49 / 55
第三章 新婚(調教)編
9
「まぁ、キララが怖い思いをしないで済んだのは良かったけど……」
俺は気が気じゃなくて怖かった、と良ちゃんの言葉の続きを聞いた気がした。良ちゃんの瞳には、明らかに怒りよりも心配や悲しみの感情が色濃く浮かんでいる。
「心配掛けて、ごめんなさい……」
私が謝ると、良ちゃんは苦笑した。
「キララの魅力は、俺が一番よくわかっていたのに……何で、閉じ込めておかなかったんだろう……」
私の頬を優しく掌で擦りながら、そう呟く良ちゃんの瞳は暗く淀んでいる。
「良ちゃん?何もなかったんだから……」
大丈夫、と言いたかったけれど。
「今回はたまたま、無事だっただけかもしれないよ?俺が駆け付けるのがもう少し遅かったら、どうなってたと思うの?」
そう言われてグッと黙る。
私を責めるように言いながらも、良ちゃんはむしろ、自分を責めているように見えた。だから、それ以上何も言えなかった。
でも、人妻であると知っていて尚、手を出すなんて人がいるとは本当に思わなかったのだ。
「良ちゃん、ごめんね」
辛そうな表情のまま、良ちゃんはグラスに入った水を口に含み、動けない私に口移しでそれを飲ませた。新居で初めて朝を迎えた日も、こうして口移しで水を飲ませて貰ったことを思い出して、そんな場合じゃないのに私の下半身がじゅんと潤ってしまう。
「キララが無事で、本当に良かった……」
そんな私の事情を知るよしもない良ちゃんは私の上に覆い被さり、ぎゅうっと抱き締めてきた。私も抱き締めたいのに、手錠がガチャガチャと鳴るだけでそれは叶わない。良ちゃんに反省しなさい、と言われているかのようだ。
「キララ、頭は大丈夫?即効性はあるけど依存性がない薬でまだマシだったとは言え、薬が切れた時に頭痛がするらしいんだけど」
く、薬!?私は急に怖くなった。自分の麦茶しか飲んでいなかったのに、何で!?
「少し痛いけど、痛み止めの必要はない位の痛みだよ」
そんな物を使うような人とお付き合いしてて、茂木さんは大丈夫なのだろうか?
「あれ?でも茂木さんは……?」
私が勝手に寝たと思っていたけれども、薬で寝かされたのだとしたら茂木さんは?私が疑問に思って良ちゃんに聞くと、良ちゃんは酷く冷たい顔をしていて
「キララ、あの女は男達とグルだから。グルっていうより、あの女がキララを売ったって言った方がいい」
「……え?」
良ちゃんから言われた意味がわからず、困惑する。何で私?
「あの男達はホスト。茂木が随分と入れ込んで金を注ぎ込んだらしいんだけど、相手にされなかったところに、あいつらから誰か可愛い子を紹介したら一晩遊んであげるって言われたらしい」
「えっ?そうなの?」
あのリョーヘイと呼ばれていた人は、茂木さんの彼氏じゃなかったのか。
「誰と付き合ってようが、人妻だろうが関係ないからって言われてたらしいよ。むしろ、人妻なら犯した後に脅迫してお金も身体も継続して搾り取れるからいいんだって」
「……」
あまりの酷い話に、私はぶるりと震えた。
目が覚めてから私一人能天気でいたけれども、今なら良ちゃんの焦りがよくわかる。もしその時、良ちゃんが駆け付けてくれなければ、私はこれから笑って良ちゃんの傍にいられたのだろうか?
「キララ、あの男二人と茂木の処分どうする?」
「え?」
良ちゃんは薄暗く笑いながら言った。
「俺に任せてくれる?」
「うん」
私は頷く。裁判とかよくわからないし、実際自分が何かされた訳じゃないから事情説明を求められても困ってしまう。
ただ、良ちゃんから色々言われて、気を付けていたつもりだったのにこんなことに巻き込まれる自分が情けなかった。良ちゃんが心配性だと思っていたけれども、私が無頓着なだけなのが露呈された形になってしまって恥ずかしい。
「でも、茂木さんは……」
「まだあの女のこと気にしてるの?」
私は首を横に振る。
「そうじゃなくて、多分本人も、どこかで引き返したかったと思うんだ」
やっぱり男は顔で選んじゃいけなかったのかなぁ、と言った時の茂木さんの寂しそうな顔を思い出した。やってはいけないこととわかっていても彼に振り向いて欲しい気持ちと、彼女の中の常識が葛藤を生んで……だから久しぶりに会った時、やつれて疲れた印象だったんだろう。
「まぁ、ホストに貢ぐのに給料じゃ到底足りなくて、結果的に会社の金横領したのがバレて首にもなったらしいしな」
「そっか……」
私の胸に、苦い気持ちが染みのように広がっていく。恋心とは、恐ろしいものだ。私が好きになったのが良ちゃんでなければ、万が一何かが間違っていれば、茂木さんの立場にいたのは彼女じゃなくて自分だったのかもしれない。
「私、良ちゃんを好きになって良かった」
私がそう言うと、良ちゃんは「何、どうしたの急に」と驚きながらも照れた様子だ。
「私は茂木さんにもう会いたくないから、もし良ちゃんが会うなら……伝えておいて」
「うん」
「茂木さんは、鑑定士が向いていると思うって」
「うん……ん?」
良ちゃんは、私と付き合って一番の困惑した表情を浮かべた。私はそれを見て、思わず笑った。笑える今日を迎えることが出来て、良かったと思った。
俺は気が気じゃなくて怖かった、と良ちゃんの言葉の続きを聞いた気がした。良ちゃんの瞳には、明らかに怒りよりも心配や悲しみの感情が色濃く浮かんでいる。
「心配掛けて、ごめんなさい……」
私が謝ると、良ちゃんは苦笑した。
「キララの魅力は、俺が一番よくわかっていたのに……何で、閉じ込めておかなかったんだろう……」
私の頬を優しく掌で擦りながら、そう呟く良ちゃんの瞳は暗く淀んでいる。
「良ちゃん?何もなかったんだから……」
大丈夫、と言いたかったけれど。
「今回はたまたま、無事だっただけかもしれないよ?俺が駆け付けるのがもう少し遅かったら、どうなってたと思うの?」
そう言われてグッと黙る。
私を責めるように言いながらも、良ちゃんはむしろ、自分を責めているように見えた。だから、それ以上何も言えなかった。
でも、人妻であると知っていて尚、手を出すなんて人がいるとは本当に思わなかったのだ。
「良ちゃん、ごめんね」
辛そうな表情のまま、良ちゃんはグラスに入った水を口に含み、動けない私に口移しでそれを飲ませた。新居で初めて朝を迎えた日も、こうして口移しで水を飲ませて貰ったことを思い出して、そんな場合じゃないのに私の下半身がじゅんと潤ってしまう。
「キララが無事で、本当に良かった……」
そんな私の事情を知るよしもない良ちゃんは私の上に覆い被さり、ぎゅうっと抱き締めてきた。私も抱き締めたいのに、手錠がガチャガチャと鳴るだけでそれは叶わない。良ちゃんに反省しなさい、と言われているかのようだ。
「キララ、頭は大丈夫?即効性はあるけど依存性がない薬でまだマシだったとは言え、薬が切れた時に頭痛がするらしいんだけど」
く、薬!?私は急に怖くなった。自分の麦茶しか飲んでいなかったのに、何で!?
「少し痛いけど、痛み止めの必要はない位の痛みだよ」
そんな物を使うような人とお付き合いしてて、茂木さんは大丈夫なのだろうか?
「あれ?でも茂木さんは……?」
私が勝手に寝たと思っていたけれども、薬で寝かされたのだとしたら茂木さんは?私が疑問に思って良ちゃんに聞くと、良ちゃんは酷く冷たい顔をしていて
「キララ、あの女は男達とグルだから。グルっていうより、あの女がキララを売ったって言った方がいい」
「……え?」
良ちゃんから言われた意味がわからず、困惑する。何で私?
「あの男達はホスト。茂木が随分と入れ込んで金を注ぎ込んだらしいんだけど、相手にされなかったところに、あいつらから誰か可愛い子を紹介したら一晩遊んであげるって言われたらしい」
「えっ?そうなの?」
あのリョーヘイと呼ばれていた人は、茂木さんの彼氏じゃなかったのか。
「誰と付き合ってようが、人妻だろうが関係ないからって言われてたらしいよ。むしろ、人妻なら犯した後に脅迫してお金も身体も継続して搾り取れるからいいんだって」
「……」
あまりの酷い話に、私はぶるりと震えた。
目が覚めてから私一人能天気でいたけれども、今なら良ちゃんの焦りがよくわかる。もしその時、良ちゃんが駆け付けてくれなければ、私はこれから笑って良ちゃんの傍にいられたのだろうか?
「キララ、あの男二人と茂木の処分どうする?」
「え?」
良ちゃんは薄暗く笑いながら言った。
「俺に任せてくれる?」
「うん」
私は頷く。裁判とかよくわからないし、実際自分が何かされた訳じゃないから事情説明を求められても困ってしまう。
ただ、良ちゃんから色々言われて、気を付けていたつもりだったのにこんなことに巻き込まれる自分が情けなかった。良ちゃんが心配性だと思っていたけれども、私が無頓着なだけなのが露呈された形になってしまって恥ずかしい。
「でも、茂木さんは……」
「まだあの女のこと気にしてるの?」
私は首を横に振る。
「そうじゃなくて、多分本人も、どこかで引き返したかったと思うんだ」
やっぱり男は顔で選んじゃいけなかったのかなぁ、と言った時の茂木さんの寂しそうな顔を思い出した。やってはいけないこととわかっていても彼に振り向いて欲しい気持ちと、彼女の中の常識が葛藤を生んで……だから久しぶりに会った時、やつれて疲れた印象だったんだろう。
「まぁ、ホストに貢ぐのに給料じゃ到底足りなくて、結果的に会社の金横領したのがバレて首にもなったらしいしな」
「そっか……」
私の胸に、苦い気持ちが染みのように広がっていく。恋心とは、恐ろしいものだ。私が好きになったのが良ちゃんでなければ、万が一何かが間違っていれば、茂木さんの立場にいたのは彼女じゃなくて自分だったのかもしれない。
「私、良ちゃんを好きになって良かった」
私がそう言うと、良ちゃんは「何、どうしたの急に」と驚きながらも照れた様子だ。
「私は茂木さんにもう会いたくないから、もし良ちゃんが会うなら……伝えておいて」
「うん」
「茂木さんは、鑑定士が向いていると思うって」
「うん……ん?」
良ちゃんは、私と付き合って一番の困惑した表情を浮かべた。私はそれを見て、思わず笑った。笑える今日を迎えることが出来て、良かったと思った。
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
藤白ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389