フツメンを選んだ筈ですが。

イセヤ レキ

文字の大きさ
42 / 55
第三章 新婚(調教)編

「私、大学で良ちゃんと知り合った時……普通なんだと……思ってたよ……」
自分が思い込んでいただけなのに騙された気分になり、ついポロリと本音が漏れる。……フツメンを選んだ筈なのに。
「普通じゃない俺は嫌?」
「え?」
良ちゃんに聞かれて、逆に私は戸惑った。
良ちゃんがこちらに向けてくる真剣な瞳に、私も真剣に答えなければならないと本能的に感じる。
「……良ちゃんは、良ちゃんだから……勿論嫌じゃないよ、大好きだよ」
例え良ちゃんが、普通じゃなかったとしても。
「なら問題な……」
「ただ、いくら金持ちだったとしても、やっぱり限度というものがあるとは思うんだけどね!?」
良ちゃんのご実家は、想像を……私の考える金持ちという概念を遥かに超えていた。
実家が富裕層しか住めない地域にある豪邸ということはまだ許容範囲内だけど、プライベートジェットやクルーザーやヘリコプターでの移動が選択肢に入っていたり、国内どころか海外に別荘が幾つもあったり、社交パーティーというものに列席するのが常識だったり、車は基本運転手付きだったり……というのは流石に些か過ぎる気がする。
せめて、せめて田舎のお金持ちで、土地が余っているから隣に新築建ててもいいわよ……とか、そんな感じのお金持ちだったらまだ気が楽だったのに!!
「実家関係の方は俺が処理するから、キララは今まで通りでいいんだよ」
「うーん……」
良ちゃんがそう考えてくれていることは大変有り難いけれども、そういう訳にはいかないだろう。結婚は家同士の繋がり、なんて古いことは言わないけれども、どうしたって家族間での親交は必要になる。
それに、大好きな良ちゃんのご両親だからこそ、私だって大切にしたい。私の親戚はほぼいないから、尚更そう感じてしまう。
ただ、「普通」な私には正直荷が重い。今回のお披露目会だって、結局幾らするのかわからない高級そうなドレスにアクセサリーが準備されていて、それらを汚したり失くしたりしてはならないと私の気は張り詰めっぱなしだったのだ。それが気になって、会話どころじゃなかった。ついでに、仮に会話に参加出来たとしても、話の内容のスケールが違い過ぎて私は成る程と相槌を打つだけの赤べこ状態だった。
「まぁ、何か気になることがあったら直ぐに言ってくれる?極力キララの望む通りにするから」
「うん、ありがとう」
気になること……大ありだ。今まで私が送った誕生日やクリスマスのプレゼントは、普段良ちゃんが身に着けてくれているけれども、正直あんなパーティーに出る機会が多いなら絶対に買い直した方がいい気がする。
ただ、そう思いつつも私は嬉しかった。お金持ちかもしれないけれど、その物に付けられた値段じゃなく、気持ちに価値を見出してくれる良ちゃんでいてくれることが。


私が駅前にある職場から出ると、ロータリーには私が過去に見つけてはしゃいだ例の高級車が止まっていて、運転手さんが後部座席をサッと開けるとそこには良ちゃんが座っており、私に手を振った。私が良ちゃんの隣に乗り込むと、運転手さんがそっとドアを閉めてくれる。バタン、という軽々しい音ではなく、なんとも言えない重たい音がすると、私達と外界は遮断された。街の喧騒が全く聞こえなくなり、まるで世界に私と良ちゃんしかいかくなった気分になる。結婚してから、良ちゃんの仕事が早く上がった時だけ何度かこの車で迎えに来てもらったことがあったけど、いまだに全く慣れない。会社の人に見られたくないからさっさと乗り込むけれども、気持ち的には出来たらスルーしたい位だ。
「キララ、また変な人に絡まれたんだって?」
良ちゃんは、車の中で私にキスしながら聞いてきた。私達の座っている後部座席が完全に運転手さんから見られることがないので、最初は抵抗していた私も気付けばキスまでは許している。
くちゅ、くちゅ、と舌を愛撫されて蕩けそうになりながらも、質問を受けた私は首を傾げて「変な人……?」と記憶を辿った。
「肩、触られたって」
「んー?」
そこまで聞かれて、やっと思い出した。
「ああ!広報が採用した俳優さんのこと?軽いノリで、誰にでもフラットに接するみたいだよ」
「……相変わらずキララはモテるから俺は心配だなぁ」
いやいや、と私は手を振る。
「確かに高校までは結構声掛けられたけど、大学入ってからは殆どそういうことないよ?」
だから良ちゃんの心配は不要だ。
私がそう言えば、良ちゃんは苦笑した。
「それは、俺が……いや、何でもない。ともかく、キララは隙多すぎ。今日はお仕置きだよ?……きっちり誰のものか思い出して貰わないと」
私の胸の奥が、良ちゃんの言葉にトクリと音を立てる。結婚してから、良ちゃんはこうした独占欲を剝き出しにするようになった。私が理由を尋ねると、「以前も嫉妬はしょっちゅうしてたよ?」と言われたけれども、結婚する前までは全くそんな素振りはなかったと思う。
今は穏やかに笑いながら、「わからセックスね」とエッチな方法で私の心と身体を良ちゃんに縛ろうとする。そんなことしなくても、私は今までもこれからも良ちゃん一筋なのだけど、いつの間にかその時間を楽しみにしてしまう自分がいた。自分にこんな面があるなんて、結婚するまで知らなかった。
感想 4

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。