先読み神子の嫁入り

イセヤ レキ

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2、旅人の好奇心

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そして、それは現実のものとなった。


神社を采配するにはまだ小さな双子であるから、神社の運営や行事は禰宜の中から後継者が選ばれた。

そして双子はそれ以来独学で占術を学び、各々能力を磨いて現在に至るのである。



「兎に角、二人の占いは小さなものから大きなものまで当たる。それこそ、天災から赤子の性別までな。以来、先読みの巫女とわが町では呼ばれている訳さ。華族様は何処かでキッカ様の噂を聞きつけたらしく、この度の結婚に至る訳だな」

「へぇ。……あれ?じゃあ、妹のキョウカ様の方はどうなるんだい?町に残るんかい?」

「やぁ、それがな。キッカ様はお優しいから、新居にはキョウカ様も連れて行くと仰られたらしい」

「ほぅ。しかしそれじゃ、この町としちゃ逆に迷惑な話なんじゃないかい?ずっと占術でこの町を支えていた藤島家の跡継ぎがいなくなる訳だろう?」


旅人が不思議そうに尋ねると、宿屋の主人は眉間に皺を寄せた。


「いや、キッカ様ならまだしも……あの薄気味悪いキョウカ様に残られてもなぁ……?町長とその華族の者が話し合いをしたらしいのだが、一年に一度はキッカ様を里帰りさせること、キッカ様のお子が何人か出来たら、そのうちの一人をいずれはこの町の神社を継がせることなんかを盟約したそうだよ」

「ふむ、成る程。……どれ、噂のキッカ様とやらの姿を一目見て、ご利益を頂いてくるとしようかねぇ」

「ああ、我が町の誇り、先読みの巫女様を是非一緒に祝福してきて下せぇ」

その旅人はお勘定を済ませると、宿屋の主人に神社の場所を聞き、そちらに向かって寄り道をした。



***



「キッカ様!キッカ様!お元気で!!」

「また戻って来て下さい、キッカ様!」

町の人々は、キッカが乗っていると思わしき馬車に手を振り、祝いの花弁を宙に舞わせていた。


少し濃いめの化粧を施した巫女が、馬車の中から優雅に手を振る。


「おうおう、確かにこりゃ凄い人気だねぇ」

旅人は人混みより少し離れた高台からその様子を眺めていた。

「……ん?妹は何処だ?」

馬車にはキッカ一人が美しい花嫁衣装を身に纏って乗車しており、他に人影は見当たらない。


町民は誰もキョウカの行方など気にしない中、旅人はその姿を探した。

「……もしかして、あれか?」

キッカの後ろを、二台の荷馬車が追い掛けるようにゆっくりゆっくりゴトゴトと進んでいる。


花嫁道具を運んでいるようだが、薄汚れた和装の女性もその隅で居心地悪そうに乗っていた。

俯くその手の中には何かの動物の毛皮を大事そうに抱えているようだ。


「……何か面白い話が聞けそうだな」

旅人は、町民への別れの挨拶の為に徒歩より遅く進む荷馬車を追い掛けた。



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