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7 寄生先候補
「いやあ、とても素人とは思えない発想ですね。ご意見を聞けて本当に良かったです」
「いえいえ、こちらこそ久しぶりに楽しかったです。……その、一応デザイン系の専門を卒業しているので」
「だからか、那岐さんの私服はどれもお洒落ですね」
「ありがとうございます……持っている服の数が少ないので、なんとか着回しています」
市販の服に少しだけ手を入れているため、褒められることは純粋に嬉しかった。
一軌から自分へ寄せる好意を感じ取りながら、那岐はにこ、と笑う。
ここまでよくしてもらっておいて、このままハイさよなら、は流石にできない。
昨日は一軌の相手をせずに、一宿してしまったのだ。
那岐は、一度話題が途切れたタイミングを見計らって、自分から話し出した。
「一軌さん。ええと……その、昨日の話ですが」
「昨日の話? ああ、家に泊めてくれる人を募集しているんでしたっけ」
「あ、はい」
そっちの話か、と少しホッとしつつ、このいかにも常識人ですという顔をした一軌に自分の状況をどう説明しようか悩んだ。
「那岐さんの家はどうしたんですか?」
「ええと、その……ルームシェアしていた相手に、追い出されてしまって……」
「ルームシェアですか。追い出されたのは、昨日の一日だけですか?」
「いえ、その……これからずっと……」
一軌にじっと見つめられ、那岐は流石に無理があったと腹を括る。
普通に考えて、ルームシェアで家からずっと追い出されるはずがない。
「……ヒモでした」
「なるほど。家主に追い出されて、行く当てがなく、その相手を見繕うためにあのバーに入ったんですね」
「おっしゃる通りです……」
気持ち小さくなりながら、那岐はちら、と上目遣いで一軌の顔色をうかがう。
那岐がヒモだと知ると、大抵の相手は冷たい目をしていたり、憐憫だったり嫌悪だったり、ともかくマイナスの表情を浮かべることが多かったのだが、一軌はそのどれとも違った。
「そうですか。……では、那岐さん。これは提案なのですが、これからはこの家に住みませんか?」
「え?」
一軌の思わぬ言葉に、那岐はパッと顔を上げる。
「ただし、条件があります」
那岐はぎゅっと拳を握って、条件とはなんでしょうか、と尋ねた。
「この家に住むにあたって、那岐さんには家のことと、私の性生活を満たす仕事をお願いします。あとは、那岐さんの姿をちょっと私好みに変えたいですね。もしそれ以外の仕事を任せた場合、私はあなたにお金を支払います」
「家のことと、性生活……」
それは、今まで女性の家に居座るためにやっていたこととなんら変わりはなかった。
「仕事ぶりもわからないのに、そんなお約束をしていいんですか?」
一軌の前でどちらも披露していない那岐は、念のため確認する。
一軌は那岐の言葉に少し意外そうな顔をすると、笑って言った。
「ではこれから一週間、お試し期間を設けましょうか」
男相手に寄生するのは初めてだから少し勝手が違うかもしれないが、家主を気持ちよくさせるために、たくさん愚痴を聞いて、持ち上げて、ひたすら優しく甘やかしてあげるところは変わらないだろう。
「はい。気に入っていただけるよう、頑張ります」
「気に入っていただけるよう頑張るのは、私のほうだと思いますが」
一軌は立ち上がって、那岐の横に移動する。
そして、急にどうしたのかと不思議そうな顔で見上げる那岐のあごに指をかけて顔を寄せると、そのままキスを落とした。
「いえいえ、こちらこそ久しぶりに楽しかったです。……その、一応デザイン系の専門を卒業しているので」
「だからか、那岐さんの私服はどれもお洒落ですね」
「ありがとうございます……持っている服の数が少ないので、なんとか着回しています」
市販の服に少しだけ手を入れているため、褒められることは純粋に嬉しかった。
一軌から自分へ寄せる好意を感じ取りながら、那岐はにこ、と笑う。
ここまでよくしてもらっておいて、このままハイさよなら、は流石にできない。
昨日は一軌の相手をせずに、一宿してしまったのだ。
那岐は、一度話題が途切れたタイミングを見計らって、自分から話し出した。
「一軌さん。ええと……その、昨日の話ですが」
「昨日の話? ああ、家に泊めてくれる人を募集しているんでしたっけ」
「あ、はい」
そっちの話か、と少しホッとしつつ、このいかにも常識人ですという顔をした一軌に自分の状況をどう説明しようか悩んだ。
「那岐さんの家はどうしたんですか?」
「ええと、その……ルームシェアしていた相手に、追い出されてしまって……」
「ルームシェアですか。追い出されたのは、昨日の一日だけですか?」
「いえ、その……これからずっと……」
一軌にじっと見つめられ、那岐は流石に無理があったと腹を括る。
普通に考えて、ルームシェアで家からずっと追い出されるはずがない。
「……ヒモでした」
「なるほど。家主に追い出されて、行く当てがなく、その相手を見繕うためにあのバーに入ったんですね」
「おっしゃる通りです……」
気持ち小さくなりながら、那岐はちら、と上目遣いで一軌の顔色をうかがう。
那岐がヒモだと知ると、大抵の相手は冷たい目をしていたり、憐憫だったり嫌悪だったり、ともかくマイナスの表情を浮かべることが多かったのだが、一軌はそのどれとも違った。
「そうですか。……では、那岐さん。これは提案なのですが、これからはこの家に住みませんか?」
「え?」
一軌の思わぬ言葉に、那岐はパッと顔を上げる。
「ただし、条件があります」
那岐はぎゅっと拳を握って、条件とはなんでしょうか、と尋ねた。
「この家に住むにあたって、那岐さんには家のことと、私の性生活を満たす仕事をお願いします。あとは、那岐さんの姿をちょっと私好みに変えたいですね。もしそれ以外の仕事を任せた場合、私はあなたにお金を支払います」
「家のことと、性生活……」
それは、今まで女性の家に居座るためにやっていたこととなんら変わりはなかった。
「仕事ぶりもわからないのに、そんなお約束をしていいんですか?」
一軌の前でどちらも披露していない那岐は、念のため確認する。
一軌は那岐の言葉に少し意外そうな顔をすると、笑って言った。
「ではこれから一週間、お試し期間を設けましょうか」
男相手に寄生するのは初めてだから少し勝手が違うかもしれないが、家主を気持ちよくさせるために、たくさん愚痴を聞いて、持ち上げて、ひたすら優しく甘やかしてあげるところは変わらないだろう。
「はい。気に入っていただけるよう、頑張ります」
「気に入っていただけるよう頑張るのは、私のほうだと思いますが」
一軌は立ち上がって、那岐の横に移動する。
そして、急にどうしたのかと不思議そうな顔で見上げる那岐のあごに指をかけて顔を寄せると、そのままキスを落とした。
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