僕のお見合い相手が元クラスメイトのヤンキーだった

イセヤ レキ

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8 元ヤンのお話

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当時の清流は自分の行きたい高校へは行かせて貰えず、ボンボンたちが通う高校へ強制的に入れさせられた。
その頃が一番、精神的に不安定な時期だったらしい。

親の思い通りにはならないという反発心で髪を金に染め、ピアスを開け、授業には出ず、不真面目な態度を貫いた。
夜遅くまで街を徘徊し、女とセックスをして、人生に面白みを感じていない似たような奴とつるんで、なんの力もないのに大人になった気になっていたという。

「まあ、ガキだったんだよ。だから高校時代の俺にとって、同級生というのはとても目障りな存在だった」

親の掌の上で転がされていることも気づかず、自我をもたず、ただ「青春」という言葉に囚われて、狭い箱の中へ自ら入って行く奴ら。

会話をするのも億劫で、基本的には一人で過ごした。
声を掛ける度胸もないのに、チラチラとこちらを見てくる視線もうざかった。

そんな同級生……クラスメイトの中でも、一際癪に障る奴がいた。
それが、天海世那だった。

「え、僕!?」
「はは、そう」

誰にでも優しく、誰とでも気軽に話して、いつも賑やかで元気で楽しそうに場を盛り上げる、クラスの会話の中心人物。
自分の放つ「話し掛けるなオーラ」をものともせず、自分の噂を知らないわけでもないのに、物怖じせずに平気な顔で話し掛けてくる、単なるクラスメイト。

けれどもそれは、生徒会の役員であるとか、学級委員だからこその必要最低限の会話だった。
まるで面倒見の良い兄が出来の悪い弟をたしなめながら、晩御飯の要望を聞くかのような話題。

「世那は、他のクラスメイトとは馬鹿を言い合って笑っていても、俺とは不要な会話を一切しなかったよな」
「うん、まぁそりゃね」

当時清流には、必要以上に近付かないよう気をつけていた。

清流は他人から干渉されることを、極端に嫌う人間に見えたからだ。
清流には清流の世界があって、それに触れてはいけないことをなんとなく感じていた。

「世那は成績はたいしたことないのに、そうした人の心の機微を汲み取ることは得意だったよな」
「成績はたいしたことない、は余計だよ……!」
「世那は俺に、興味を持たなかった。俺が嫌がらない必要最低限の会話をして、話しかけづらいからといって、仲間外れにもしなかった」

世那は、俺よりよっぽど、大人だった。

そう言われて、当時の僕が清流に認められているような、自尊心をくすぐるような喜びがじわじわと胸に広がっていく。

兄や姉に比べて、能力も才能もなければ、自分というものもなかった僕。
よく言えば自由だけれども、悪く言えば期待されていない自分に、劣等感しか抱けなかったのに。

「当時の俺は青くて、世那のことを『気に食わない奴』だから気になるのだと勘違いしていたんだよ。本当は、逆だったのに」
「逆?」
「世那のことを『世那』と呼びすてにして慕う奴等が、隣にいる奴等が羨ましくてさ」

マジか。
当時の僕たちは、何度清流から「うるせえ」「騒ぐな」「邪魔だ」と言われ、睨まれたことか。

「他のやつらと、こうやってふざけてただろ?」

清流はぎゅう、と俺を抱き締める。
体育祭で、文化祭で、スポーツ大会で、普段の休み時間でも、確かに友人たちと抱き合ったり肩を組んだりすることは多かった。

清流に睨まれるたび、騒いで悪かったな、と思って静かにしようとした。
でも、男友達なんてそうしたふざけ合いやじゃれ合いは当たり前なのに、何をそんなに怒っているのだろうかと不思議に思うこともあった。

「他のやつらが世那に触るのが、嫌だったんだ」
「そっか」

当時はその理由も本人がわからなかったのだから、怒鳴ることしかできなかったということか。

「三年の夏休みだったかな、自分の感情に気付いたのは」

会いたい、今どうしているのか、という思いが重なって。
そんなわけがない、友達ですらない男に興味なんてない、という思いと葛藤して。
我慢できずに世那の近況をSNSでチェックするようになってやっと、自分自身の本当の感情を認めることができた。


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