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「メスオチしたか……」
エリーナと最後の別れをした後、放心状態のまま両親にだけ挨拶をしに、顔を出した。僕の力が減ってないのに、角が折れているのを見た両親は痛ましげに僕を見る。
「メスオチ?」
雄であるのに、一角が短い雌のユニコーン族みたいだからだろうか。

「誰にやられたんだ?」
「……アラルコスだよ」
「成る程な……」
両親は頭を抱えた。僕は申し訳なく思いながら、荷物を纏める。
家を出る時になって、やっと両親は見送りにきてくれた。
「……大丈夫だ、ファン。アラルコスならお前を、幸せにしてくれるよ」
「そうよ、ファン。元気で、たまには帰って来なさい」
「……うん、ありがとう。わかった」

僕は、知らなかった。
ユニコーン族が仲間のユニコーン族の角を折る事は、生涯掛けて、乙女よりも大事にしますという意味の、後に引けない禁忌のプロポーズであったという事を。



***



ダフラの洞窟とは、僕とアラルコスしか知らない、秘密基地の様なものだ。最初はアラルコスの顔を見るのも嫌で、一人森の中をさまよっていたが……正直に言おう、僕は寂しさに耐えられなかった。

群れに戻る前にアラルコスの顔を見て、アラルコスと一緒にいるのがやはり耐えられそうになければ群れの隅っこに居を構えよう、と考えてダフラの洞窟に向かう。

ダフラの洞窟は、僕がたどり着いた時にはやたら快適で、問題なく生活出来そうな空間が整えられていたのに、アラルコスはいなかった。蹄の跡からすると、やはりアラルコスが出入りしているのは間違いない。

そのままつい、馬型用のふかふかな藁が敷き詰められたベッドに横たわり、疲れた身体を休めて瞳を閉じてしまったのだけど……



「いやだぁ、奥、ぐりぐりしないでぇ……♡♡」
気づけば、アラルコスが僕に覆い被さっていた。ぐちょぐちょにされた下半身を貫かれたまま、僕は身動きひとつ出来ない。太いアラルコスの肉茎が僕のお尻に出入りする度、そこが勝手にヒクヒク蠢くだけだ。

ずん!ずん!と脳に響く様な勢いで、アラルコスが僕のお尻を掻き回す。
拳の様なさきっぽがぐりぐりと奥まで侵入して、散々肉を押し拓いては、ずぬぬぬ、とお尻の入り口ギリギリ手前まで一気に引き抜かれる。

「ひぅ♡ああ"っ……♡!!」
感じた事のない痺れがお尻から腰を中心に広がりながらも留まり、発散される事のないそれは僕のペニスに熱を帯びさせた。

ぢゅぽっ!ぢゅぽっ!ぢゅぽっ!
「やめ♡♡やめてよぉっ……!アラルコスぅ……♡♡」
「駄目だ。私の縄張りとわかって来た時点で、ファンは私の伴侶だ」
「え?なんっ……はあああっっ♡♡」
一際気持ち良い快感が走って、身体が震える。アラルコスが僕のお尻に大量の子種を放った後、人型に変化したのを感じた。

「ファン、馬型だと後ろからしか犯せない。顔を見てヤりたいから、人型になれ」
「や、やだよ……っ!ひゃうっっ!!」
アラルコスが、僕の勃起したペニスをむんずと掴んだので、僕は仕方なく人型になる。
「ファン……好きだよ」
「……え?」
「……え?」
アラルコスの急な告白に、僕は呆けた。
「……まさか、ファン……そこまで知らないとかあり得るか?いや、確かに私が変な話をファンに吹き込まない様に見張っていたというのもあるが……それでもここまで純粋培養に育ってしまうなんて……」
アラルコスは何かを察知した様に、頭に手を置き天を仰ぐ。
「とはいえ、もうファンは私のものだ」
「え?え?そうなの??」
「そうだ。これはもう覆る事のない、決定事項だ」
「……えぇ……じゃあ、僕、アラルコスのお嫁さん?って事??」
僕が問い掛けると、アラルコスは嬉しそうに首を縦に振って肯定した。

「そうだ、ファンは私のもの。ここに来たという事は、ファンの乙女はファンに再生粉を用意しなかったのだろう?」
アラルコスに言われ、悲しかった気持ちが再び胸を占めた。
「……うん……僕にはエリーナだけだったんだけど……エリーナは、そうじゃなかった、みたい……」
ぱたぱた、と足元を水滴が濡らす。

「泣くな、ファン。本当の乙女なんて、今の人間には殆んどいない。私の目には、むしろお前が乙女に見える」
「いや、雄だしユニコーン族だし……」
「乙女よりもずっと純粋で、汚れを知らず、その分騙されやすくて絆されやすいファンから目が離せないんだ……昔から、な」
アラルコスが、僕の顔を両手で包み込んでそっと上向きにし、涙が流れた跡に口付けた。
雄同士なのに、ドキリとする。

自分が大切にされている様で……でも、本当に大切だったら角を折る訳がない、と思ってそう伝えた。
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