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2 他律志向な人間
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「結局、こうなってしまいましたね」
カルロは輿入れの馬車の中から、今まで必死に守って来た国をぼんやり眺めながらポツリと呟いた。
兄であるストラヘイム国王の命令で、カルロは同性婚が認められていないストラヘイムから追い出されるようにして、隣国であるアルテネへ嫁ぐのだ。
休戦の証として、アルテネ国王の十番目の伴侶として。
ストラヘイム王国の誇るソードマスター、それが王弟のカルロだ。
眉目秀麗な容姿と細い身体でありながらも戦場でいくつも功績をあげるカルロは、国民から絶大な人気がある。
そんなカルロは、常にいつ王冠を奪われるのかとびくびくしている兄王によって、人質同然に隣国へ送り付けられるのだ。
自国で暗殺しようとしても、カルロを殺せるような腕のよい暗殺者は存在しない。
ならば、同じソードマスターであるアルテネの王弟に殺してもらおうという算段だ。
もし殺されないですむのならば、その時はストラヘイムにとって有益なスパイとなるか、もしくは憎きアルテネの国王ならびに要人をカルロが始末してくれれば儲けものだと考えている。
ようは、目障りなカルロをこれ以上視界の中に入れたくないのだ。
そして、同姓愛を蔑むアルテネ国の主教を利用して、万が一カルロが帰国しても、生理的な嫌悪感を国民が抱くように仕向けている。
年の離れているにもかかわらず、兄王はずっと優秀なカルロと比べられてきた。
だからその気持ちもわからないではないのだが、カルロとしては兄王と国民のために何度も戦場で命を捧げてきたのだ。
正直、いい加減「他人に仕える」ことを至上の喜びとする人間がいることも理解してくれれば良いのに、と思わないでもない。
カルロは完全に、他律志向な人間だった。
そのことをカルロは何度も言動で示しているのに兄王は信じてはくれず、常にカルロが王位を狙っていると疑心暗鬼になっている。
それがわかってしまうから、お互いに信用関係が成り立たないのだ。
「その点、瑶鈴様とは全く違いますね」
前世の記憶があるカルロは、ひとりごちる。
蘭雪に全幅の信頼を置く瑶鈴は、どんなに幼くとも蘭雪の主人たり得た。
前世の蘭雪だった頃もカルロである今も、主人を定める時大事にするのは相手からの信頼である。
主人の信頼に応えるのが、従僕の定めであり、勤めであり、幸せなのだ。
裏切る、などと考えも及ばぬ瑶鈴のような主人であれば喜んで仕えたのに、残念ながらカルロを信用していない兄王では自分の手綱を明け渡すには些か色々足りない。
瑶鈴であれば自死しろという命にも従えたが、兄王ではその気になれない。
ならば、新しい土地で主人を見つけるまでだ、とカルロは思い直す。
捨てられた犬にも、新しい主人を探す権利くらいはある。
新しい主人、と考えたカルロの脳裏に、ストラヘイム王国が誇る、可憐で賢い第一王女の姿が浮かんだ。
一国の王たる資質のない怠慢な兄王であるが、正妃との間に第一王女をもうけたことは確実にこの国への大きな功績である、とカルロは常々思っていた。
可愛らしく「カルロ叔父様」と呼んで慕ってくれる第一王女はどこか瑶鈴に似ていてとても賢く、カルロにとって目の中に入れても痛くないほどに愛しく思える存在だった。
そんな第一王女は、カルロの主人候補の筆頭だった。
兄王の命で、それはかなわなくなったけれど。
カルロは輿入れの馬車の中から、今まで必死に守って来た国をぼんやり眺めながらポツリと呟いた。
兄であるストラヘイム国王の命令で、カルロは同性婚が認められていないストラヘイムから追い出されるようにして、隣国であるアルテネへ嫁ぐのだ。
休戦の証として、アルテネ国王の十番目の伴侶として。
ストラヘイム王国の誇るソードマスター、それが王弟のカルロだ。
眉目秀麗な容姿と細い身体でありながらも戦場でいくつも功績をあげるカルロは、国民から絶大な人気がある。
そんなカルロは、常にいつ王冠を奪われるのかとびくびくしている兄王によって、人質同然に隣国へ送り付けられるのだ。
自国で暗殺しようとしても、カルロを殺せるような腕のよい暗殺者は存在しない。
ならば、同じソードマスターであるアルテネの王弟に殺してもらおうという算段だ。
もし殺されないですむのならば、その時はストラヘイムにとって有益なスパイとなるか、もしくは憎きアルテネの国王ならびに要人をカルロが始末してくれれば儲けものだと考えている。
ようは、目障りなカルロをこれ以上視界の中に入れたくないのだ。
そして、同姓愛を蔑むアルテネ国の主教を利用して、万が一カルロが帰国しても、生理的な嫌悪感を国民が抱くように仕向けている。
年の離れているにもかかわらず、兄王はずっと優秀なカルロと比べられてきた。
だからその気持ちもわからないではないのだが、カルロとしては兄王と国民のために何度も戦場で命を捧げてきたのだ。
正直、いい加減「他人に仕える」ことを至上の喜びとする人間がいることも理解してくれれば良いのに、と思わないでもない。
カルロは完全に、他律志向な人間だった。
そのことをカルロは何度も言動で示しているのに兄王は信じてはくれず、常にカルロが王位を狙っていると疑心暗鬼になっている。
それがわかってしまうから、お互いに信用関係が成り立たないのだ。
「その点、瑶鈴様とは全く違いますね」
前世の記憶があるカルロは、ひとりごちる。
蘭雪に全幅の信頼を置く瑶鈴は、どんなに幼くとも蘭雪の主人たり得た。
前世の蘭雪だった頃もカルロである今も、主人を定める時大事にするのは相手からの信頼である。
主人の信頼に応えるのが、従僕の定めであり、勤めであり、幸せなのだ。
裏切る、などと考えも及ばぬ瑶鈴のような主人であれば喜んで仕えたのに、残念ながらカルロを信用していない兄王では自分の手綱を明け渡すには些か色々足りない。
瑶鈴であれば自死しろという命にも従えたが、兄王ではその気になれない。
ならば、新しい土地で主人を見つけるまでだ、とカルロは思い直す。
捨てられた犬にも、新しい主人を探す権利くらいはある。
新しい主人、と考えたカルロの脳裏に、ストラヘイム王国が誇る、可憐で賢い第一王女の姿が浮かんだ。
一国の王たる資質のない怠慢な兄王であるが、正妃との間に第一王女をもうけたことは確実にこの国への大きな功績である、とカルロは常々思っていた。
可愛らしく「カルロ叔父様」と呼んで慕ってくれる第一王女はどこか瑶鈴に似ていてとても賢く、カルロにとって目の中に入れても痛くないほどに愛しく思える存在だった。
そんな第一王女は、カルロの主人候補の筆頭だった。
兄王の命で、それはかなわなくなったけれど。
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