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第二章 カップル(ABC)編
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「……すっごい美人だったけど、背が高くて相手の男フツメンで釣り合わないよねー。ああいうのってやっぱり金なのかなぁ?」
私がドアを開けると、洗面所にいた一人の女性に扉が当たりそうになって「すみません」と声を掛けた。ちょっと狭いな、このトイレ。ドアをゆっくり開けて良かった。
「……あ」
ん?何だろうと思って顔をあげると、二人の女性が慌てて目を逸らす。それでやっと気付いた。この女性達が話していたのは、私と山田さんのことだったんだって。
私が山田さんと並んで歩いているのは、似合わないのだろうか?お金目当てだと思われるのだろうか?俯いた私の目に、五センチのヒールのあるお気に入りのパンプスが目に飛び込んでくる。これを履くとほぼ山田さんとの身長差はなくなるのだけど、背が高いのにこんなヒールのある履物を選んだのがいけなかったのだろうか?なんで、好きで隣にいるんだって思って貰えないのだろう……。
少しでも山田さんに可愛いって思われたくて、ファンデをのせて、リップを塗り直して……さっきまで浮かれていた気持ちが嘘のように、沈んでいくのがわかる。でも、気にしちゃいけない。そう思い直して、私は席に戻った。
「ごめんね、お待たせ」
私が山田さんに声を掛けると、
「……何かあった?」
山田さんは私の顔を見るなり、そう聞いてきて。
「え?何も……ないよ?」
やばい、声が震えた。山田さんは人の感情の機微に敏い人だって、さっきも思ったばかりなのに。折角のデートで、気にさせちゃいけないのに。
「……そっか。ならいいんだけど」
深く追究しないでくれるのが、有難い。今ここで追究されたら、感情が溢れて涙が出てきてしまいそうだから。
「じゃあ、出ようか」
山田さんに言われて頷き、私は会計伝票を探したけど見当たらない。
「あ、会計は済ませておいたよ」
えええ!山田さんスマート過ぎる!!
「私の分、現金で渡してもいい?」
現金を持ち歩かない主義、と言っていた山田さんに私が聞くと、
「誕生日を当日祝えなかったからね、そのお詫びというか代わりって考えて貰えれば」
と言われた。……そんなことってありだろうか?じゃあ、夕飯をご馳走すればいいかな?
「ええと、ありがとう。夕飯こそは私が奢るからね」
「気にしないでいいのに」
気にします。
「だって、山田さんバイトしていないんだよね?」
それってつまり、山田さんのご両親が山田さんの為に渡したお金を私が使っていることになる気がする。
「あー、バイトはしていないけど、きちんと自分で働いて稼いだ金だよ」
……どういうことだろう?あ!もしかして、ご実家は自営業とかなのかな?
「そうなんだ」
でも、一人暮らしの家庭は普通よりずっとお金が掛かると聞く。
「……私の誕生日プレゼント、やっぱり無理しないでも……」
「それは俺がプレゼントしたいの」
そうだった。これ以上の押し問答はやめて、私達はウィンドウショッピングへと繰り出す。店の外に出ると、もう夕方だというのにまだ熱気が凄かった。
「人が多いね」
山田さんがスッと手を差し出してくれる。私は嬉々として、そこに自分の手をのせようとして……怖くなった。さっきの女性達みたいに、私と山田さんの関係を歪めて受け取る人達がいるんじゃないかと思って。
その様子を観察していた山田さんが、私に言う。
「気にしないでいいよ」
「え?」
「誰に何て言われても、気にしないでいい。似合うとか似合わないとかじゃなくて、好きかどうか……大事なのは自分達の気持ちだと思うから」
山田さんのその言葉は、私の胸にすぅ、と入り込んできて。今度こそ、私は山田さんの手に自分のそれを重ねた。
その後は何事もなく、最後まで楽しい一日を過ごして。
何回も山田さんにキュンとさせられては、彼をどんどん好きになっていく自分を自覚した。
そして、別れ際。
「山田さん、じゃなくて名前で呼んで欲しいな」
「えっ……」
「だから俺も、キララって呼んでいい?」
「も、勿論……!」
あんなに嫌だったキラキラネームも、山田さんに呼ばれれば舞い上がって。
「じゃあ、私は……良……ちゃんって呼んでいい?」
私に呼び捨てはハードルが高くて、そうお願いしてみた。「ちゃん」付けなんて、男性は嫌がるかもしれないけど。
「うん、嬉しい」
私達は再び恋人のステップをひとつ上にのぼり、その日のメッセージアプリのやり取りから、名前で呼び合う仲になれた。
私がドアを開けると、洗面所にいた一人の女性に扉が当たりそうになって「すみません」と声を掛けた。ちょっと狭いな、このトイレ。ドアをゆっくり開けて良かった。
「……あ」
ん?何だろうと思って顔をあげると、二人の女性が慌てて目を逸らす。それでやっと気付いた。この女性達が話していたのは、私と山田さんのことだったんだって。
私が山田さんと並んで歩いているのは、似合わないのだろうか?お金目当てだと思われるのだろうか?俯いた私の目に、五センチのヒールのあるお気に入りのパンプスが目に飛び込んでくる。これを履くとほぼ山田さんとの身長差はなくなるのだけど、背が高いのにこんなヒールのある履物を選んだのがいけなかったのだろうか?なんで、好きで隣にいるんだって思って貰えないのだろう……。
少しでも山田さんに可愛いって思われたくて、ファンデをのせて、リップを塗り直して……さっきまで浮かれていた気持ちが嘘のように、沈んでいくのがわかる。でも、気にしちゃいけない。そう思い直して、私は席に戻った。
「ごめんね、お待たせ」
私が山田さんに声を掛けると、
「……何かあった?」
山田さんは私の顔を見るなり、そう聞いてきて。
「え?何も……ないよ?」
やばい、声が震えた。山田さんは人の感情の機微に敏い人だって、さっきも思ったばかりなのに。折角のデートで、気にさせちゃいけないのに。
「……そっか。ならいいんだけど」
深く追究しないでくれるのが、有難い。今ここで追究されたら、感情が溢れて涙が出てきてしまいそうだから。
「じゃあ、出ようか」
山田さんに言われて頷き、私は会計伝票を探したけど見当たらない。
「あ、会計は済ませておいたよ」
えええ!山田さんスマート過ぎる!!
「私の分、現金で渡してもいい?」
現金を持ち歩かない主義、と言っていた山田さんに私が聞くと、
「誕生日を当日祝えなかったからね、そのお詫びというか代わりって考えて貰えれば」
と言われた。……そんなことってありだろうか?じゃあ、夕飯をご馳走すればいいかな?
「ええと、ありがとう。夕飯こそは私が奢るからね」
「気にしないでいいのに」
気にします。
「だって、山田さんバイトしていないんだよね?」
それってつまり、山田さんのご両親が山田さんの為に渡したお金を私が使っていることになる気がする。
「あー、バイトはしていないけど、きちんと自分で働いて稼いだ金だよ」
……どういうことだろう?あ!もしかして、ご実家は自営業とかなのかな?
「そうなんだ」
でも、一人暮らしの家庭は普通よりずっとお金が掛かると聞く。
「……私の誕生日プレゼント、やっぱり無理しないでも……」
「それは俺がプレゼントしたいの」
そうだった。これ以上の押し問答はやめて、私達はウィンドウショッピングへと繰り出す。店の外に出ると、もう夕方だというのにまだ熱気が凄かった。
「人が多いね」
山田さんがスッと手を差し出してくれる。私は嬉々として、そこに自分の手をのせようとして……怖くなった。さっきの女性達みたいに、私と山田さんの関係を歪めて受け取る人達がいるんじゃないかと思って。
その様子を観察していた山田さんが、私に言う。
「気にしないでいいよ」
「え?」
「誰に何て言われても、気にしないでいい。似合うとか似合わないとかじゃなくて、好きかどうか……大事なのは自分達の気持ちだと思うから」
山田さんのその言葉は、私の胸にすぅ、と入り込んできて。今度こそ、私は山田さんの手に自分のそれを重ねた。
その後は何事もなく、最後まで楽しい一日を過ごして。
何回も山田さんにキュンとさせられては、彼をどんどん好きになっていく自分を自覚した。
そして、別れ際。
「山田さん、じゃなくて名前で呼んで欲しいな」
「えっ……」
「だから俺も、キララって呼んでいい?」
「も、勿論……!」
あんなに嫌だったキラキラネームも、山田さんに呼ばれれば舞い上がって。
「じゃあ、私は……良……ちゃんって呼んでいい?」
私に呼び捨てはハードルが高くて、そうお願いしてみた。「ちゃん」付けなんて、男性は嫌がるかもしれないけど。
「うん、嬉しい」
私達は再び恋人のステップをひとつ上にのぼり、その日のメッセージアプリのやり取りから、名前で呼び合う仲になれた。
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