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47.恋い焦がれる気持ち(side修平)
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「じゃあ、また後で。……本当に、鍵預けなくて平気?」
「無問題です、先輩。バイト頑張って下さい」
保先輩のバイト先も、あの乗り換え駅だった。
自宅にはイベント会社から配られているスタッフ証というものを取りに行ったそうで、泊まる予定のなかった保先輩を引き止めてしまったことを謝罪した。
後悔は全くしてないが。
保先輩は、「いや、俺もスタッフ証持ち歩いてれば良かったし、楽出来た、し……?」と有り難くも言ってくれた。
多分最後は、夜が更けるまで……夜が更けてもずっとセックスしていたことを思い出して、時間的には楽出来たけど、肉体的には楽だったかどうかを自問自答したのだろう。
それに関しても勿論、申し訳なかった、とは思っている。
ただ、同じ状態になったら同じ選択をするのも間違いない。
「うん、じゃあ行ってくるね。二十一時には終わると思うから、終わったら連絡するんでいい?」
「はい、お願いします。あ、夕飯どうします?」
「終わるの待ってたら遅くなるから、修平は先に食べてて」
「折角ですから、先輩と一緒に食べられると嬉しいです」
俺がそう言うと、保先輩はぱっと顔を赤らめた。
「可愛いこと……いや、嬉しいこと言ってくれるよね、修平」
可愛いのは貴方ですが?
「はは、そうですか?とにかく、コンビニでも外食でも家でカップ麺でも、俺は先輩と一緒なら何でもいいんで」
「ありがとう。じゃあ、外食にしようか」
万年金欠の先輩だから、多分俺が一番腹を空かせない選択をしたのだろう。
泊まらせて貰うお礼に奢ればいい。
俺は笑顔で頷いた。
「はい。美味しそうな店、調べておきます」
「はは、期待してる」
じゃあ、と言って、俺の方をチラチラ気にしながらイベント会場へと向かう保先輩。
俺は手を振りながら、その姿が見えなくなるまでずっと見送った。
俺は保先輩がバイトに勤しんでいる間、買い物をしたり、喫茶店に入って外食グルメを検索したりして時間を潰した。
保先輩に会っている時間はあっという間なのに、保先輩を待っている時間はやたら長く感じる。
普段はネットサーフィンしていれば嫌でも時間は過ぎるのに、今日に限って時計を見れば、五分とか十分とかしか進んでいなかった。
──早く、会いたい。
二十一時が過ぎれば会えるとわかっているのに、自分の時間を早送り……五倍速でそこまで進めたくなる。
入学して、保先輩が好きになって。
将棋サークルのサークル部屋で、わざと保先輩のいる時間を狙って会いに行った時は、流石にここまでではなかった。
恋焦がれる、とはこういう感じなのかと、胸に巣食うジリジリとした感覚をもて余す。
二十一時になり、スマホを握ったまましばらく駅で保先輩からの連絡を待っていたが、五分経過した時点で俺は堪らず、イベント会場へ行こうと足を動かし始めた。
その時、待っていた連絡が俺のスマホを震わせ、俺は秒でそれに出る。
「──もしもし」
「もしもし、修平?」
「はい」
「修平、悪いんだけど……その、イベント会場の方って、来れる?」
「はい、今向かってます」
「良かった……その、ごめん。修平のこと話したら、バイト仲間が断り文句だろって信じてくれなくて……会わせろって言ってきて」
保先輩の、困り顔が脳裏に浮かぶ。
多分、俺に申し訳ないとでも思っているのだろう。
「直ぐに行きます」
俺はスマホを切って、イベント会場へ向かって走った。
「無問題です、先輩。バイト頑張って下さい」
保先輩のバイト先も、あの乗り換え駅だった。
自宅にはイベント会社から配られているスタッフ証というものを取りに行ったそうで、泊まる予定のなかった保先輩を引き止めてしまったことを謝罪した。
後悔は全くしてないが。
保先輩は、「いや、俺もスタッフ証持ち歩いてれば良かったし、楽出来た、し……?」と有り難くも言ってくれた。
多分最後は、夜が更けるまで……夜が更けてもずっとセックスしていたことを思い出して、時間的には楽出来たけど、肉体的には楽だったかどうかを自問自答したのだろう。
それに関しても勿論、申し訳なかった、とは思っている。
ただ、同じ状態になったら同じ選択をするのも間違いない。
「うん、じゃあ行ってくるね。二十一時には終わると思うから、終わったら連絡するんでいい?」
「はい、お願いします。あ、夕飯どうします?」
「終わるの待ってたら遅くなるから、修平は先に食べてて」
「折角ですから、先輩と一緒に食べられると嬉しいです」
俺がそう言うと、保先輩はぱっと顔を赤らめた。
「可愛いこと……いや、嬉しいこと言ってくれるよね、修平」
可愛いのは貴方ですが?
「はは、そうですか?とにかく、コンビニでも外食でも家でカップ麺でも、俺は先輩と一緒なら何でもいいんで」
「ありがとう。じゃあ、外食にしようか」
万年金欠の先輩だから、多分俺が一番腹を空かせない選択をしたのだろう。
泊まらせて貰うお礼に奢ればいい。
俺は笑顔で頷いた。
「はい。美味しそうな店、調べておきます」
「はは、期待してる」
じゃあ、と言って、俺の方をチラチラ気にしながらイベント会場へと向かう保先輩。
俺は手を振りながら、その姿が見えなくなるまでずっと見送った。
俺は保先輩がバイトに勤しんでいる間、買い物をしたり、喫茶店に入って外食グルメを検索したりして時間を潰した。
保先輩に会っている時間はあっという間なのに、保先輩を待っている時間はやたら長く感じる。
普段はネットサーフィンしていれば嫌でも時間は過ぎるのに、今日に限って時計を見れば、五分とか十分とかしか進んでいなかった。
──早く、会いたい。
二十一時が過ぎれば会えるとわかっているのに、自分の時間を早送り……五倍速でそこまで進めたくなる。
入学して、保先輩が好きになって。
将棋サークルのサークル部屋で、わざと保先輩のいる時間を狙って会いに行った時は、流石にここまでではなかった。
恋焦がれる、とはこういう感じなのかと、胸に巣食うジリジリとした感覚をもて余す。
二十一時になり、スマホを握ったまましばらく駅で保先輩からの連絡を待っていたが、五分経過した時点で俺は堪らず、イベント会場へ行こうと足を動かし始めた。
その時、待っていた連絡が俺のスマホを震わせ、俺は秒でそれに出る。
「──もしもし」
「もしもし、修平?」
「はい」
「修平、悪いんだけど……その、イベント会場の方って、来れる?」
「はい、今向かってます」
「良かった……その、ごめん。修平のこと話したら、バイト仲間が断り文句だろって信じてくれなくて……会わせろって言ってきて」
保先輩の、困り顔が脳裏に浮かぶ。
多分、俺に申し訳ないとでも思っているのだろう。
「直ぐに行きます」
俺はスマホを切って、イベント会場へ向かって走った。
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