僕のお見合い相手が元クラスメイトのヤンキーだった

イセヤ レキ

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9 外堀埋め埋めマン

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「だから親から大学に入れって、馬鹿なことはやめて進学しろって言われた時、不良をやめてまともな社会人になる代わりに、俺が将来男を伴侶にしても文句を言うなって条件出した」
「……は?」

自分の目ん玉が飛び出てないかと思うくらい、驚いた。
普通の親、いやむしろ体裁を気にしそうな頭の固い親が、そんな条件を飲むか?

「その時ちょうど、起訴はされなかったが警察にお世話になっていた直後だったから。ヤクザになるよりマシだって、しぶしぶだったけど頷かせたよ」

うわあ、外堀から埋めるタイプ……!
ヤクザになるかまともな社会人になるか選べと言われたら、そりゃ親ならまともな社会人になることを望むだろう。

え、ちょっと清流の親が可哀想。

「でも、大学は別だったよね?」
「ああ。どこの大学に行くとかの話題をする仲でもなかったし、気になっても聞けずにいた。でも、世那のお義父さんの会社に勤めるだろうってことは予想ついた」

確かに、と僕は頷く。

ボンボンの多い学校だったから、僕がとある建築会社の息子だということは皆知っていた。そうした話題は自慢するでもなく、普通に交わされていたから。
僕が知らないだけでマウント取り合戦はあったのかもしれないが、同級生は皆、似たりよったりだ。


「大学に入っても、いるはずのない世那の姿を探してたよ。賑やかなグループがいると自然とそちらに視線が向いて、その中心が世那でないことに気づいて、当たり前なのにがっかりした」
「……そっか」

思いもよらないところで思いもよらない人に自分が長年思われていたことを知って、どことなく浮足立った気持ちになる。

大学に入ってから清流のことなんて、一ミリも思い出したことはなかった。
なのに、清流の中で僕は繰り返し思い出される存在だったわけで。
あの、一匹狼だった清流の。

なんだかそれが無性に、嬉しい。
価値がある、と言って貰えたみたいで。


「最初、世那の会社に入社することを考えたが、それは親父から止められた」
「まあ、そうだろうね」
僕は頷いた。
会社の業績が芳しくなかったからだろう。

「だから、いつか世那が、世那の会社が危機に瀕した時、助けることができるようになっておこうと思って」

にっこり笑う清流に、やっぱり外堀を埋めるタイプだ、と僕は確信する。

父は、会社と従業員を愛する立派な経営者だ。
家族は二の次で、会社のために家族が犠牲になるのは当然という、むしろ家族を駒のように扱うような側面がある。
それに兄も姉も反発したが、そんな気概もない僕はのほほんと父親の言う通りにした。

「途中でさ、僕が結婚するかもとは思わなかったの?」

僕が尋ねると清流はスマホを手にし、僕のSNSサイトを開く。

「世那のSNSは、わかりやすい。彼女がいる時は基本、彼女との匂わせ写真を一カ月に三回ほど掲載する。そして彼女と別れると、その彼女との写真を遡って消す」
「えっ……気付かなかった」

無意識の行動を分析され、少し恥ずかしくなる。

「世那は馬鹿みたいに顔がいい。だから、女が群がるのは当たり前だ」

僕はコクリと頷く。
顔面偏差値に全フリしてますから。
それしか取り柄がありませんから。

「ただ、世那は天然よりで、どちらかといえばとろくさいだろ? 俺からすれば外見とのギャップが堪らなく可愛い。が、外見のイメージや社長令息という肩書で付き合い出した女には受け入れられないだろうな」
「褒めるか貶すかどっちかにしてよ」

ついでに僕が振られる理由まで分析しないで欲しい。

「世那の魅力に気づく女がいなくて助かった。で、そろそろ俺も限界だったし、世那の会社の業績的にも限界だったし、見合いをセッティングして貰った」
「僕の父も清流のお父さんも、二人とも了承済みの上の、見合いだったってこと?」
「ああ」

外堀埋められすぎてて怖い。

「見合いするにあたってお義父さんの出した俺への条件は二つ。世那が嫌がる場合は無理に話を纏めないことと、世那との仲がどう落ち着こうが、会社の経営を五年以内に立て直すこと」
「え……」

それは、あまり清流にとって、良い条件とはいえない。
だって、僕が拒否する可能性のほうが圧倒的に高い。
僕にさっさと振られたにしても、その後五年は僕の会社のために頑張らなくてはならないってことだ。

いや、僕に振られたらその後は手を抜くことだって、できなくはないか。
だったら直ぐに結論は出せないなと思いながら、おずおずと清流を見上げる。

「どうしてそんな不利な条件飲んだの?」

清流は僕の頬に手を当て、「本当に不利だと思うか?」と尋ねた。

「世那の性格上、俺がこの条件を言えば、少なくとも五年は俺に付き合ってくれようとするだろ? ということは、俺は五年かけて、世那を口説けばいいってことだ」
「それは……」

二の句が継げない。
もしかしたら清流は、僕の家族よりも僕の性格を知っているのかもしれない、と恐れ戦いた。
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