元公女の難儀な復讐

イセヤ レキ

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15 予定変更

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朝目覚めると、筋肉に抱き締められて眠っていた。
扉の鍵は仕事をしなかったらしい。

そろ、と重たい腕を持ち上げ、その下をくぐり抜けるようにしてベッドから抜け出す。

キョロキョロと部屋の中を見渡せば、ベッドに程近いテーブルの上に、短剣が無造作に置かれていた。
王族は命を狙われることが多々あるため寝所に短剣を忍び込ませることは普通だが、あまりにも目立つその短剣に眉を顰める。

ロイアルバが寝ている今なら、全体重を掛ければ何とか致命傷を負わせることが出来るだろうか。

ロイアルバが亡くなってもガイアルンがいるから、この国の民もそこまで困らないだろう。

国民に愛されている皇太子を殺すのは偲びないが、私はそのロイアルバに家族を殺されているのだ。
こんな状況を作ったロイアルバ本人を是非責めて下さいと思いながら、私は忍び足で寝ているロイアルバの方へと近付き、短剣を鞘から抜いた。

ずしりと感じたのは、これから奪う命の重たさか……と思った時、いきなり伸びてきた大きな手が私の手首をグッと掴んでそのままベッドの方へと引き寄せ、くるりと仰向けに押し倒される。

「きゃあ!」
「……エフィナ……おはよう……」

ロイアルバは寝惚けているのか、薄目を開けて私の顔を確認すると、ふにゃ、と幼子のように笑った。
そしてそのまま、意外と端正な顔を近付けてくる。

「あ、危ないです! 剣が、剣が……!!」
自分の手にした短剣の切っ先がどちらを向いているのかもわからず、私は叫んだ。
「……ああ、本当だ。エフィナには危ないぞ」
するりと私の手から短剣を抜くと、ロイアルバはポイとベッドの横にそれを投げ捨て、私をぎゅう、と抱きしめる。


そして、数分後。
「……すまない……寝惚けていたようだ……」
重たくて分厚い筋肉から逃れようともがくのを諦めた私が遠い目をして虚無に陥っていると、ロイアルバがガバっと起き上がるなり、顔を真っ赤にして私から距離をとった。

ひとまず、圧死は免れた。
私はじろりとロイアルバを睨みつける。

そして早々に悟った。
私がロイアルバを刺し殺すのは難しい。
寝ていた時ですら、私の殺気に反応したようだから。

毒に対しての耐性もありそうだし、殺す以外で何か復讐を果たそう、と私は予定変更せざるを得なくなった。
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