理解できた。しかし、自分を造り出した主は見るからに幼く、初めて出会った瞬間はまるで泣き出しそうな顔をしていた。彼が何を想い、自分を造り出したのか。
その疑問は人形から生まれたウィズに不可思議な感情を抱かせた。そもそも魔法で人形に命を吹き込むこと自体が不可能なのである。似せることはできても、魔法で命を生み出すことはできない。命を生み出すエネルギーとそれを維持するために生じるエネルギー。それは両方とも膨大な量を必要とし、そしてそれを補えるほどの魔力を持てる存在はいない。
世界に存在している宝石を世界一つ分集めてもいまだ足りないほど途方もないエネルギーが必要になるのだった。そのためウィズは理解していた。自分がシリウスの望む”人”として生まれているのではないのだと。
今はまだシリウスから貰った条約とその魂の半分によって動ける人形になっているに過ぎなかった。ウィズが抱く不可思議な感情は、シリウスという人間の血と魔法を通じて生じている誤算に過ぎなかったのである。
それでも、彼との契約は彼の友達として存在し味方で居続けること。
その契約こそが真髄であり、ウィズが生まれる誤算となった要因だった。
「もう悲しまないでください、シリウス様。もう独りという孤独を味わうことのないよう……この契約と貴方様から頂いた血と魂を捧げ、貴方様の味方であり続けると、ここに誓います」
ウィズをこの世界に繋ぎ止めているシリウスの想い。それは他の何とも儚い子供の望み。
大きな家に一人きりの少年は家族を失い、友を知らないまま一人ぼっちという苦しみの中、誰かの温もりを探していた。誰一人として、その少年の傍に歩み寄る者はおらず、孤独に耐えかねた少年は人形に己の魂を半分与えた。家族として、友として、自分の味方として望まれた人形は不完全ながらもその少年の望み通りになった。
「私の名はウィズ。シリウス様に、永遠の忠誠を……」
今の彼にはシリウスとの契約が絶対であることに変わりはない。そして、そこにウィズの意志などは存在してはいない。それでも、ウィズを生み出したためか、シリウスの寝顔は今までにないほど安らいだ表情をしていた。
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