元公女の難儀な復讐

イセヤ レキ

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20 幸運を手繰り寄せる男

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「君の国は、百年前リンダンロフから独立した。これは予想だが、魔石の……悪魔の力に頼ることをよしと思わなかった者たちが、魔石を使わない国を建国したのではないかな?」
「……成る程」
「グシャナト公国は、魔石を使わない分、本来存在する自然の物質を使って独自の文明を築いていった。それは、魔石に頼り、魔石がなければ何も出来ないリンダンロフよりも、ある意味ずっと発展していると言えるかもしれないんだ」

火を起こすのも、冷たくするのも、乾かすのも、連絡を取るのも、リンダンロフでは全て魔石、魔石、魔石だ。

確かに逆に考えれば、魔石を取り上げられたら、色々滞ってしまう。

悪魔の狙いは、それだった。

ゆっくり生活に馴染み、根付いていく。
後戻り出来ない程に侵蝕した後で、魔石を餌にリンダンロフの王族を操る。


「グシャナト公国は確かに腐敗していたが、それは貧富の差が酷く貧しい者の生活水準が低いというだけで、文明自体が劣っている訳では決してないんだ。魔石を失ったリンダンロフが学ぶべきことは沢山ある。そして君は公国の君主の血を引く唯一の肉親であり、それだけでもリンダンロフが敬うべき相手でもあるんだ」

難しいことはよくわからない。
しかし、あの瘦せ細った公国民と、公国の大地のために、私にもまだできることがあると言われていることだけはわかる。

「そして、そんな君の地位は私と結婚すれば、さらに強固なものになるだろう」
単なる敗戦国の公女であるが、ロイアルバと結婚さえすれば、私を、私が切り開こうとする未来を害する者たちを排除できる権限が与えられるということか。

「腐りきった輩であったが、家族を奪われた苦しみを、君は一生私にぶつけ続けていい。しかし、最後に残された公女として、公国の民を幸せにする義務がある」
ロイアルバの言葉は、違う国とはいえこれから国を導いていく者同士だからか、心に沁みていくようだった。


「貴方への復讐は終わりました」
魔窟に飛び込んだ時に、復讐に生きる人生は終わった。
ロイアルバの私に対する気持ちを利用した復讐だったが、最低でも半年は苦しめられると思っていたのに、まさかたったの五分で終わるとは思いもしなかったが。

脳筋で裏表がなく、神に愛され運が味方してくれていそうなロイアルバだからこそ、あっさり悪魔を倒せたのだろう。

そうした幸運を手繰り寄せる力も、この男は持ち得ているのかもしれない。

「約束通り、貴方の妻になります。けれども、私はグシャナトに戻り、残りの人生はあの地に捧げますわ」
「そうだな、そうしよう。何があっても、私がエフィナを守るからな」
ぱぁ、と顔色を明るくさせてロイアルバは頷いた。

皇帝の容認を得てもいないのに、ロイアルバの中ではもう決定事項らしい。
「貴方は私のことより、自分の身と立場を守ることを考えるべきだと思いますよ」

悪魔を倒し、魔石が手に入れることが叶わなくなれば、魔石で他国への優位な外交を保っていたリンダンロフの立場は厳しいものになるだろうし、皇帝も勝手な行動を起こしたロイアルバに罰を与えなければならなくなるだろう。

「どうして私が、ここに信頼できる者たちしか連れて来なかったと思う?」
ロイアルバは大きな声で笑い、私を子供のように抱え上げると、皇城への帰路についた。
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