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第二章 カップル(ABC)編
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そんなこんなで話がそれつつも、デートに関しては結局、私が山田さんに「水族館か動物園がいいな」と言って、山田さんに選んで貰うことにした。
山田さんに「じゃあ両方行く?」と聞かれた時は少し驚いたけど、山田さんは登山もするし、私よりずっとアクティブな人なのかもしれない。金銭的にも時間的にも体力的にも、一日で二か所周るのは勿体ないと思うんだけど、と私が言えば、じゃあ片方は次のデートにしよう、なんて言われて必然的に次の約束まで取り付けてしまった。素で両方行く?と聞かれたように思ったのだけど、頭の良い山田さんのことだから、もしかしたらこの成り行きを計算しての発言だったのかな、と思った。
そして私達は結局、水族館に出かけることにした。山田さんが「沖縄じゃなくていいの?」と聞いてきた時には、そんな冗談言う人だったのかと思って笑ってしまった。次の動物園は「北海道じゃなくていいの?」と聞いてきそうな程にごく自然な聞き方で、突拍子もない冗談を言うこともあるんだと、山田さんの意外な面を発見して私は嬉しかった。
そうして迎えた初デートの日。関東圏だから勿論沖縄じゃなくて池袋の水族館に行くことになった。
待ち合わせ場所に普通何分前に到着すれば良いのかわからなくて、ネットで調べたら十分から十五分前に到着する人が多いらしい。
私は初めてのデートに緊張しつつ、その辺の時間目指して待ち合わせ場所に向かった……ら、そこには山田さんが先に着いていた。
「山田さん!ごめんね、待った?」
「いや、殆ど待ってないよ。俺が先に来てないと、戸枝さんナンパとかされてそうだから少し早くしただけ」
にこにこと笑う山田さんに、「今日の格好も可愛いね」とさらりと言われて、私の顔は真っ赤になる。
昨日まで何日もコーディネートに悩み、最後にはとうとう繭ちゃんにメッセージアプリで相談したのだけど、「キララは何着ても可愛いし、何着ても山田君は満足だと思うよ!」と返事が来て全く何の参考にもならなかった。
六月だというのに真夏日の予報だったから、結局私は夏っぽいブルーのストライプのオフショルダーと、普段は動きやすいショートパンツが多いので、いつもとはちょっと違う黒のスキニーにしたのだけど、初めてのデートだしスカートにした方がいいかどうか最後の最後までずっと悩んでいたので、山田さんに褒められ私の心は躍る。
山田さんは落ち着いたグレーの幅広ボーダーTシャツの上にサマージャケットを羽織り、下はジーパンの出で立ちだった。
「それじゃあ早速水族館に向かおうか」
「うん。……あ、あの、山田さん、も、カッコいいよ」
私を喜ばせてくれた山田さんにも、本音を言うことで喜んで貰えるならと、私は頬を赤くしたまま勇気を出して言った。
「……ありがとう。カッコいいとか、初めて言われたかも」
珍しく山田さんが照れたような仕草をする。繭ちゃん曰く、私の目には盲目フィルターが掛かっているらしい。そう言えば、私も山田さんのフツメンさを気に入ったところから恋心がスタートしているのだ。だけど、実際私の目にはカッコよく映るのだから、言われたことがないならこれからそう思った時に沢山言おう、と心に決めた。
「今日はかなり日差しが強くて暑いみたいだけど、日傘なくて平気?」
「うん。人が多いから、傘さしたら邪魔かなと思って、日焼け止め塗ってきたんだ」
「そっか。戸枝さん、日に焼けるとすぐ赤くなるから大変そうだよね」
後で考えれば、夏を一緒に過ごしたことがない山田さんがそれを知る訳がないのだけど、この時の私は一切気付かずに会話を続けた。
「うん、本当は日傘とか差すの手が塞がっちゃうから嫌なんだけど、直射日光に当たると直ぐに痛くなるから困るんだよね」
「色白もそうなってくると大変だね」
そんな話をしながら歩けば、私達は水族館に到着した。チケットを購入する為の列に並ぼうとしたら、山田さんが既にネットで購入していてくれて、そのスマートな姿にキュンとする。チケット代も当然のように奢ってくれたけど、山田さんがバイトしていると聞いたことはない。お昼ご飯は私が奢ろう、と思いながらお礼を言った。
「水族館なんて久ぶり。楽しみだな」
「俺も、最後に来たのいつだったっけ」
私は小学生の時だったか、遠足で行ったっきりだ。私がそう言うと、山田さんは「じゃあこれからは気が向いたら何度でも来ようね」と言ってくれた。ずっと付き合っていくこれからの予感みたいなものをその言葉に感じて、やはりキュンとする。
水族館に一歩足を踏み入れると、そこには大小様々な魚達が迎えてくれる大水槽があって、その圧倒的な存在感に私達は足を止めてただただ見惚れた。
山田さんに「じゃあ両方行く?」と聞かれた時は少し驚いたけど、山田さんは登山もするし、私よりずっとアクティブな人なのかもしれない。金銭的にも時間的にも体力的にも、一日で二か所周るのは勿体ないと思うんだけど、と私が言えば、じゃあ片方は次のデートにしよう、なんて言われて必然的に次の約束まで取り付けてしまった。素で両方行く?と聞かれたように思ったのだけど、頭の良い山田さんのことだから、もしかしたらこの成り行きを計算しての発言だったのかな、と思った。
そして私達は結局、水族館に出かけることにした。山田さんが「沖縄じゃなくていいの?」と聞いてきた時には、そんな冗談言う人だったのかと思って笑ってしまった。次の動物園は「北海道じゃなくていいの?」と聞いてきそうな程にごく自然な聞き方で、突拍子もない冗談を言うこともあるんだと、山田さんの意外な面を発見して私は嬉しかった。
そうして迎えた初デートの日。関東圏だから勿論沖縄じゃなくて池袋の水族館に行くことになった。
待ち合わせ場所に普通何分前に到着すれば良いのかわからなくて、ネットで調べたら十分から十五分前に到着する人が多いらしい。
私は初めてのデートに緊張しつつ、その辺の時間目指して待ち合わせ場所に向かった……ら、そこには山田さんが先に着いていた。
「山田さん!ごめんね、待った?」
「いや、殆ど待ってないよ。俺が先に来てないと、戸枝さんナンパとかされてそうだから少し早くしただけ」
にこにこと笑う山田さんに、「今日の格好も可愛いね」とさらりと言われて、私の顔は真っ赤になる。
昨日まで何日もコーディネートに悩み、最後にはとうとう繭ちゃんにメッセージアプリで相談したのだけど、「キララは何着ても可愛いし、何着ても山田君は満足だと思うよ!」と返事が来て全く何の参考にもならなかった。
六月だというのに真夏日の予報だったから、結局私は夏っぽいブルーのストライプのオフショルダーと、普段は動きやすいショートパンツが多いので、いつもとはちょっと違う黒のスキニーにしたのだけど、初めてのデートだしスカートにした方がいいかどうか最後の最後までずっと悩んでいたので、山田さんに褒められ私の心は躍る。
山田さんは落ち着いたグレーの幅広ボーダーTシャツの上にサマージャケットを羽織り、下はジーパンの出で立ちだった。
「それじゃあ早速水族館に向かおうか」
「うん。……あ、あの、山田さん、も、カッコいいよ」
私を喜ばせてくれた山田さんにも、本音を言うことで喜んで貰えるならと、私は頬を赤くしたまま勇気を出して言った。
「……ありがとう。カッコいいとか、初めて言われたかも」
珍しく山田さんが照れたような仕草をする。繭ちゃん曰く、私の目には盲目フィルターが掛かっているらしい。そう言えば、私も山田さんのフツメンさを気に入ったところから恋心がスタートしているのだ。だけど、実際私の目にはカッコよく映るのだから、言われたことがないならこれからそう思った時に沢山言おう、と心に決めた。
「今日はかなり日差しが強くて暑いみたいだけど、日傘なくて平気?」
「うん。人が多いから、傘さしたら邪魔かなと思って、日焼け止め塗ってきたんだ」
「そっか。戸枝さん、日に焼けるとすぐ赤くなるから大変そうだよね」
後で考えれば、夏を一緒に過ごしたことがない山田さんがそれを知る訳がないのだけど、この時の私は一切気付かずに会話を続けた。
「うん、本当は日傘とか差すの手が塞がっちゃうから嫌なんだけど、直射日光に当たると直ぐに痛くなるから困るんだよね」
「色白もそうなってくると大変だね」
そんな話をしながら歩けば、私達は水族館に到着した。チケットを購入する為の列に並ぼうとしたら、山田さんが既にネットで購入していてくれて、そのスマートな姿にキュンとする。チケット代も当然のように奢ってくれたけど、山田さんがバイトしていると聞いたことはない。お昼ご飯は私が奢ろう、と思いながらお礼を言った。
「水族館なんて久ぶり。楽しみだな」
「俺も、最後に来たのいつだったっけ」
私は小学生の時だったか、遠足で行ったっきりだ。私がそう言うと、山田さんは「じゃあこれからは気が向いたら何度でも来ようね」と言ってくれた。ずっと付き合っていくこれからの予感みたいなものをその言葉に感じて、やはりキュンとする。
水族館に一歩足を踏み入れると、そこには大小様々な魚達が迎えてくれる大水槽があって、その圧倒的な存在感に私達は足を止めてただただ見惚れた。
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