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46.断り文句にお泊まりの一石二鳥(side修平)
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「じゃあ、今日も飲みに行く可能性があるんですか?」
俺は聞いた。
出来たら阻止したい。
いや絶対に阻止したい。
「うーん、バイト終わりっていつも二十一時位だからさ、大学と違ってその後予定入れることってまずないんだよね。断りにくいというか。皆大学生だから、試験の前とかなら問題ないんだけど、金がないとか見たいテレビがあるとか、断り文句としては弱いらしくて」
聞いている俺が、イラッとした。
多分、「金がないのは皆同じ」とか「後で配信で見れば良いじゃない」とか言われるのだろう。
保先輩が苦笑しながら「ごめん」と謝る姿が目に浮かぶ。
「なら、俺待ってますよ」
考えるより先に、口が開いていた。
「え?」
「友達が泊まりに来るって言えばいいじゃないですか?」
「わ、それは……有り難い、けど」
一瞬目を輝かせた先輩。
俺はその倍位、目が輝いている自信がある。
「えと、じゃあ……その、修平さえ、良ければ……あ、駄目か」
何が駄目なのだろう?
俺は保先輩が安心出来るように、極力穏やかに促した。
友達が泊まるから、を言い訳にするとしても、本当に俺が泊まる必要がないことに気付いてしまったのかもしれないなと俺は内心焦った。
今すぐ帰れと言われれば、俺はそうするしかない。
保先輩を困らせたり、不快にさせたりするのは俺の本意じゃないから。
「駄目な理由って、何ですか?先輩が困るようなことでしょうか?」
俺の言葉に、保先輩は上目遣いでこちらの様子を伺いながら、その先の言葉を口にしてくれた。
「違う。むしろ、困るのは修平の方。えと、見ての通りベッドしかなくて、客用の布団がない。あと、風呂が激狭。あと、修平の着られるような服がない」
何だそんなことか、と俺は胸を撫で下ろす。
残念そうに話す先輩に愛しさを感じて、思わず頭に手を伸ばし掛けたが、辛うじて踏みとどまる。
──まだ、大切なことを伝えてない。
見るだけだったサラサラな髪が、ほんの少し掌に当たったのを感じた。
今朝もシャワーを浴びたから、今日位風呂に入らなくても問題ないし、今すぐ寝袋とパジャマ下着普段着一式買いに行っても良い。
でも、その為に買いに行くと言えば保先輩が逆に気にしそうだから、そうは言えない。
というか、先輩がバイトに行っている間なら、自分の家に取りに行く時間だってある。
でも、それはそれでわざわざ取りに行かせるのも、と気にするだろう。
「保先輩、昨日みたいなことはしないので、一緒に寝させて貰って良いですか?風呂も問題ありません。服なんですけど俺、保先輩送ったら、さっきの乗り換え駅で色々買い物する予定だったんですよ。ちょうどパジャマや下着もくたってきたので」
「え?そうなの?」
「あはは、そうなんです。だから服の心配もないので……決まりですね」
俺は、顔がニヤけるのを懸命に耐えた。
俺のリュックには軟膏以外に、下心満載のお泊りセットとアダルトグッズが詰め込まれているのだが、何も知らない保先輩は嬉しそうに笑った。
俺は聞いた。
出来たら阻止したい。
いや絶対に阻止したい。
「うーん、バイト終わりっていつも二十一時位だからさ、大学と違ってその後予定入れることってまずないんだよね。断りにくいというか。皆大学生だから、試験の前とかなら問題ないんだけど、金がないとか見たいテレビがあるとか、断り文句としては弱いらしくて」
聞いている俺が、イラッとした。
多分、「金がないのは皆同じ」とか「後で配信で見れば良いじゃない」とか言われるのだろう。
保先輩が苦笑しながら「ごめん」と謝る姿が目に浮かぶ。
「なら、俺待ってますよ」
考えるより先に、口が開いていた。
「え?」
「友達が泊まりに来るって言えばいいじゃないですか?」
「わ、それは……有り難い、けど」
一瞬目を輝かせた先輩。
俺はその倍位、目が輝いている自信がある。
「えと、じゃあ……その、修平さえ、良ければ……あ、駄目か」
何が駄目なのだろう?
俺は保先輩が安心出来るように、極力穏やかに促した。
友達が泊まるから、を言い訳にするとしても、本当に俺が泊まる必要がないことに気付いてしまったのかもしれないなと俺は内心焦った。
今すぐ帰れと言われれば、俺はそうするしかない。
保先輩を困らせたり、不快にさせたりするのは俺の本意じゃないから。
「駄目な理由って、何ですか?先輩が困るようなことでしょうか?」
俺の言葉に、保先輩は上目遣いでこちらの様子を伺いながら、その先の言葉を口にしてくれた。
「違う。むしろ、困るのは修平の方。えと、見ての通りベッドしかなくて、客用の布団がない。あと、風呂が激狭。あと、修平の着られるような服がない」
何だそんなことか、と俺は胸を撫で下ろす。
残念そうに話す先輩に愛しさを感じて、思わず頭に手を伸ばし掛けたが、辛うじて踏みとどまる。
──まだ、大切なことを伝えてない。
見るだけだったサラサラな髪が、ほんの少し掌に当たったのを感じた。
今朝もシャワーを浴びたから、今日位風呂に入らなくても問題ないし、今すぐ寝袋とパジャマ下着普段着一式買いに行っても良い。
でも、その為に買いに行くと言えば保先輩が逆に気にしそうだから、そうは言えない。
というか、先輩がバイトに行っている間なら、自分の家に取りに行く時間だってある。
でも、それはそれでわざわざ取りに行かせるのも、と気にするだろう。
「保先輩、昨日みたいなことはしないので、一緒に寝させて貰って良いですか?風呂も問題ありません。服なんですけど俺、保先輩送ったら、さっきの乗り換え駅で色々買い物する予定だったんですよ。ちょうどパジャマや下着もくたってきたので」
「え?そうなの?」
「あはは、そうなんです。だから服の心配もないので……決まりですね」
俺は、顔がニヤけるのを懸命に耐えた。
俺のリュックには軟膏以外に、下心満載のお泊りセットとアダルトグッズが詰め込まれているのだが、何も知らない保先輩は嬉しそうに笑った。
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