ヒモ男の永久就職

イセヤ レキ

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9 再会

寝入った那岐の頬に手をあて、目元に並んだ二つの黒子をそっと親指で撫でる。
見た目が随分と変わっていて、一目じゃ全然わからなかったな、と一軌は思った。

那岐は全く覚えていないようだが、ゲイである一軌は那岐のことをよく覚えていた。

その日は、若い社長のための交流会があり、一軌はそれに参加していたのだ。
業界は違えど、今は業務提携することが当たり前の時代だし、情報はいくらあっても問題ない。

アパレル系の企業を立ち上げていた一軌は、そこでランジェリーの会社を立ち上げた一人の綺麗な女性と名刺交換をした。

美人であることを自覚しており、若くして経営者という立場を手にした女性は、総じてプライドが高そうで注目が集まることを好む。
その女性は一軌の顔だか物腰だか何かが気に入ったようで、交流の場だというのに一軌の傍をうろちょろして離れようとしなかった。

「やっぱり、仕事の出来る男性は違いますね。うちに居着いている男がいるんですけど、デザイン系の学校を出た癖に本人は全然スマートじゃないし、口うるさくて。家事全般が出来るのはいいんですけど、隈があるとか顔色が悪いとか言い出して、健康食みたいなものを出してくるんですよね」
「大切にされているってことじゃないですか」
「まあ、そうかもしれませんけど。うちのインナーのデザインがイマイチな時、お金を払わずにアドバイスを貰えるってところだけがメリットですかね」

女性はペラペラと相手の男を情けなくて頼りないと愚痴を言って、やっぱりビジネスパートナーはしっかりとした男性じゃないと、と言いながらさりげなく一軌へのボディタッチを頻繁にしてきた。

やがて交流会は終わり、二次会に参加し、夜も更けてお開きになろうとした頃、またその女が一軌のほうへと近づいて、耳元で「このあと二人でどうですか?」と誘いをかける。
どう断ろうかと一軌が悩んだ時、高くもなく低くもない落ち着いた声が、二人にかかった。

「美佳さん」
「……那岐。あんた、なんでここにいるのよ?」
「遅くなるかもって連絡貰ったから、迎えにきたよ。美佳さん酔っぱらったら、ひとりで帰って来るの危ないでしょ」

眼鏡をかけて、どこにでも売っていそうなダボダボのトレーナーを着た男。
これがこの女が散々こき下ろしていた家政婦代わりの男か、と思いながら一軌はその男を品定めする。

眼鏡の下には形の整った眉に少し垂れ気味の目尻に、縦に並んだ黒子が二つ。
ノンケだというのにどこか色気がある男だな、と一軌は興味を惹かれる。
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