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第一章 出会い(囲い込み)編
4
繭ちゃんが途中で帰ってしまっても、山田さんがいたからその日の私は想像以上に楽しく過ごす事が出来た。
大学に入った頃、いくつかのサークルの見学に行った時、新入生歓迎会でよく「送ってあげるよ」とか「もう少し二人で話そうよ?」とか声を掛けられた。それを怖く感じて、結局私はどのサークルに所属することもなかったのだけど。
私は今、山田さんが「送ってあげるよ」とか「もう少し二人で話す?」と聞いてくれないかと期待していることに気付いて自分に驚いた。
だって、山田さんといるのは楽しい。私に普通に接してくれて、普通に会話してくれて。
山田さんは、私が最も理想だと感じるフツメンで。
でも、ゼミの人達は皆「二次会行こー!!」と盛り上がっていて、帰るつもりの私はちょっと残念な気分になった。ここで山田さんとお別れだと思ったから。
だから、「今日はお疲れ。俺はもう帰るから」と山田さんが言ったのに、「私も!」と被せ気味に返事をしてしまう。すると、優しい山田さんは「戸枝さんどっち方面?ちょっと暗いから、送った方が良いかな?」と聞いてきてくれたのだ。
私はつい、笑顔になる。
「ええと、私は下りの方向なんだけど……山田さんは?」
「本当?良かった、一緒だ。じゃあ途中まで送るよ」
「ありがとう」
もう少しお話出来るかもしれない。嬉しい。
「他にも下り方面で帰る人、誰かいるかな」
山田さんがそう言ったので、二人きりじゃないんだ、と考えた自分に再び驚く。いつも、何で二人きりが前提なの、なんて思っていたのに。
「何?戸枝さん帰っちゃうの!?それじゃあ俺も……」
「ちょっと!親友が幹事してるっていうのに帰る訳!?」
ふざけて私達と一緒に帰ろうとしたイケメン何人かが結局二次会へと連行され、本当に帰宅組の下り方面だった「普通のゼミ生」男女二人を交え、私達は四人で帰った。とはいえ、話しているのは山田さんと、もう一人の男の人だ。女の人は電車の中で気持ち良さそうに軽く眠っていて、私は窓の外を眺めながら途中でたまに二人の会話に相槌を打つだけ。
二人とも、無理に私を会話に巻き込もうとせず、趣味の話で盛り上がっていた。山田さんが趣味は山登りだと言うと、もう一人の男の人は「趣味は俺と同じく秋葉原だと思ってたのに!」と言って笑い合っていた。
とても心地よい空間だった。
「あ!山田さん!」
「おっはよ~。山田君」
「おはよう、戸枝さん、鐘崎さん」
私が山田さんを見つけて走り寄って行くと、繭ちゃんは「随分と山田君に懐いたねぇ」と笑って言った。本人には言えないけど、私はフツメンが好みなのです。
「昨日は凄く楽しかった。ありがとうね」
「俺も楽しかったよ。また皆で飲む機会があると良いね」
「うん!」
そこで、「また皆で」と言う山田さんが好きだ。……と考え、「好感が持てる」から「好き」に変化している自分に動揺した。
私はこの歳まで、誰とも付き合った事がなかった。有難い事に沢山……クラスメイトや学校の人や知らない人まで、本当に今まで何度も告白された事はあったけど、自分が相手に好意を持てずに全てお断りし続けてきた。
私がお断りした相手を知った高校時代の友人は、「御曹司で運動神経も良いバスケ部スタメンのイケメンを振るなんて!」と嘆いていたけど、そんな人に横にいられても私が気後れするばかりで、何の面白みもない。
私はこの見た目とは違って、ずば抜けた能力も特筆すべき点もない、凡人なのだから。だから、隣にいてくれる人も等身大でお付き合い出来る人がいい。自分が背伸びをしてまで横に並ぶんじゃなくて、一緒に成長出来る普通の相手が良かった。
「そう言えば、次のゼミではもう自分のテーマ発表だよね?あーあ、何にしよっかなぁ」
繭ちゃんが伸びをしながらそう言うと、山田さんは
「俺もう決めたから、参考になりそうな資料なら貸せるよ?」
と言ってきた。
「もう決めたの!?」
私達は驚愕する。
「ん。あの教授のゼミを専攻した時点でアタリつけてたから」
「おお~~!凄いね、流石『優良さん』だね!!」
「ユウリョウさん?」
私は意味がわからず、首を傾げる。
「ああ、優を量産するから、この人。名前と引っ掛けて、『優良さん』って皆で呼んでる」
「やめてよ」
山田さんは、繭ちゃんに苦笑いして言った。
頭の良い人なのかな?だったら、山田さんも普通とは違う……?
そう思った時、山田さんが「本当に頭良ければ、もっと良い大学行ってるよ」と笑って言うから、私達は「それもそうだ」と同調した。
やっぱり山田さんも普通なんだ、と思ってちょっと安心した。
大学に入った頃、いくつかのサークルの見学に行った時、新入生歓迎会でよく「送ってあげるよ」とか「もう少し二人で話そうよ?」とか声を掛けられた。それを怖く感じて、結局私はどのサークルに所属することもなかったのだけど。
私は今、山田さんが「送ってあげるよ」とか「もう少し二人で話す?」と聞いてくれないかと期待していることに気付いて自分に驚いた。
だって、山田さんといるのは楽しい。私に普通に接してくれて、普通に会話してくれて。
山田さんは、私が最も理想だと感じるフツメンで。
でも、ゼミの人達は皆「二次会行こー!!」と盛り上がっていて、帰るつもりの私はちょっと残念な気分になった。ここで山田さんとお別れだと思ったから。
だから、「今日はお疲れ。俺はもう帰るから」と山田さんが言ったのに、「私も!」と被せ気味に返事をしてしまう。すると、優しい山田さんは「戸枝さんどっち方面?ちょっと暗いから、送った方が良いかな?」と聞いてきてくれたのだ。
私はつい、笑顔になる。
「ええと、私は下りの方向なんだけど……山田さんは?」
「本当?良かった、一緒だ。じゃあ途中まで送るよ」
「ありがとう」
もう少しお話出来るかもしれない。嬉しい。
「他にも下り方面で帰る人、誰かいるかな」
山田さんがそう言ったので、二人きりじゃないんだ、と考えた自分に再び驚く。いつも、何で二人きりが前提なの、なんて思っていたのに。
「何?戸枝さん帰っちゃうの!?それじゃあ俺も……」
「ちょっと!親友が幹事してるっていうのに帰る訳!?」
ふざけて私達と一緒に帰ろうとしたイケメン何人かが結局二次会へと連行され、本当に帰宅組の下り方面だった「普通のゼミ生」男女二人を交え、私達は四人で帰った。とはいえ、話しているのは山田さんと、もう一人の男の人だ。女の人は電車の中で気持ち良さそうに軽く眠っていて、私は窓の外を眺めながら途中でたまに二人の会話に相槌を打つだけ。
二人とも、無理に私を会話に巻き込もうとせず、趣味の話で盛り上がっていた。山田さんが趣味は山登りだと言うと、もう一人の男の人は「趣味は俺と同じく秋葉原だと思ってたのに!」と言って笑い合っていた。
とても心地よい空間だった。
「あ!山田さん!」
「おっはよ~。山田君」
「おはよう、戸枝さん、鐘崎さん」
私が山田さんを見つけて走り寄って行くと、繭ちゃんは「随分と山田君に懐いたねぇ」と笑って言った。本人には言えないけど、私はフツメンが好みなのです。
「昨日は凄く楽しかった。ありがとうね」
「俺も楽しかったよ。また皆で飲む機会があると良いね」
「うん!」
そこで、「また皆で」と言う山田さんが好きだ。……と考え、「好感が持てる」から「好き」に変化している自分に動揺した。
私はこの歳まで、誰とも付き合った事がなかった。有難い事に沢山……クラスメイトや学校の人や知らない人まで、本当に今まで何度も告白された事はあったけど、自分が相手に好意を持てずに全てお断りし続けてきた。
私がお断りした相手を知った高校時代の友人は、「御曹司で運動神経も良いバスケ部スタメンのイケメンを振るなんて!」と嘆いていたけど、そんな人に横にいられても私が気後れするばかりで、何の面白みもない。
私はこの見た目とは違って、ずば抜けた能力も特筆すべき点もない、凡人なのだから。だから、隣にいてくれる人も等身大でお付き合い出来る人がいい。自分が背伸びをしてまで横に並ぶんじゃなくて、一緒に成長出来る普通の相手が良かった。
「そう言えば、次のゼミではもう自分のテーマ発表だよね?あーあ、何にしよっかなぁ」
繭ちゃんが伸びをしながらそう言うと、山田さんは
「俺もう決めたから、参考になりそうな資料なら貸せるよ?」
と言ってきた。
「もう決めたの!?」
私達は驚愕する。
「ん。あの教授のゼミを専攻した時点でアタリつけてたから」
「おお~~!凄いね、流石『優良さん』だね!!」
「ユウリョウさん?」
私は意味がわからず、首を傾げる。
「ああ、優を量産するから、この人。名前と引っ掛けて、『優良さん』って皆で呼んでる」
「やめてよ」
山田さんは、繭ちゃんに苦笑いして言った。
頭の良い人なのかな?だったら、山田さんも普通とは違う……?
そう思った時、山田さんが「本当に頭良ければ、もっと良い大学行ってるよ」と笑って言うから、私達は「それもそうだ」と同調した。
やっぱり山田さんも普通なんだ、と思ってちょっと安心した。
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